8月14日の土曜日。
休みの日。
暇でしょうがなかった俺は、珍しく町中を闊歩していた。 特に目的地も目標もないため、本当に気分に沿って進むだけだ。
夏の陽気な光が木々の隙間を覗かせ、緑色の葉の下に美味しそうな橙色の実が実っている。あれは蜜柑だろうか、それとも椪柑だろうか。何でも無い間抜けな思考は、平常運転で続2いている。
散歩というものは特別だ、そう思っている。
普段外出する時は何かの予定に沿ってその日を過ごすが、何にも縛られないその身で自由を過ごす一時は別次元の爽やかさを感じるのだ。
特に理由もなく、幅1mもない小道に入る。1分もしないうちに 小道が途切れ、車2台が通れそうな舗装されていない道路に出る。
「あれ、この道。」
この間、委員長と二人で映画館に行った時に通った道だ。そういえば、夏休みが終わってから学校が忙しくなって、委員長と話すことが減った気がする。
そう思いながら足を動かす。最近、委員長のことをよく考えるようになった気がする。あの長い黒髪に元気な瞳、明るくて清楚な性格。
「カワイイよなぁ、委員長って…」
反射的に口を手で包む。
あれ?俺、今何を_
「痛ッ!?」
突然、女性のような悲鳴が耳に入る。頭と体が一瞬固まるが、すぐに辺りを見回した。
理由なんてない、 そういうものだろう。
だが今は、そんな行動を取らなければよかったとまで思う。それが自分勝手で、他者の思いを踏みにじる、最低な考えだと分かっていながらも。
「何で_」
8月20日
晴れ
委員長はあれから学校に来ていない
連絡もない 俺からもしていないけど
どう話せばいいのか分からない。どう接すればいいのか。
分からない。
8⁄21
学校にいけない 怖い
ずっとスマホが鳴る
見れない 見たくない。
嫌だ、違うの 怖い 杙くん
8月24日
晴れ
今日は体育祭だった
楽しくなかった つまらなかったわけじゃない
あの日からずっと何もかも楽しくない
何でかは多分分かる 委員長だ
委員長と話したい
8⁄28
優子と電話した 泣いてた
謝ってた 苦しそうだった
何で泣くの
カーテンの閉ざされた薄暗い部屋。
哀愁のような絶望のような、嫌な何かが漂う空間の中、一人の少女が手で顔を覆いこう呟いた。
「泣きたいのは…私だよ……」
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