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「よ、ろ、し、く、ね、!」
さっきから口パクで挨拶をしてくる彼女は
ふんわりと俺に向かって微笑んでくれた。
どうやって返事をしよう。
こんな時いつも深く考えすぎてしまうのが俺の難点。とりあえず俺も笑っとくべきか…?
「あ、あぁ…よ、よろしく…。」
なんとか小声で俺も挨拶をしたが…
駄目だ。俺、本当に返しが下手すぎる。
自分でもよく絶望するんだ。
いつからこんなのになったんだ…と。
そんな俺は死んだ魚のような目をしていたら
朝の朝礼が終わっていた。
すると同じく死にかけの面をした誠斗が俺の席に向かってくる。
「なぁーー?!あの担任話長すぎじゃねえの??!?!俺眠すぎるんですけど!! 」
「はは…誠斗、目死んでるじゃん。」
「深雪の方が朝礼中意識失ってるレベルだったぞ?!」
「ってか、転校生と席隣なの、いーよな〜」
「あんな可愛い子滅多にいないし、深雪、恋でもしちゃうんじゃないかー?!ははっ」
そうなんだ。とてもわかるんだ。
華奢で元気そうで可愛らしい夢咲さん、
何処を歩いてもすれ違う人みんなが二度見してしまいそうだし、
俺だってちょっと…と、ときめいたというか…
いや、無い…よな…。、
「そ、そんなことないって…」
「誠斗お母さん、心配だわぁ〜」
「産まれた覚えないんだけど…?」
いつの間に誠斗がお母さんになったんだ、
そういえば夢咲さん…、何処に行ったのだろう…。
辺りを見渡せば教室に彼女の姿は無かった。
…と、思いきや
やはり転校生はみんなが気になる存在だ。
夢咲さんの周りには人だかり。
「ねえねえ!風花ちゃんって呼んでいい?!」
「髪の毛サラサラじゃん!何のシャンプー使ってる?」
「ここに来る前は何してたの〜?気になる!」
「今度風花ちゃんも一緒にカフェ行こうよ!」
す、すごい…。転校初日から大人気、やっぱり少女漫画か何かの光景だな、と心底思う。
当然、彼女は聖徳太子ではないので一度に耳に入ってくる大量の質問に答えるのが出来ない、はず。
夢咲さんはただ、相槌を打つだけだった。
俺だったら頭がパンクするかもしれないのに…
するとあっという間に学校内へと響く大きな鐘の音。
いつもの国語のおじいちゃん先生がガラガラと教室のドアを開け入ってくる。
号令をして、授業が始まった。
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