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こと-koto
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Side 健治
*
シティホテルの一室。
テーブルの上に置かれたウイスキーグラスに手をのばした。
しかし、カシャッと指先がグラスにぶつかり、手元からグラスが消え、気が付けば足元に転がっていた。
ウイスキーの香りが部屋に立ち込め、いっそう酔いが深くなる。
「ふふっ、だいぶ酔っているわよ。健治」
野々宮果歩の腕がスッと動き、綺麗にネイルが施された指が、絨毯の上に転がるグラスを拾い上げた。
「悪い……」
本当は悪いなんて、これっぽちも思っていない。
俺は、野々宮に無理やり呼び出され、仕方なく|ホテルの部屋《ココ》に居るのだ。
これが、酔わずに居れるものか。
そんな俺を、野々宮が低い位置から上目遣いで覗き込む。
少しつり上がった大きな瞳、ぽってりとした赤く染まる蠱惑的な唇は、男好きのする顔だ。
その赤い唇が動く。
「ねえ、健治はそのまま動かないで、口でしてあげる」
そう言って、野々宮は俺のズボンのチャックをチリチリと下ろし始めた。
「やめてくれ……」
拒絶とも言えない声を上げると、野々宮はニヤリと笑う。
「私と一緒に部屋に入った時点で、こうなるってわかっていたでしょう。いまさらよね」
「でも、いつまでも続けられる関係じゃないだろう」
俺の言葉など、どうでもいいように、野々宮は楽しそうにふふふっと笑い、俺のズボンの前をくつろげた。
「楽しめる時に楽しむ関係よね。じゃあ、今を楽しまなくちゃ。普段できないようなこと、し・て・あ・げ・る」
萎えた俺のモノを野々宮はためらいもなく口に含んだ。
口腔内の温かな粘膜に包まれ、舌先から与えられる刺激に抗えず、だんだんと固くなっていくのが、自分でもわかった。
そして、俺の敏感な部分に野々宮の舌先が絡みつき、ピチャピチャと淫猥な音を立て、耳からも煽られいく。
「やめろ……よ」
吐く息は甘さを含み、俺の思考は酩酊する。
受け身のSEXは、自分でも予想のつかない刺激を与えられ、攻めの時とは違うベクトルに入る。
「ふふっ、気持ちいいでしょう。大きくなってる」
以前、使い物にならないと言って、野々宮を遠ざけた事を忘れていないのだろう。
立ち上がった俺のモノを見て、野々宮は満足げに微笑み、小さな包みを開ける。
そして、中から取り出した|iR《コンドーム》を慣れた手つきで被せた。
心は嫌がっていても、外から与えられる刺激に抗えない。
弱い自分に嫌気がさす。
「健治は、動かなくていいわ。私が上で動いてあげる」
野々宮はベッドに膝立ちになり、俺の上にまたがった。
この女の誘惑に負け、関係を持ったあの日から、既に取り返しのつかない事になっていたのだと、今更ながらつくづく思う。
何故、野々宮が俺に執着するのか理解できないが、緑原総合病院の取引まで持ち出して、俺を囲い込もうとしている。
「なあ、なんで俺なんだよ……」
その問いかけに、野々宮は赤い唇の口角を上げた。
「ふふっ、身体の相性かしら?」
そう言って、楽しそうに笑い野々宮は、俺のモノを自分にあてがい、ゆっくりと腰を動かし始めた。
俺は野々宮にだんだんと飲み込まれて行く様を、抵抗も出来ずに受け入れるだけだった。