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昨日の夜もまともに家に帰れなかった玲央は、昼休みになるなり教室を出た。
騒がしい廊下を抜け、向かったのは校舎の端にある音楽室だった。
ここは授業で使われることが少なく、いつ来ても少し埃っぽい。古い楽譜の匂いと木材の匂いが混ざっている。けれど玲央はこの空間が嫌いじゃなかった。
窓を開ければ春の風がふわりと吹き込み、静かな空気が流れる。
何より、人が来ない。
玲央は欠伸を噛み殺しながら窓際へ向かった。
ロッカーの上には人ひとり寝転がれるだけのスペースがある。1年の頃に偶然見つけてから、ずっと自分だけの昼寝場所として使っていた。
上着を脱いで適当に丸め、枕代わりにする。
「……ねむ」
ぼそりと呟き、そのまま横になる。
昨日は閉店後もバイト仲間に付き合わされ、帰宅したのは深夜だった。シャワーだけ浴びて気絶するように寝たせいで、疲れは全く取れていない。
昼休み終了まではまだ一時間近くある。
玲央は窓から入る柔らかい風を感じながら、すぐに眠りへ落ちていった。
一方その頃。
木兎はいつものようにテンションが高かった。
廊下をスキップし、急に走り、クラスメイトに「危ねぇ!」と怒鳴られては「わりぃ!」と笑う。
購買で買った焼きそばパンを咥えながら、他クラスの女子に話しかけられれば大声で返事をする。
その途中だった。
「あれ?」
音楽室の扉が少し開いている。
木兎は首を傾げた。
昼休みにここが開いているのは珍しい。
ん〜?と思いながら覗き込むと、ロッカーの上で誰かが寝ていた。
木兎は一気に興味を引かれる。
焼きそばパンを咥えたまま、そろ〜っと音楽室へ入り、静かに扉を閉めた。
足音を忍ばせながら近づく。
「……誰だ?」
見覚えはある。
同じクラスの、いつも後ろの席で寝てる陰キャっぽいやつ。
月城……なんだっけ。
数秒悩んで、木兎は考えるのをやめた。
「まあいっか!」
小声でそう呟き、ロッカーを見上げる。
そこで、木兎は思わず目を見開いた。
「……うわ」
いつも長い前髪とメガネで隠れている顔。
けれど今は無防備に晒されていた。
眠っている玲央の顔は驚くほど整っていて、肌は白く、伏せられた睫毛も長い。少しだけ開いた窓から風が吹き込み、柔らかい髪を揺らしていた。
木兎はまじまじと見つめる。
「すっげ……めっちゃ綺麗な顔じゃん……」
思わずそう漏れた。
クラスで見ていた“地味で眠そうな男子”とはまるで別人だった。
しかも近くで見ると、かなり色気がある。
木兎は知らず知らずのうちに顔を近づけていた。
すると。
「……うるさ」
突然、玲央が薄く目を開けた。
「!!?」
木兎の肩がビクッと跳ねる。
眠たそうな銀色の瞳が、じっと木兎を見上げていた。
유리