もう言うことはないぜ?☆
注意事項は1話です。
海上を進む船。羅刹学園の生徒たちは、京都への航路に身を置いている。
波が船体を打ち、甲板は静かに揺れていた。
遠くに見える陸地はまだはるか先だが、時間とともに近づいてくる。
従児
「先生。桃太郎機関と交戦中のところに僕らが行って大丈夫なんですか?」
遊摺部が問いかける声は、船上の風にかき消されることもなく響いた。
無陀野はその声に即答せず、四季に視線を送る。
四季
「まあ大丈夫だと思うぜ?
桃太郎と戦うには人数が多い方がいいしな!」
無人
「そうだな。それに他のクラスは教師含め実習でいない。
後から呼ばれたとしても俺たちだけになるだろう。」
従児
「なるほど。」
無人
「京都に行くと言ってもお前らは雑務の手伝いだ。」
迅
「…は?」
碇
「おいおい、行ったところで戦えなきゃ意味ねぇじゃねぇか。」
従児
「いや、雑務もれっきとした仕事だと思うぞ。」
碇
「俺は戦いの実績を積みてぇんだよ。黙れ眼鏡。」
従児
「なっ…
はいこれで眼鏡じゃありませんけど?」眼鏡外
遊摺部と矢颪の会話を横目に、皇后崎が口を開く。
迅
「おい、まじで手伝いだけかよ?」
無人
「そうだ。
…死体を増やすつもりはない。」
水鶏
「どうでもいいけど、なんでこんな制服で行くんだよ。」
無人
「あの服は目立つ。
それと…一般的な学生としてふるまえ。」
水鶏
「はぁ?なにが言いてぇんだよ。」
無人
「補導されるようなことはするなよ。」
水鶏
「うっせぇし!
あっ…私のことを心配してくれたのか…?
いや、別にうれしいとかじゃねぇけど…」
従児
「はっ…なにやら尊い香りが…!」
会話の間にも船は揺れを伴って前進する。
制服の意味、立場、そして行動の制約が、言葉として明示される。
ロクロ
「先生…」
無人
「なんだ?手術岾。」
ロクロ
「雑務って何するんですか…?
人も多すぎると心臓がバクバクしちゃうんです…」
無人
「今説明する。」
ロクロ
「気持ち悪くて吐きそうなんですが…
僕は死ぬんですかね?」
無人
「それは船酔いだ。」
無陀野は簡潔に答え、雑務の性質と自分たちの役割を説明する。
無人
「そもそも鬼機関は全国市区町村にそれぞれ何隊か配属されている。
そこでは主に2つの任務がある。」
迅
「任務?」
無人
「1つは戦闘部隊。桃太郎が攻めてきた時、前線で戦う。
もう1つは援護部隊。人間たちに紛れて増やす鬼たちを支援する。
身寄りのない鬼を保護したり、生活の相談にも乗る。」
四季
「……」
無人
「鬼は普通の医者にかかれないからその体や心の診察も行う。
桃太郎とも戦闘時には救護なども担当する。
今回行くのは援護部隊のほうだ。」
説明は船上で続き、鬼機関の活動範囲、支部間の連携、援護部隊の役割が整理されていく。
四季
(京都でやることはまず芽衣についてだな…
…両親を殺されねぇようにしねぇと…)
「ちょいいいか、むだ先。」
無人
「なんだ?」
四季
「…唾切は俺にやらせて欲しい。」
無人
「…何故だ?」
四季
「あいつは死体を使って鬼を嘲笑うやつだ。
俺はそれが許せねぇ。」
無人
「そうか。分かった。」
四季
「それと、鬼と桃の壁を無くす糸口になるかも知れねぇからな。」
無人
「…あぁ。」
船はやがて京都に止まる。
碇
「ここに鬼のアジトがあんのか?」
従児
「ここは確か、入生田寺がある場所ですね。」
無人
「そうだ。これから入生田寺の地下に行く。」
帆稀
「ここってただのご飯屋じゃ…」
ガラガラッ…(扉開)
老婆
「お待ちしてました。」
帆稀
「うわぁっ…!」転
四季
「おっと、大丈夫か?」支
帆稀
「は、はいっ…
すみません、私なんかがびっくりしちゃって…」
四季
「びびるのに人は選ばないだろ…」
老婆
「こちらへどうぞ。」
ウィーンッ…(地下開)
老婆
「おいでやす。」
地下への移動。
入生田寺の複雑な地下構造を通り、支部内部へと導かれる。
周囲の店舗から続く通路も、全てが鬼機関の隠密行動に利用されている。
四季
(相変わらずすげぇな…)
ロクロ
「すごい…」
無人
「周辺のいくつかの店には入生田寺の地下に続く通路がある。」
ロクロ
「へ、へぇ…」
無人
「着いたぞ。入生田寺の更に下。
ここが鬼機関の京都支部だ。」
従児
「入生田の地下にこんなのが…」
入生田寺の地下。
支部のさらに奥から、軽い足音が響いてくる。
京夜
「あれ、だのっちじゃん!
