テラーノベル
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〜朝〜
ガヤガヤと賑やかな声。
窓から青空が見えて太陽が眩しい。
みんな、笑い合っている……
ミク
「はぁ…」
重い足。
重い気分。
正直、誰とも喋りたくない。
ーーそんな私の背後から、声が飛ぶ。
???
「おーい!ミクー!」
ミク
『…またか』
ゆっくりと振り返ると
笑顔で手をブンブンと振ってる男子。
**犬槙翔琉(いぬまき・カケル)**だった。
ミク
『関わりたくない』
私は無視して歩き出す。
カケル
「あ、おい!待ってくれ〜!」
ダッシュで追いつくカケル。
ちょっとだけかわいそうになって、仕方なくペースを落とした。
カケル
「おはよう!ミク!今日もいい天気だな!」
ミク(無言)
『めんどくさ…』
カケル
「今日はきっと、いい一日になるぞ!」
ミク
「……」
カケル
「どうしたんだ?具合でも悪いのか?」
ミク(ジト目)
「ねぇ、朝から大声で呼ぶのやめてって、何回も言ったよね?」
カケル
「あっ…!ご、ごめん!!次は気をつけるから!」
両手を合わせて必死に謝る彼に、
私はため息が漏れる。
ミク
「もういいよ。次から気をつけてね」
カケル
「分かった!フッ、任せろ!」
ミク
『ほんとに分かってるのかな…』
ミク
「やっぱり、優しくするんじゃなかった…」
いらだってる私に気づかずに
ニコニコと喋り続けている。
カケル
「でさ、昨日見た漫画がー」
ミク
『うるさいな…いつまで喋るんだろう』
カケル
「それでな展開が凄くて〜」
ミク
『まだ話してる』
……そろそろ限界だった。
ミク
「ねぇ」
カケル
「ん?どうした?」
ミク
「いつまで喋るの?うるさいから、ちょっと黙ってて」
**《ピタ》
カケルの声が止まり
空気が、急に静かになる。
ミク
『あ…』
やっちゃった。
ミク(チラ見)
『さすがに怒ったかな…』
カケル「……ごめん。しつこく、喋って…」
ミク
『え…なんで泣きそうなの』
カケル
「うっ……すみま、せん…」
反応が違いすぎてこっちが驚く。
ミク
『…怒らないの?』
(なんでそんなに傷つくの)
ミク
『はぁ…』
ミク
「もういいよ。別に、怒ってないし」
カケル
「……え…」
ミク
「てか、なんでそんなに素直なの」
ミク
「ばかだよね、ほんと」
カケル
「う…ごめん」
ミク
『なんであんたが謝るのさ』
(悪いのは私なのに)
言えなかった。
『ごめんね』の一言が、どうしても言えない。
ミク
『なんで…?嫌いだから?』
『それとも、ただの意地?』
(またやっちゃった…)
考えが止まらない。
ーーその時
《ポンッ》とカケルが私の肩を
そっとたたく。
カケル
「お、おい?…ミク?」
ミク
「わっ!?なっなに!」
いきなりだったから、思わず睨んでしまった。
カケル
「ひっ!ご、ごめん!あの……もっ、もう教室着いたから…!」
震えながら指さすカケル。
その先にはーー
……私たちの教室の目の前だった。
ミク
「……あ、ほんとだ」
カケル
「大丈夫か?なんか、考えごとしてたみたいだけど…」
ミク(目をそらす)
「べ、別に!大丈夫だよ!」
カケル
「そうか…?でもー」
ミク
「いっいいから!入ろう!」
話を聞かずに、私は先に教室へ入る。
キーンコーンカーンコーン
〜お昼〜
ミク(思いっきり背伸び)
「ふぁ〜ぁ…やっとお昼か…」
ミク
『授業、全然分からなかった…数学とかほんとムリ』
『…また誰とも喋らず一人か』
(慣れたはずなのに…なんだろうこのモヤモヤ感)
ミク
「……早く終わらないかな、この時間」
ぼーっとしながら、カバンからパンを取り出して
