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都市計画課には私たちがいる公園緑地係のほかに、管理係、まちづくり推進係、道路整備推進係、計画係があって、各々に係長と部下が数名ずつ配置されている。各係の係長の上に二名の課長補佐、その上に課長がいらっしゃるという構図らしい。
私のような臨時職員は、公園緑地係のほかには道路整備推進係に若い男性の方が配属されているのみだった。
(彼が同年代の女性だったら話しやすかったのに。残念……)
塚田さんに連れられて、あちこちの係で挨拶を済ませながら、この課には私のような臨職に同性が居ないと知って少しガッカリする。
「本来ならこういう案内は課長がするんだけどね、藤原さんのことは僕に一任されているから……ごめんね」
塚田さんが、課長へ私を紹介してくださった直後、何故か申し訳なさそうにそう言って頭を下げた。
申し訳ないのは私のほうなのです。
それは、父や健二さんのお父様から塚田さんへ直々に何らかの申し入れがあったということだと思うから。
きっと、私がそれだけ頼りないと思われている証拠に違いない。
「あの、私のほうこそ何だかすみません……」
ここに入ってきたのだって、自分の実力ではなく、いわゆるコネだ。お父様は|詳しくはいって下さらなかったけれど、多分、議員をなさっている神崎さん――健二さんのお父様――のお力添えに違いない。
組織の中に入ってからも、人の手をわずらわせるような扱いしかされない私って何だろう。……本当に情けなかった。
そう思いながらしゅん……として謝った私に、塚田さんが「一旦席にもどりましょうか」と言って挨拶回りを中断する。
まだ、計画係と管理係に行けていないのに……。
そう思うと、自分の不甲斐なさがくやしくてたまらなかった。
自分たちの係の島に着くと、塚田さんは私を彼の席のすぐ近くにある、綺麗に片付けられた机に導いた。
「ここが藤原さんのデスクです。自由に使ってくださいね」
周りのデスクには物が所狭しと積み上げられていて、天板がほとんど見えなかった。けれど、私にあてがわれたデスクの上だけは何も載っていなくて。
キョロキョロと周りのデスクと見比べていたら、塚田さんに苦笑される。
「……突貫工事でそこだけ片付けたの、バレちゃいましたか?」
頭をかきながらへらりと照れくさそうに笑う彼に、ドクンッと心臓が跳ね上がる。
(ダメ、これ以上好きになってしまったら後戻りできなくなってしまうのですっ……!)
不意に彼が見せる笑顔がまぶしくて、胸が苦しくなる。
私は自分が落ち込んでいたことを忘れてしまうくらい、彼の笑顔に引き込まれている自分に気が付いて怖くなった。
慌てて塚田さんの笑顔から視線をそらすと、「か、片付けていただいてどうもありがとうございましたっ」と早口に言う。
「藤原さん?」
そんな私の態度に、塚田さんが気遣わしげに声を掛けてくださるのが、またしんどい。
「あのっ、カバンは……引き出しの中で構いませんか?」
それを誤魔化すように、右手一番下の、少し大きめの引き出しを指差しながら問う。
「あぁ、僕は本当、駄目な上司ですね。貴女に荷物を持たせたまま挨拶回りをさせてしまっていました。――カバンは……勿論そこでも構いませんが……女子更衣室のほうにロッカーもありますので……」
鷹槻れん

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#契約結婚
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塚田さんはそこまで言って、まだ挨拶にいけていない管理係のほうへ視線を転じると、そこで一人黙々とデスクワークに勤しんでいる女性に声をかけた。
「中本さーん! 今、大丈夫ですか?」
その声に、すぐさま中本さんと呼ばれた女性がこちらへやってくる。
年のころは私より七つ、八つ上だろうか。今日都市計画課の中で出会ったどの女性陣よりも、彼女が一番年齢が近いように思う。
「すみません、お忙しいのに」
塚田さんがそう前置きするのに対して、
「大丈夫です。塚田さんの呼び出しならいつでも大歓迎です!」
言って、とても嬉しそうにニコッと笑う彼女を見て、私は悟った。
――彼女も、塚田さんのことが好きなんだ、と。
「えっと、こちら、今日からうちの係に配属になった臨職の藤原日織さんです」
私をとても優しい目で見つめながら紹介してくださる塚田さんに合わせて、私は出来るだけ礼儀正しくお辞儀をした。
「藤原日織です。よろしくお願いします」
続いて、塚田さんが眼前の女性を私に紹介しようとしたら……
「管理係の中本佳苗です、よろしく!」
彼の言葉を待たずに、自ら自己紹介を終えた中本さんが、私に向かってサッと手を差し出してくる。
慌ててその手を取ると、思いのほか強くギュッと握られてしまった。私は、思わず痛さで顔をしかめそうになって、そんなことをするのは失礼だと我慢する。
コメント
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女同士の争い???
第3話、読み終わりました!管理係の中本さん、登場の仕方から存在感がすごくて、日織が一瞬で「彼女も塚田さんのことが好き」と悟る場面、ゾクッとしました。同じ相手を慕う者同士の緊張感、この先どう転ぶのか気になります。それにしても塚田さんの、日織のデスクだけ急ピッチで片付けたエピソード、あの照れ笑いズルいですね…。組織の空気感や日織のコンプレックスも丁寧で、没入しながら読めました。次話も楽しみにしています!