連絡してから早かったね。いつ来たの?」
無人
「今だ。」
現れたのは一人の男。
その調子は軽く、場の空気を変えていく。
京夜
「ウッソ、可愛い子2人もいんじゃん!
俺前髪大丈夫?うわ~…ちゃんとセットしてぇ!
取り敢えずメッセ教えて!」
ちゃらけた雰囲気が場を緩く和ませる。
帆稀
「ぇ…あの…えっと…ごめんなさい…っ」
思わず下がる帆稀。
水鶏
「チャラいやつマジ無理。」
京夜
「うわぁ…へこ…まなーい!
タイミングって大事だもんね~!」
元気過ぎるその男に、遊摺部は疑問を抱く。
従児
「…なんですか、この人?」
遊摺部は訝しげな視線を花魁坂に向ける。
無人
「こいつは花魁坂京夜。
鬼機関京都支部援護部隊総隊長だ。」
京夜
「だのっちとは羅刹学園の同期なのよ、いぇーい!」
無陀野と花魁坂。
二人はかつての学園同期。
無人
「無駄話はいい。
俺たちがここに来た説明するから案内しろ。
その後俺は前線に行く。」
京夜
「はいはーい、こっちね~」
先導する花魁坂。
支部の奥へと一行を導く。
碇
「おい、俺はこんなやつの手伝いとか嫌だぜ?
俺も前線連れてけよ。」
京夜
「うわ、わんぱくキッズの教師とか大変だな…w
どんまい、だのっち!」
無人
「説明のあとはそのわんぱくどもを自由に使ってくれ。」
京夜
「で~?なんで急に京都来たの?」
無人
「どうやら桃太郎機関が動くらしい。
それも唾切がな。」
その名が出た瞬間、場の空気が変わる。
京夜
「ふ~ん…唾切が…」
従児
「唾切?」
京夜
「あぁ、君たちは知らないか…
桃宮唾切。あいつは桃太郎機関京都支部戦闘部隊隊長。」
碇
「それが無陀野の言ってたヤバいやつかよ?」
無人
「あぁ、そうだ。」
碇
「んだよ、隊長ってだけじゃねぇか。」
四季
「…隊長ってだけじゃねぇよ。」
碇
「あぁ?」
四季
「あいつは死体に桃太郎の細菌を入れて戦う。
そこが厄介なんだよな…」
無人
「そうだな。」
四季
「同じ桃太郎だったらその人の能力も使える。」
桃宮唾切は、鬼にとって危険な存在だった。
京夜
「…四季君、だっけ?
どうして唾切についてそんなに知ってるの?」
四季は即答をせず、無陀野に視線を送る。
無人
「どちらでも構わないぞ。」
それに察した様に答えを返す。
京夜
「…だのっちは知ってるのか…」
四季
「…信じなくても無理はないんだろうけど…
俺は1回死んでこの世界をやり直してる。」
無陀野の時と同様に、自分が人生を繰り返してるということを簡潔に伝える。
京夜
「ふーん?」
迅
「……」
碇
「そんなの信じる馬鹿がどこにいんだよ!」
四季
「だから信じなくていいぜ?」
淡々と放たれる四季の言葉。
矢颪と四季の会話を無視して花魁坂が問う。
京夜
「…ほんとに?なにか確信をできる方法は…」
四季
「ん~…あ!
練馬区の偵察部隊隊長、淀川真澄隊長はチャラ先とむだ先と同期ってこと。
んで、チャラ先は真澄隊長をまっすーって呼んでる!」
京夜
「…マジのやつか…
つまりだのっちは四季君に言われて京都に来たってわけね。」
無人
「あぁ、そうだ。」
京夜
「なるほどね~…」
信じるに足る証拠。
まだ淀川真澄と会ったことが無く、関係も話していない。
つまり信じるしかなかったのだ。
四季
「多分もうそろ唾切が動き出すんじゃねぇか?」
京夜
「マジか…
…だのっちは前線行くんでしょ?
四季君は?」
四季
「俺は…」
無人
「お前はここの護衛をしろ。」
四季
「分かった。」
それぞれの立場が定まった時、隊員が慌てた様子で走り込んできた。
ガラッ(扉開
部下
「京夜さん!無陀野さん!
桃太郎機関と交戦しました!」
報告が駆け込む。
戦端は、すでに開かれていた。
無人
「分かった、俺が出向く。
じゃあな。」
京夜
「頑張ってね~」
四季
「…むだ先!
わかってると思うけど唾切は俺がやるからな!」
無人
「…あぁ。」
戦いの地は京都。
鬼と桃の衝突は避けられない。
唾切との対峙は、確実に迫っていた。
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ⇝ 500
コメント
16件
無陀先たちの会話がおもろい!!wあーはやく真澄隊長でないかな〜もちろんアニメでもね!✨️
チャラ先だ〜!!