テラーノベル
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「アン。おまえも寝てたの?」「アンっ」
「心配かけたな。もう大丈夫だよ」
「キュ…」
アンは悲しそうな声を出すと、頭を撫でるリオの手のひらを、小さな舌でぺろぺろと舐め始めた。
リオにとってアンはもう、なくてはならない存在だ。アンにとっても、リオがそんな存在になっているのかも。そう思い、リオはアンを抱き上げて、鼻に鼻を寄せて呟いた。
「俺はアンを置いて、どこにも行ったりしないからな。だからアンも、俺から離れるなよ」
「アンっ」
ああかわいい。本当にかわいい。アンと出会えて良かった。この先何があっても、絶対に俺が守ってやる。
そう心に誓いながらアンとじゃれ合っていると、扉の外から声がした。
「リオ、入ってもいいか」
「どうぞ」
扉を開けて入ってきたのは、ケリーだった。
リオが急いでベッドから降りようとすると、ケリーは手のひらをこちらに向けて「そのままで」と止める。
リオは仕方なくアンを横に下ろして、ベッドに腰かけた。
「体調は?」
リオと向かい合うように椅子に座りながら、ケリーが聞く。
「もう大丈夫。迷惑をおかけしました」
リオが頭を下げると、ケリーの手が肩に置かれた。
「ギデオン様も仰ったと思うが、謝らなくていい。誰でも病にかかる。大したことがなくてよかったな」
「うん」
ケリーの優しい言葉に、笑って頷く。
見た目が怖いギデオンだけど、主が優しいから仕える部下も皆優しい。本当なら、騎士に|仕《つか》えるのなんて真っ平ごめんだけど、ギデオンだから承諾したんだ。でも。今までに会ってきた騎士のように、少しでも人を虫けらのように扱ったら、俺はすぐに辞めるよ。
リオが鼻息荒く拳を握っていると、「何を考えてる?」と至近距離から声がして驚いた。
すぐ目の前に、ケリーの顔があったのだ。
リオは慌てて距離をとる。
「なっ、なに?」
「ああ、ごめん。リオの目が綺麗だなと思って。近くで見たくなった」
「…普通だよ。ギデオンの方が綺麗じゃん」
「そうだな。だが、リオは髪も綺麗だ」
「いやいや、ケリーも同じ金髪じゃん」
「俺のは、どちらかというと茶色に近い。リオは、光り輝いてる」
「え…っと、あ!アトラスも金髪じゃん」
「アトラスは白金に近い。リオが最も美しい金色だ」
「はあ…」
いや、ちょっと待って。この人どうしちゃったの?なんでこんなに褒めてくるの?俺に好意…を抱いてるようには見えないけど。もしやケリーも裏がある?えー、怖いな。あまり近づかないようにしよ…。
|安堵《あんど》
更に見つめてくるケリーに困惑していると、ちょうど良いタイミングで、食事の用意ができたとアトラスが呼びに来てくれて、リオは密かにの息を吐いた。
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