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幼馴染の罪滅ぼしと恋心

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幼馴染の罪滅ぼしと恋心

25 - 溺愛幼馴染と愛の告白 2

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2024年08月11日

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須藤さんとふたりで外出なんて仕事でも嫌で仕方無い。


“恋愛処女”とか“つまらない女”とか貶された記憶はまだ新しい。


須藤さんって他人に厳しい人だから、失敗でもした日にはかなりの毒舌で責められてしまいそうで恐いな。


若生屋には今度訪問するって言ってたけど、今度っていつだろう。


年内中? こんな風に悶々と悩むのなら具体的に聞いておけば良かったかも。



お昼休みになり、沙希と美野里といつものカフェでランチをする。


ダイエット中の沙希はサラダとコーヒー。私と美野里はフレンチトーストセット。


テーブルに食事が並ぶと、私はふたりに須藤さんとの外出の件を報告した。


「うわ面倒そう。あいつって後から参入しても仕事でも自分のやり方貫きそう。我が強すぎるんだよね、なるべく話さない様にしなよ」


沙希がサラダをつつきながら顔をしかめる。


あの飲み会以来、沙希も須藤さんが苦手となってしまった様子。


「でも、同じ顧客を担当するのに話さない訳にはいかないでしょう? 困ったね」


美野里が気の毒そうにため息を吐く。


そうなんだよね、美野里の言う通り、一緒に仕事をする以上避けるにも限度が有る。


がっくりしていると、沙希は私のフレンチトーストをちょっと羨ましそうに眺めながら言った。


「花乃ってすっかり須藤さんを苦手になったね。前はあんなに好き好きって言ってたのに」


「……わざわざ二回も好きって言わなくていいから」


「何、その嫌そうな顔。須藤さんに夢中だったのは本当でしょ」


沙希にずばりと言われ、私はグッと言葉に詰まった。


だって言い返せない。須藤さんの強烈な性格に少しも気付かずに、表面上の姿だけを見て恋をして浮かれていたのは事実だから。


「沙希、言い過ぎだよ。花乃は経験が少ないんだから須藤さんみたいなタイプに騙されるのは仕方ないよ」


美野里の微妙なフォローに私は複雑な想いで頷いた。


ほんと、私だけなんだよね。須藤さんの本質に全く気付いてなかったのって。


ふたりはあの飲み会の前に気付いていたみたいだから。


「私は花乃が、あんな自己中モラハラ男と付き合わなくて良かったって言ってるんだよ」


「そうだね。須藤さんと付き合っても花乃は幸せになれないよね」


沙希と美野里は私をスルーして話し込んでいる。


須藤さんとの仕事の件を相談していたはずが、すっかり脱線してしまったようだ。




その日の夜。沙希に誘われて急遽飲みに行くことになった。


月曜日だけど、須藤さんの件など話が沢山有るから丁度よかった。


残念ながら美野里は先約が有るとかで帰ってしまったけれど。


よく立ち寄るダイニングバーに入り、カウンターから離れたフロアの端の丸いテーブルに座り、適当にカクテル系のお酒を頼む。


ジュースみたいに甘いお酒が私の好み。沙希はもう少しあっさりお酒を好む。


ふたりなので遠慮なくそれぞれが頼みたいものを自由に注文し、愚痴を言いながら飲んでいると、何の断りもなく突然男性が沙希の隣の空いていた椅子に座った。


勝手に入って来るなんて酔っ払いかなと眉を顰める。


でも……見覚えの有る顔のような。


「こんばんは」


妙に色気の有る微笑み。少し掠れた感じの低い声。黒い短髪。すっきりした眼差し。


思い出した。この人って沙希の彼氏で大樹の同僚の井口君だ。


「ごめん、言うの忘れてた。仕事が早く終りそうって言うから健も呼んだの」


沙希は井口君の為にスタッフに合図を送りながらサラリと言う。


沙希のこういう所にはもう慣れているし、知ってる人なら同席していても大して私は気にならない。


「こんばんは、井口君」


井口君はかなりのイケメンだけど、沙希の彼氏って時点で私が意識する相手では無くなっている。


おかげで気楽に話しかけられる。でも、


「花乃ちゃんちょっと見ない内にますます綺麗になったね」


なんて事を真顔で言われてしまうと、どうしていいのか分からなくなる。


慌てて沙希に助けを求める視線を送ると、底冷えする様な冷たい目をした沙希が井口君を睨んで言った。


「健、花乃にそういう事言わないでって言ってるでしょ?」


「悪い、でも花乃ちゃんの反応っていちいち可愛いからつい言いたくなるんだよね」


井口君は楽しそうに笑う。


もしかして……私ってからかわれてる?


沙希の彼氏にまでからかわれる私って……。


どんよりしていると沙希が井口君のフォローに入る。


「花乃ごめん、健が失礼で。でも悪気は無いからね、この人本当に花乃を可愛いって思ってるの」


沙希が井口君をじろりと睨む。井口君はふっと笑って沙希の髪を優しく撫でた。


「妬くなよ」


「だって……」


沙希は滅多に見ない拗ねた様な表情をする。


沙希は怒ってるはずだったんじゃ? 突然立ち込めはじめたこの甘いムードは?


もしかしたら、これが痴話喧嘩ってやつですか?


目前で繰り広げられる恋人同士のやり取りに圧倒される。


と言うか居たたまれない。

こういうのは、私の居ない時にやってください。


口を挟めないまま邪魔をしない様に、なるべく空気と化していると、恋人同士の会話は済んだのか沙希が私に話しかけて来た。


「ねえ、須藤さんとの外出はいつになったの?」


何事もなったかの様ないつも通りのクールな口調。


突っ込む気にもなれず私は素直に返事をした。


「分からない。聞きに行くのもなんか嫌だから」


「まあ、わざわざ話したくはないよね。でも聞かないとあいつだからもったいぶってなかなか言わないんじゃない?」


「そこまでする?」


「嫌がらせみたいなこと、わざとしそうじゃない?」


「そうかな?」


須藤さんは確かに毒舌だけど……本当に沙希は須藤さんが駄目になってしまったみたい。


「須藤ってこの前の嫌味な男? 大樹がキレて追い払った」


私達の会話を聞いていた井口君が言った。


「そうそう。今度花乃と仕事で組むんだけど、一緒の外出もあるから困ってるのよ」


沙希が答えると、井口君は顔をしかめて私を見た。



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