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エージェント67
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濃紺の旧型トヨタ・クラウンが、埼玉県の夜道をゆっくりと走っていた。ヘッドライトが照らすのは、木の幹と生い茂った下草だけだ。車内には甘ったるくて金属的な臭いが充満していた——安物のウイスキーとタバコ、それに生々しい血の混じった臭いだ。
四十代のがっしりした男が、バックミラーをチラリと見てほくそ笑んだ。
「まだピクピクしてるぜ。指を折った時点でもう死んでるかと思ったけどな」
後部座席から低い笑い声が漏れた。
「強い女だよ。膝をねじった時も、ひーひー言うだけで気絶しなかった。トランクの中でまだ数時間は保つだろ。大事なのは生きているまま現場に届けることだ。死体は重くて引きずれないからな」
三人目の最も若い男が、にやりとして携帯のライトをつけ、その光をトランクに向けた。
「写真は最高に撮れたよ。太ももの皮を切った時、血がきれいに流れた。もうほとんど悲鳴も上げられないけどな。声がかれちまった」
トランクの中から、かすかな湿った引っかく音が聞こえる。折れて血まみれの爪が金属を削る。時々、嗄れかすんだ弱々しい嗚咽。誰も気に留めない。車は森の奥へと向かっていった。
その同じ頃、東京のまったく別の場所で、3年B組のグループチャットに緑の点滅が現れた。
ゲンゾウ:
「レンジ、見たか? 明日、新しい転校生が来るんだって。大阪からのアリサ。グループの写真じゃまずまずの顔だぞ」
レンジ:
「見たよ。顔は可愛いし、スタイルも悪くない。放課後早速声かけに行くか?」
ゲンゾウ:
「もちろん。放課後、市場に行こう。マンゴーが安くなってる。それから裏路地の小さな喫茶店をぶらつこう。美味いコーヒーを出す店を知ってるんだ。それと……金がいる。川崎の倉庫で荷積みのバイトをやらないか? 時給1800円、即日現金、詮索なしだ」
レンジ:
「荷積み? 俺たちには向いてないだろ」
ゲンゾウ:
「いつまでも親の金で暮らす気か? 一日で楽に1万5千円は稼げる。そうすりゃビールも何もかも足りるようになる」
レンジ:
「わかったよ、乗った。でも腰を痛めたらお前のせいだからな」
ゲンゾウ:
「了解」
「夜だ。明日、7時半に校門のところでな」
ゲンゾウは携帯を切ってパーカーのポケットにしまった。夜は暖かく、ほとんど蒸し暑かった。彼は細い住宅街を歩いていた。街灯は一つおきにしか点いていない。セミがうるさく鳴き、どこか遠くで夜鳥がさえずっている。彼の前方を、短いスカートを履いた女子高生二人が笑いながらささやき合っていた。
ゲンゾウは袋に手を入れ、種子を取り出してひとつずつ割り始めた。バリッ。バリッ。バリッ。殻がアスファルトに落ちる。
前の電柱に、新しいチラシが貼られていた。
彼は立ち止まった。
【行方不明者】
【遺体の一部が発見されました】
人の身体を探しています。
その下には鮮明な写真が貼られていた。濡れた草の上に置かれた透明な袋の中の、切断された女性の手。皮膚は青白く、ろうのように艶がない。爪には淡いマニキュアがきれいに塗られている。しかし手首の部分には深く不完全な切断面がある。白い骨と、引きちぎられた腱、そしてその周りに黒ずんだ乾いた血。発見日は三日前。
写真の下に小さな文字で書かれている:
「何か情報をお持ちの方は、全国日本探偵機構までご連絡ください。
電話:0120-XXX-XXX
報奨金 50万円」
ゲンゾウは動かなかった。彼の歯の間で、特に大きく種が割れた。彼は首をかしげ、切断面をじっくりと観察した。その縁は、ある箇所ではギザギザで、別の箇所ではほとんど滑らかだった——まるで最初は鈍いナイフで挽いてから、引きちぎろうとしたかのように。
「ふうん……」彼はそっと息を漏らし、目を離さなかった。
前方の少女たちは笑い続けている。一人が振り返って見たが、ゲンゾウはその方向さえ見なかった。
彼は殻を地面に吐き出し、両手をポケットに入れて歩き続けた。チラシはその後ろに残り、薄暗い街灯の下でぼんやりと光っていた。
数キロ離れた場所で、旧型クラウンが空き地に停まった。エンジンが止まる。三人の男が車から降り、トランクを開けた。
中の少女はまだ生きていた。その目は大きく見開かれ、瞳孔はショックで開ききっている。手足は太い縄で縛られ、自分の血まみれの服を詰めた猿ぐつわが口に押し込まれている。太ももには長く浅い切り傷があり、そこから血がじわじわと滲み出ている。左手の指は不自然な角度にねじ曲がっていた。
一人の男が身をかがめ、指で彼女の頬をなぞった。
「怖がるな。すぐに終わるから。ちょっとだけ……もっと遊ぶだけさ」
その瞬間、ゲンゾウはすでに角を曲がっていた。種は食べ終わっていた。彼は空の袋をくしゃくしゃに丸め、近くのゴミ箱に投げ入れた。
——車はすでに現場に到着していた。
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