もぐっ…
カケル
「よーっ!ミク!今からランチタイムかい?」
ミク
「ゲホッ!ゴホッゴホッ!ゲホッ!」
ビックリして盛大にむせる。
カケル
「だ、大丈夫か!早くこれを飲め!」
焦った様子で、私の机に置いてた牛乳を差し出してくる。
ミク
「…ん」
無言で受け取って、急いで飲む。
苦しさが治ってきた。
ミク
「ゴホッ…ゲホッ…な、なに…!?いきなり…ゴホッ、話しかけないでよ…!」
カケル
「す、すまない!そんなに驚くとは思わなくて…」
申し訳なさそうに、私の顔をじっと見てくる。
ミク
「ゲホッ…で、なに?」
カケル
「え、あ…いや、今からランチタイムなら一緒にどうかなー…って」
ミク
『…また、それ。何回目なんだろう…この人』
ミク
「…一人が楽なの」
カケル
「そ、そっか……そっか。…でも、またパンだけだし…足りないんじゃないか?」
そう言って、彼は自分の弁当を少しだけこちらに差し出す。
カケル
「ほら、唐揚げとか!俺の母さんが作ったのうまいぞ!食べるか?」
ミク
「いらない。パンだけでいい」
カケル
「……あ、うん。そっか…。…弁当作るの大変なら俺が明日、お前の分もー」
ミク
「いらない。余計なお世話」
カケル
「…あ、ごめん」
しゅんと小さくなるカケル。
ミク
『まただ。こんなふうに、断るたびに小さくなる』
(正直あきれる)
ミク
『でも…なんで私となんか関わるんだろう』
(こんなにひどいのに……はぁ…)
キーンコーンカーンコーン
〜放課後〜
ミク
「…やっと終わった」
授業が終わるとみんな部活に行く。
楽しそうな声が、教室からどんどん消えていく。
ミク
『みんなは仲間が居て、目標があって』
(それに比べて私は…)
ミク
「……はぁ」
帰宅部の私には、この時間が孤独だ。
でも、別にさみしくはない。
いつものことだし。
ミク
『でも…家に帰っても暇だしな』
『テレビとか見ないし、どうせ寝るだけだし』
(…あそこ、行こうかな)
気づけば、足が勝手に動いていた。
ゆっくりと廊下を歩き、階段を上る。
ミク
「……」
四階に着くと、シーンと静かになる。
ここはいつも静かだ。
長い廊下を歩いて、真ん中の部屋に行く。
《ガラガラッ》と引き戸を開けて中に入る。
うす暗い部屋。窓からはグラウンドが見える。
机も椅子もあって、使われてないのに案外きれい。
ミク
「……やっぱり、ここが落ち着くな」
『静かだし、誰も気にしなくていいし』
(……楽だな)
ゆっくりと窓辺に腰をかけると
風が頬をなでていく。
ミク
「……」
静かな空間。
するとその時ーー
《ガラガラッ》**
突然、引き戸が開く音がした。
ミク
「っ!?」
驚いて振り返ると、そこには見慣れた男子が居た。
カケル
「よ〜!ミク!ここにいたんだな!」
ミク
「……え!?なんであんたが来てるの!?」
カケル
「いや〜、お前があまりにも暗かったからな!
フッ、心配になって…」
キラッとカッコつけながら言う彼。
ミク
『来なくていいのに』
でもなぜか…笑えた。
ミク
『ほんと、変なやつ』
カケル
「それにしても…こんな部屋があったんだな!しかもきれい!」
初めて見る部屋にテンションが上がっている。
ミク
「…知らなかったの?この部屋」
カケル
「あぁ、あまり来ないからな」
ミク
「そうなんだ」
カケルはいつものように、ニコッと笑う。
ーーその笑顔が、
なんだか、いやになる。
ミク
『あはは…』
(私なんか、笑う資格ないよ)
ーーつづく
〜朝の会話シーン〜
※AIで作成したイメージイラスト
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