テラーノベル
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放課後。
いつもの帰り道。
でも、いつもと空気が少し、違っていた。
ak「やっほ〜、心音」
名前を呼ぶ。
それだけの事なのに、どこかぎこちない。
so「…それ、まだ慣れないや」
少し目を逸らして、苦笑する。
ak「そのうち慣れるって」
so「どうだろ」
短いやり取り。
でも、以前とは確実に変わっていた。
名前があるだけで、距離の測り方が少し変わる。
太陽が段々と沈んでいく。
その光が並んで歩く2人を照らす。
ak「ねぇ」
so「ん?」
ak「今度さ、祭りあるんだって」
so「祭り?」
ak「夏祭り。近くでやるやつ」
少しだけ、間を置いて
ak「…一緒に行く?」
soは、少しだけ目を逸らして
それから、嬉しそうに笑った。
so「…うん!!」
ak「じゃあ決まりね」
so「俺、お祭りとか初めてかも」
ak「えぇ!?まじか、じゃあ俺が1番だね〜」
so「んぇ、なんの?」
ak「心音が誰かと一緒にお祭りに行く事!」
soは、少し驚いた顔をしていた。
so「…そうだね!」
その日から、
ほんの少しだけ“次”ができた気がした。
数日後、お祭りの日。
提灯の灯と、人のざわめき。
思っていたよりも、ずっと、賑やかだった。
so「…すごい」
ak「でしょ〜」
並んで歩く2人。
でも、いつもよりも少し、距離が近い気がした。
屋台の並ぶ通りを進む。
わたあめの甘い匂い。
焼きそばを焼く音。
友達と笑い合っている声。
普段、滅多に嗅がない匂いや聞かない音ばかりだった。
ak「何食べるー?」
so「なんでもいいよ」
ak「それ、1番困るやつ」
そこで、目に入った屋台の前で足を止める。
ak「わたあめ食べる?」
so「何これ!食べてみたい!」
ak「食べた事ないの!?じゃあ尚更これにしよ」
そうして、少し並んで、わたあめを買う。
ak「はい」
so「ありがと」
1口食べて、目を丸くする。
so「甘くておいしい! 」
ak「でしょ」
so「あっきい、もう1個!」
ak「ん、わかった」
隣でおいしそうに食べるso。
すこし歩くと、人が沢山増えてきて、流れが強くなる。
そのとき__
ak「…こっち」
akがsoの手を引く。
so「……え?」
so「離れたら面倒でしょ」
当たり前の様に言う。
でも__
繋がれた手は離れない。
so「…そうだね」
小さく返す。
その声は、少しだけ静かだった。
人混みを抜けて、広く、静かな場所に出る。
その時、大きな音が響く。
2人は空を見上げる。
花火。
光が広がって、ゆっくり消えていく。
隣に並ぶ2人。
繋いだ手はそのまま。
so「…ねぇ」
ak「なに? 」
so「こういうのさ」
また花火が上がる。
その光に照らされながら、言う。
so「…嫌いじゃない」
ak「…知ってる」
短く返す。
笑いそうな雰囲気。
でも、その先は続かなかった。
静かな時間。
花火の鮮やかな色が、何度も空を染める。
その度に、横顔が少しずつ近く感じる。
so「…あっきぃ」
ak「どうした?」
so「…いや、やっぱりなんでもない」
また、言わない。
でも__
繋いでいた手が、ほんの少しだけ強く握られる。
最後の花火が上がる。
大きく、長く、消えていく光。
その余韻の中で
so「…ここにいられて、よかった」
小さな声。
でも、ちゃんと届いた。
ak「…俺も」
それ以上は、お互い何も言わなかった。
言えなかったのかもしれない。
しかし、繋いだ手は、離れなかった。
名前を呼べるようになった距離。
まだ言葉にはならない気持ち。
それでも、確かに分かってしまう。
この先にあるものが、
きっと、同じである事を。
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