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釈放後の志摩+伊吹×久住
久住受け
夜11時過ぎのコンビニ。
雑に貼られた「夜間スタッフ募集中!」の張り紙の横、スライドドアが開いた。
夜風が涼しい。バイトを終えた久住は、エプロンを脱ぎながらレジ裏から出てくる。
「おーつかれ、久住」
店前で腕組んで待ってた伊吹が、にやっと笑った。隣で志摩も煙草を指先で回してる。
「……は? なんでおんねん。おまえら、コンビニまで迎え来るとか、付き合ってんの?」
「んなわけあるか。てか、お前こそなんでまだここでバイト続けてんだよ。普通飽きるだろ」
「社会復帰って、継続が大事なんちゃうんか? そういうとこやぞ、伊吹。ほんま、教育向いてへんで」
「俺、教育係ちゃうし」
「……まあ、今日で最終出勤日だけどな」
志摩が口を挟んだ。久住が眉をひそめる。
「……え? なんでおまえがそんなこと知ってんねん」
「店長から聞いた。お前、こっそり辞表出してたろ。どうせまたどっか消える気だったんじゃね?」
「……はあー、つくづく性格悪いな志摩ちゃん。ほんまなんなん、GPSでも仕込まれてんの?」
「なわけねえだろ。……で、どこ行くつもりだった」
「うーん、ちょっと北のほうでな? 知り合いおって――」
「はい、うち来よっか」
伊吹が笑顔で言った。
「……はあ?」
「家来い。志摩んち」
「……え、それ、お泊まり的なノリ? 冗談きっつ。ふつーにいややねんけど」
「逃げられる前に囲っとくって話。お前、またどっかで爆弾ばら撒く気だろ」
志摩が腕を掴んで引き寄せる。久住がちょっと身を引く。
「ちょ待て待て、ボディタッチ重めやっちゅうねん! 痴漢やで!?」
「文句言うなら警察行くか?」
「そっちが警察やっちゅーねん!」
伊吹が久住の片方の腕を取って、にやにや笑いながら引っ張る。
「いいから行こーぜ。どうせ一人でコンビニ飯買って帰るとこだったろ?」
「……ま、せやけどな。おまえ、なんでそれ知ってんねん」
「志摩が見てた」
「やっぱりGPS入ってんちゃうんかコレ」
志摩が小さく笑った。
「行き先はもう決まってる。風呂、布団、メシはある。選択肢はない」
「人権ないやん……。おまえら、ほんま、うっとおし……」
そう言いながらも、久住は伊吹の引く力に抵抗せず、そのまま歩き出す。
文句を言い続けながらも、どこか諦めたような、安心したような顔で。
夜のコンビニ前には、置いてけぼりの自転車が一台。
⸻
***
布団にくるまりながら久住がぽつりと。
「なあ志摩ちゃん」
「なに」
「……オレがまた、変なこと考えたらさ。そん時も、ちゃんと捕まえてくれるん?」
志摩は黙っていたが、しばらくしてから、ぽつんと。
「ああ。何回でもな」
久住は、ふっと笑った。
「……めんどくさいやっちゃな。おまえら」
「おまえが言うな」
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