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[王子様の魔法]
涼架side
「ねぇ、シンデレラの劇の練習してんの?それならシンデレラが王子に愛される練習も必要なんじゃない?」
体育館に響き渡った、若井君の明るく軽やかな声
涼架と彼女を罵倒していたいじめグループの女子たちは、全員がはっと顔を上げた。
若井君は、口だけが笑っていて目が笑っていなかった。
「あれ?もう練習終わり?俺も参加したかったな。王子様役なら、俺も手伝えるかなと思ってさ」
若井君は、いじめっ子たちの反応を気にする様子もなく、涼架の目の前まで歩いてきた
そして、床に座り込んでいた涼架の前にそっとしゃがみ込む。
「シンデレラってさ、王子様に出会って心から笑うんだったよな?」
若井君は、そう言うと私の頬を伝う大粒の涙をそっと自分の指で拭った
彼の指先は温かくて、その温もりが私の心を優しく包み込む。
「だから、涼架が今からするのは罵倒に耐える練習じゃない。王子様に愛される練習だ」
若井君の言葉は、再び私の心に魔法をかけた
若井君は私の手を優しく掴むと、私の目をまっすぐ見つめた
「俺は、涼架の王子様だよ」
若井君は、そう言って微笑んだ。
私は、彼のまっすぐな目を見つめたまま、ただ立ち尽くしていた。
若井君は、そんな私を優しく見つめるとそっと両手を広げた
「ほら、おいで」
その声は、迷子になった子どもを迎え入れるように、温かくてとても安心できる響きだった。
私は、まるで何かに引き寄せられらように一歩また一歩と若井君の元へ進んだ
そして、彼の胸に顔をうずめた瞬間、これまで耐えてきたいじめの苦しみや孤独の痛みが、再び込み上げてきた。
しかし、若井君の温かい胸に包まれて私は初めて自分の弱さを受け入れることができた。
若井君は、震える私の背中を優しく撫でながら、耳元で囁き始めた
「涼架は、ちっちゃくて可愛い。ドジでノロマなんかじゃない。俺は、一生懸命頑張ってることちゃんと知ってる」
若井君の言葉は、さっきいじめっ子たちが私を罵倒していた言葉を一つひとつ訂正していくようだった
「涼架は、誰にでも優しくて、泣き虫だけど、それは心が繊細で綺麗だからだ!
無理に笑わなくていい。涼架の本当の笑顔はすごく綺麗だから」
罵倒されていた言葉が、若井君の温かい声で、褒め言葉に変わっていく。
私は、彼の言葉を一つひとつ噛み締めるように彼のジャージをぎゅと掴んだ。
若井君は、さらに言葉を続けた。
「涼架は、俺に媚びてるんじゃない。ただ、俺のことを信じてくれただけだ。
俺のギターのために、一所懸命頑張ってくれたの知ってるから!」
彼の言葉が、私の心に染み渡るたびに自分の存在を肯定できた。
若井の腕の中で、涼架が静かに泣きながらも心からの安堵を見せている。
その光景を目の当たりにしたいじめグループの女子たちは、怒りと悔しさで顔を歪ませていた
彼女たちが用意した、完璧なはずの「劇」は
若井君と言う予期せぬ「王子様」の登場によって、台無しにされてしまったのだ。
「なによ…気色悪い」
リーダー格の女子が、吐き捨てるように言った。
彼女たちは、若井君を罵倒しようとしたが彼のまっすぐな瞳と、彼が私を抱きしめる姿から放たれる強いオーラに言葉を失っていた
「さ、帰ろ。こんな茶番、見てられないし」
彼女たちは、自分たちの敗北を認めたくないかのように、苛立った様子で体育館の出口へと向かった。
彼女たちは、自分たちの完璧な計画が崩れ去ったことにただただイライラしていた。
次回予告
[ガラスの靴の真実]
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コメント
3件
若井……あなたは完璧な王子様だよ
もうほんとにこういう作品大好きです💕 若様のやさしさがにじみ出てる🫶🏻️︎✨️
もう、若井さん天才じゃないですか、