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放課後の図書館は、文化祭の喧騒が嘘みたいに静まり返っていた。
薄橙色の夕日が窓から差し込み、本棚の影が床に長く伸びている。
凛はカウンターの奥で、本の整理に没頭していた。
ガラガラ──。
重たい扉が開く音に、凛は手を止める。
凛:「……あ、葵」
葵:「やっほー」
明るい声。でも、その奥にほんの少しだけ、違和感があった。
いつもなら真っ直ぐこちらに来る葵が、今日は少しだけ歩みがゆっくりだ。
凛:「今日、部活なかったの?」
葵:「うん、なんか顧問来れないって。だから来た〜」
言いながら、葵はカウンターの近くの椅子に腰を下ろした。
凛は彼女のその様子に少し首をかしげる。
いつもより少しだけ静かで、目が合っても、すぐに逸らされる。
(……なんか、変だな)
凛:「……なに?」
葵:「えっ、なにが?」
凛:「いや……なんか、いつもと違う」
少しだけ眉を寄せて凛が言うと、葵は一瞬目を見開いて、それからぎこちなく笑った。
葵:「え、別に? 変じゃないし」
言葉とは裏腹に、手の指先をいじっている仕草が落ち着かない。
凛はそんな葵を横目に、本棚に本を戻しながら、小さく息をついた。
この空気が、少し怖かった。
けれど、話さなければ何も始まらない。
──そして、沈黙。
静まり返った図書館の空気が、やけに重たく感じる。
その沈黙を破ったのは、葵だった。
葵:「……ねぇ、凛」
凛:「なに?」
葵:「……今日、裏庭にいたよね?」
心臓が、ドクンと跳ねる。
凛の手が思わず止まり、本棚の背表紙に指が触れたまま固まった。
葵はゆっくりと立ち上がり、凛の方を見つめる。
夕日の光が差し込み、その横顔に影が落ちていた。
葵:「……聞こえちゃった」
その一言に、空気が張り詰める。
凛は葵の視線をまともに受け止められなくて、目を伏せた。
葵:「……あの、男子の告白」
凛:「……そっか」
凛の小さな声。
自分でも思っていたより、ずっと動揺していた。
葵:「……“好きな人がいるから”って……言ってたよね」
葵の声が、少しだけ震えていた。
それでも真っ直ぐに、凛を見つめてくる。
逃げ場のない、真剣なまなざし。
凛は喉がきゅっと締めつけられるような感覚に襲われた。
心臓の音がうるさくて、自分の声が出せるかも分からない。
葵:「ねぇ……その“好きな人”って──」
葵が一歩近づく。
凛の肩がびくりと揺れる。
葵:「──誰、なの?」
その問いかけは、思っていたよりもずっと静かで、優しくて、だけど切実だった。
まるで葵自身、答えを怖がっているみたいに。
夕日が差し込む図書館に、二人だけの空気が満ちていく。
時間がゆっくりと流れ、互いの呼吸の音だけが響いた。
さて、凛ちゃんはどう行動するのか!次回もお楽しみに~
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