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夕焼けが、ゆっくりと図書館の窓を染めていく。
本棚の間に落ちる橙色の光の中、葵と凛は向かい合ったまま、しばらく沈黙が続いていた。
葵:「──誰、なの?」
葵の声がまだ胸の奥に響いている。
逃げ出したい気持ちと、ちゃんと向き合いたい気持ちが、凛の中でぶつかっていた。
(言わなきゃ……でも、言ったら……どうなるんだろう)
心臓がうるさくて、息が詰まりそうだった。
でも、目の前の葵の真剣な瞳を見たら──もう、嘘なんてつけなかった。
凛:「……その……」
凛は両手をぎゅっと胸の前で握りしめる。
自分の声が震えているのがわかった。
凛:「……葵、なんだ」
一瞬、空気が止まった。
図書館の奥から響く時計の音が、やけに大きく感じる。
葵:「……え?」
葵の目が大きく見開かれる。
凛は視線を床に落としたまま、必死に言葉を紡ぐ。
凛:「……気づいたら、いつも葵のこと見てて……一緒にいるとき、心がいっぱいになって……
でも、こんな気持ち、伝えたら嫌われるかもって思って……だから……」
凛の声がだんだん小さくなっていく。
でも、その想いは、まっすぐに葵の胸へ届いていた。
葵:「……なに、それ……」
ふっと、葵の唇から小さな笑いがこぼれた。
泣きそうな顔で、それでもちょっとだけ笑っていた。
葵:「ずるいじゃん、凛……」
その声に、凛は思わず顔を上げる。
葵は、夕日の光に照らされながら、ゆっくりと近づいてきた。
葵:「……あたしも、同じだよ」
その一言に、凛の目が大きく揺れた。
葵:「最初はさ、なんか気になるな〜くらいだったんだけど……
一緒にいる時間が増えるたびに、どんどん凛のこと好きになってて……」
葵は照れくさそうに笑いながら、でもまっすぐに凛を見つめた。
葵:「……今日、告白の話聞いちゃって、心臓めっちゃ痛くなって……
そのとき気づいたんだ。あたし、ほんとに凛のこと……好きなんだって」
葵の言葉が図書館に静かに染み込んでいく。
凛は、信じられないというように瞬きを繰り返し──
やがて、頬がほんのり赤く染まっていった。
凛:「……葵……」
葵:「凛……」
距離が、ゆっくりと縮まる。
互いの鼓動が、近くで聞こえるくらいに。
凛:「……じゃあ、あの……」
凛が勇気を振り絞るように、少しだけ震える声で言った。
凛:「……わ、わたしたち……その……付き合う……って、こと……で、いいのかな……?」
その問いかけに、葵は少し目を丸くして──
そして、ふわっと笑った。
葵:「……うん。あたし、凛と付き合いたい」
その言葉は、凛の胸の奥にまっすぐに届いた。
溢れそうな喜びと、信じられないような気持ちで、視界が少し滲む。
凛:「……うん……わたしも……」
二人の手が、そっと触れ合う。
もう、離す理由なんてどこにもなかった。
図書館の窓の外、夕日がゆっくりと夜に溶けていく。
静かな空間の中、凛と葵の恋が、確かに始まった。