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#ダンジョン
#学園
阿久津との交戦が始まって約3分。
お互いにけん制し合っている状態から、六駆が一歩踏み込んだ。
「威力を抑えていれば、死にはしないでしょ! 『大竜砲』!!」
六駆の強さの理由を挙げ始めると、朝からスタートしても夜までかかるくらいには時間が必要である。
だから、この場では1点のみ。
彼は基本的に武器を持たない。
必要に応じて具現化するため、いつでもノーモーションでスキルを撃つ事ができる。
これが初見の相手だと、実に恐ろしい。
なにせ、相手がどんなスキルを持っているのか判然としない段階から、加えていつ何時《なんどき》攻撃してくるのかまで分からないとなれば、これはもう脅威である。
「くははっ! マジかよ! あぁ!? なんだこの火力! 『結晶外殻』、装着!!」
「あらら。なんか妙な煌気の装備ですね。『大竜砲』が弾かれちゃった」
阿久津の秘密兵器、『結晶外殻』。
ルベルバックの煌気武器には、【結晶】と言う、現世で言うところの【源石】のような核が搭載されており、ビー玉サイズもあればこれまでルベルバック人が使って来たスキルの全てをまかなえる。
阿久津の纏った外殻は、彼の周りを約100の【結晶】が惑星のような軌道を描き回転していた。
これは相当な煌気のコントロール技術が必要とされるため、阿久津にしか使えない、まさに彼専用の装備だった。
「お前、さては南雲の部下じゃねぇなぁ? ランドゥル!! 『拡散熱線』!!」
「バレました? そんなこと1度も言ってませんけど。『赤壁の番人』!!」
アクツ・ランドゥルの威力がやや勝り、六駆の防壁が破壊される。
そのままの勢いで六駆を追いかけるアクツ・ランドゥル。
「『鏡反射盾』!」
スキルの特性を即座に理解できるのは、六駆の専売特許ではない。
経験を積めば、誰でもその時が来ていずれかのレベルにまでなら成長できる。
ただし、六駆おじさんは29年間をほとんど全て戦いの中で過ごすと言う、実にクレイジーな運用をしていたため、対応力も並みのベテランとは一線を画す。
「くおっ!? こいつぅ、生意気に反射して来やがった! くははっ! いいぞ、いいぞ!! それでこそ、準備してきたかいがあるってもんだぁ!!」
阿久津は実に楽しそうに、新しいスキルを次々に繰り出す。
初撃を受けてから対応する六駆。
彼にかすり傷ではあるが、ダメージを与えているのは阿久津の力量がSランクに匹敵するものである証明だった。
一方、苦悶の表情の六駆おじさん。
よもやの苦戦である。
彼を追い詰めている理由はただひとつ。
500万だった。
六駆には、10分ほど前から、阿久津が札束に見えていた。
そして彼は考える。
「右足を撃ち抜いたら、30万円が! 反撃して、右肩を被弾させたら40万円が!! ああ! フルパワーでスキルを撃ったら、500万円がぁぁぁ!!!」
これほどまでに逆神六駆を苦しめた存在がかつてあっただろうか。
もはや、阿久津は六駆と戦っているが、六駆は阿久津と戦ってはいなかった。
攻撃をしたらお金が燃える幻想を見ている金の亡者。
いつの間にか全てが後手に回り、結果、作る必要のないかすり傷を全身に負うに至り、戦いは見通しが立たなくなりつつあった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「おいおいおい! まだ本気じゃねぇんだろぉ? 分かるんだぜぇ? いいから、ガチって来いよぉ! なぁ、逆神ぃ! 『金色結晶流星群』!!」
「くぅぅぅっ! 『瞬動・三重』! 『麒麟……』ダメだ! 僕には撃てない!! ぐあっ!!」
喋る札束にスキルをぶっ放すくらいならば、相手の攻撃をその身に受ける。
御滝ダンジョンでメタルゲルの大群を『大竜砲』でぶっ飛ばしてから約1カ月半。
六駆のお金に対する執着心は、ひとつの完成形を迎えようとしていた。
