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名前を口にしながらも、それは何かの間違いで、別の人だったらいいのになんて思いながら巴さんの言葉を待っていると、
「そうだ、新作ケーキの情報を横流ししたのは高間だ」
そうハッキリ告げてきたことで、私の頭の中は真っ白になった。
高間さんが、ケーキの情報を横流しした? 何故? 何の為に? あんなに、親身になってくれていたのに。
「高間さんが……そんな……」
「高間さんは人当たりが良く、困っていらっしゃる方に寄り添えるような優しさを持っていますが、それはそうした情報を売る行為に役立てる為の一つの武器……みたいなものだったのでしょう。被害に遭われた方々も皆、高間さんが犯人だなんてと口を揃えて仰られていましたので」
上澤家でも優しくしてくれたのは、うちの実家がケーキ屋さんだったから? Roseに粘着されていることを話したから、Roseに情報を、売ったの?
高間さんが犯人だったと言われても尚、信じられずにいる私に巴さんは、
「まあ、いきなり言われて戸惑うのも無理はねぇだろう。それなら、自分の目でしっかり確かめればいい」
そう言いながら何枚か束になった紙を手渡して来た。
「これ、は?」
「偽の新作ケーキのレシピだ」
「偽?」
「これを使って再度高間の前で新作ケーキを作れ。上手いことを言って気づかれないように」
「何故、そんなことを?」
「決まってるだろ? 情報横流しの証拠を揃える為だ。偽の情報を流して高間がどこかの店にそれを流す。そうすれば今回の件と同じことが起こるはずだ。しかし、これは偽の情報だから、その新作ケーキをお前の店が出すことなく相手の店だけがそれを発表するから、今回のようにお前の店が責められることは無い。そして、動揺する高間に横流しの証拠と共に問い詰めてやればいい」
巴さんの言っていることを要約すると、高間さんを罠に嵌めて証拠を集め、問い詰めろということらしいけれど、果たして上手くいくのだろうか。
そして、いくら高間さんが犯人だとして、人を貶めるような真似をしても、いいのだろうか。
そんなことを頭の中で考えていると、
「お前のことだ、犯人相手と言えど、人を貶める行為をすることに躊躇いもあるだろう。今回は上澤家が全面的サポートする。こちらで店の厨房にカメラを仕掛けるから、お前たちはただこのレシピを新作だと言って作ってくれればいい」
巴さんは私の心を全て見透かしているのか、私や父にはあくまでも新作ケーキを考案し、それを完成させるだけでいいと言ってくれたのだ。
「ちなみに、このレシピは今うちで雇っているパティシエが適当に考えた、大して美味くもないケーキのレシピだ。お前らは高間に何を言われてもこれが美味い、これでいくと通せ。アイツだってパティシエだ。こんなものを新作として出すことを躊躇うだろうが、同じにしねぇと意味がねぇからな。これをそのまま販売するか改良するかは相手の店次第だが、そもそもこんなレシピを流せば高間自身の信頼も落ちるだろう。アイツを地に落とすには絶好の機会だ」
「…………」
何故巴さんはそこまでしてくれるのだろうか。
お屋敷を出る時、喧嘩別れのような形になっただけではなく、あんなに失礼な態度を取ったのに。
そう戸惑いと疑問を持っていた私に巴さんは、
「――あの時は、悪かった。今だから言うが、高間を辞めさせたのはお前とのことだけでは無く、噂を知ったからという理由もあったんだが、たかが噂の段階で辞めさせるような横暴なことは出来なかったから……お前とのことを理由に辞めさせるような形になった。まあ、それに巻き込んだ罪滅ぼしも兼ねて、今回はうちが全面協力をしてやる」
高間さんを解雇したこと、今回全面協力をしてくれる理由を述べてくれた。
「そう、だったんですね……」
父と顔を見合わせ、どう返事をすべきかアイコンタクトを取る。
けど、私も父も思いは同じ。
このままやられっぱなしなんて納得出来ないし、高間さんの本音もきちんと聞きたい。
それを感じ取った私は巴さんに、
「分かりました、巴様の仰る通り、このレシピを元に新たな新作ケーキを発表すると、高間さんに伝えます」
作戦を実行する意志を伝えた。