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「今日は十三夜だよ」
「十三夜……?」
まふゆと手を繋いで学校に行く、という小学生ならば可愛らしいと見られる行為を、高校生の二人組がやる。まふゆと予定が合う日は一緒に帰ることになった私達。それも手を繋いで、それも恋人繋ぎ。
「ああ、なんか前まふゆがちらっと言ってたような……」
「十三夜の時期は、栗や豆が収穫できる時期で、その旬のものをお供えしてお月見をしたことから豆名月とか、栗名月って呼ばれてたんだよ」
「へ〜豆と栗かあ」
「そうだ、十五夜は芋名月って言って、芋を収穫しお供えしたことからそう言われてるんだよ」
「栗きんとん食べたいな。売ってないなぁ」
「あんまり見ないよね」
「探せばあるのかな。栗名月なら売ってるでしょ!」
「…………」
今から買いに行くのか、という目で見てくる。別に学校をサボりたい訳ではなくて、そういう話題を出すからだ。
「にしても、まふゆって十五夜関連のこと詳しすぎない?」
「まあ調べてたからね。十五夜の日にも話したし、どうせなら十三夜の日も話そうって思って」
「ふーん、調べてたんだ。……へぇ〜調べてたんだ」
明かされるまふゆの真実。雑学に詳しいのか、と少し恐怖を覚えてたけど、その辺りは人間味があってよかった。まふゆが凄いことには変わりないけど。
「え、じゃあ、結局あの日って私を待ってたりしたの〜?」
「あの日?」
「ほら、十五夜のこと教えてくれた日」
「……さあ。でも、そうなんだと思う」
「お、思うって」
「よくわからない」
ついまふゆを凝視してしまう。いざまふゆの口から肯定の言葉が出てしまうと、たじろいでしまう。予想が当たっただけなのに。
「……まふゆって、案外私のこと大好きだよね」
「そう……?」
「まず私のこと待ってたでしょ。それからずっと手を繋いでいるし、カーディガンだって奪ってきたし」
「いや、だって、安心するから?」
「それでも、好きすぎない?」
「……うーん」
まふゆは少し考える素振りをした。少し上を向いて、首を傾げて、目線を下げて、黙って、それを一分ほど。
「わからない」
「ふーん。まあ別にいいけどね〜」
「嬉しそう」
「は、誰が!?」
「絵名の方が私のこと好きなんじゃないの?」
「はぁ!? 調子乗らないでよね!」
「うるさい」
態度がでかいぞ朝比奈まふゆ。この手を離してやるぞ。……離さないけど。