「六駆くん! 戦ってよぉ! 普段の力の半分で良いんだよ!!」
莉子も堪らず、師匠に檄を飛ばす。
そうなのだ。六駆が本気になりさえすれば、阿久津をどうにかする事は容易い。
「ダメだよ、莉子! 僕には撃てない! 撃てないんだぁ!! どうしても、心が、体が、僕の細胞全てが!! スキルを撃つなって、止めるんだよぉぉ!!」
なんかいい雰囲気で絶叫しないでもらいたい。
大好きなお金のせいで力を発揮できないおっさんの叫びじゃないか。
クライマックスっぽい空気を出して来るな。
「なんだぁ? 結局お前もその程度なのかよぉ、逆神ぃ!! 『金色結晶太陽熱』!!」
「ぐぅぅぅぅっ! ちくしょう! なんてスキルだ!!」
「くっははぁ! お前ほどの実力になれば、俺のスキルの素晴らしさが分かるかぁ! そこはさすがだと褒めておくぜぇ! 逆神ぃ!!」
阿久津、違う。そうじゃない。
六駆がいちいちお前のスキルを全て受けているのは、その特性に答えがある。
阿久津のスキルは『結晶外殻』の影響で、全てが金色に輝く。
諸君、お気付きになられただろうか。
金色のものは相手の攻撃スキルでも邪険にできない、六駆くんの貧乏性。
先ほど、阿久津が札束に見えていると言ったが、時間の経過とともにそれは深刻さを増していく。
現在、阿久津の放つスキルが六駆おじさんには全部砂金に見えている。
金の粉をまぶした攻撃スキルを見た彼は「もしかすると本物の金かもしれない!」と訳の分からぬ発想を凄まじいスピードで脳内に展開し、その「もしかするかも」に賭けていた。
毎回賭けているので、全ての攻撃に自分から当たりに行く始末。
誰か、彼に教えてやって欲しい。
「バカやってねぇで戦え」と。「万が一にも金は飛んで来ねぇよ」と。
さらに攻防を繰り返し、ついに六駆の配給装備にヒビが入る。
これまで数多の戦いで傷ひとつ作らなかった、彼の配給装備が、ついに悲鳴を上げる。
背中の「莉子」マントは無傷なので、それで攻撃を防げばいいじゃないか。
確か、全属性の攻撃を軽減する効果があっただろう。
だが、六駆おじさんはそれすらもしない。
何故か。
諸君、彼が背負う「莉子」の文字の色をお忘れだろうか。
そう。金色である。さらに金ラメ付きである。
この金の亡者は、既に「金色に逆らったらばちが当たる」と言う思考に支配されており、もはや色々と手遅れだった。
莉子は堪らず叫んだ。
「南雲さぁん! このままじゃ、六駆くんがやられちゃいますよぉ!」
通信を聞いた南雲は、ちょうど帝都に到着したところだった。
自分の耳を疑いながら、彼は聞き返す。
『逆神くんが負ける!? 何がどうなって!? 阿久津はそこまで強いのか!?』
莉子は泣き声を振り絞る。
「六駆くんにお金の話なんかするからですよぉ! 今の六駆くんは、阿久津さんと戦っているんじゃないんです! お金と戦っているんですよぉ!!」
南雲は、莉子の錯乱の度合いから事の深刻さを理解して、「分かった。30秒だけちょうだい」と断り、目を閉じる。
続けて、思った。
「逆神くんって、やっぱりバカなんじゃないのかなぁ」と。
お金と戦っているって何だ。
南雲監察官、こちらを見ても答えなど転がっていない。
苦しいだろうが前を向け。こっち見んな。
どうか、自力で答えを見つけてほしい。
無茶を言っているのは分かっている。だが、それも上官の仕事だ。
コメント
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ああもう、六駆おじさんがいつもの強さを発揮できない理由がお金って…笑ったわw 「攻撃したらお金が減る」っていう脳内変換、貧乏性すぎて逆に愛おしい。金色のスキルが全部砂金に見えて自分から当たりに行くとか、コメディとバトルのバランスが絶妙すぎる🔥 莉子ちゃんの「お金と戦ってるんですよぉ!」っていう絶叫も含めて、このシリーズの魅力がギュッと詰まった回だったわ。