_蝙蝠 side
別れや相違、信頼関係の崩壊などは唐突に起こる。
しかも一瞬にして自分の目の前からなくなっていく。
例えばボルダリング。
登るのには時間がかかるけど、落ちるのはすぐだ。
積み木だってそう。
積み上げるのには技術と時間が必要だけど、壊すのには何も要らない。
そう思うと怖いよな、生きるって。
生きないとそりゃ出会いもないけど、死なない限りは別れを一生繰り返す。
『あー怖……』
見回り終了後、かじかんだ手に息を吹きかける。
手袋をしているのにも関わらず、こんなにも指先が冷える。
だから俺は夏が好きなのにな。
『部屋帰ろ…、むり、寒すぎ』
冬が嫌いという訳ではないが、やっぱり寒いのは嫌だ。
こういう時こそ、能力を使えば良いんだろうけど、そんなやる気は到底あると思えない。
今にも雪か雨が降り出しそうな、曇った空から逃げるようにして本部へ帰る。
構成員全員の憎しみだのストレスだのが詰まった場所であることは確かなのに、何故か暖かく感じた。
誰も居ない虚空よりかは憎悪のほうがマシか。
だってそこに誰かが居るのは確実なんだから。
虚「おかえり」
ラ「おかえりなさーい!」
『ただいまっす』
部屋の扉を開けると、温かい声がかけられる。
ぼすん、と自分の布団にうつ伏せに飛び込めば、外とは全く違う暖かさを感じる。
冬のちょっとだけいいところだ。
虚「疲れてるね〜、w」
ラ「何してたんですかー?」
『いやなんか普通に◯△□✕÷…』
虚「ン???」
ラ「だいじょーぶですか…???」
『ぁ全然元気っすよ、ほら』
と言って、指先に紫色の炎を灯して見せる。
あーーーー眠い。
俺こんなに羅生さんみたいだっけ…?
ラ「あ、あったかい」
『俺の火を暖炉代わりにしないで貰っていいですか』
虚「お、ほんとだ」
『話聞けやごら』
枕で声が遮断されているせいで聞こえてないのか??
まぁもうそういうことにしとこう。
眠い。
寝よう。
瞼を落とした瞬間、ばん、とドアが開けられる。
月「おい三世」
「ついてこい」
『なんでやねん!!!』
ツッコまざるを得なかった。
上司?幹部?隊長???
知ったこっちゃない。
寝させろ。
マジで。
ってか休ませろ。
ここんとこ俺17連勤してんぞ。
しかも朝昼夜深夜の4回行動やぞ。
ここはブラックか。
だーれが闇社会やからブラックやねんほんまいてこますぞ。
いや関西人いてこますぞとか言わへんわ俺はエセ関西人か。
うるせぇな純関西人やぞこちとら。
『ガチで言ってます??ほんまに行きたくないんですけど』
月「今何連勤?」
『17っす』
月「大丈夫やろ」
「あたし最高367連勤やから」
『きっしょ!!!!!!』
『あごめんなさい間違えましたぜひ行かせてください』
月「おし」
月ノさんに導かれるように連れて行かれる。
あー、また外出んのかよやだぁ……………。
月「寒ない?」
『めっっちゃ寒いです』
月「…ぁ、三世、お前……」
炎出せたよな???
という圧満載の目で見てくる。
『いや出せないです』
月「嘘つくなや」
『ぜひとも出させてください』
月ノさんに近い方の腕、左腕に炎を宿す。
あやばいやる気がなくなっていく、あーーー帰りたい。
帰りたいなー!!!!!!(
月「お、あったかい」
『いつから俺の能力は暖炉になったんすか』
月「星月衆入った瞬間?」
『理不尽』
月「はいついた」
言い合ってたらすぐついた。
『うっわ…、』
『なんですかここ』
到着したのはコンクリートの破片がそこら中に散らばり、
今にも崩れそうなほどに傾いたビルがシンボルとなっていた廃墟。
到底人が住んでるとは思えない。
月「なーんか人が住んでるんだってよ」
『住んでんの!?!?』
まじで言ってんのかこの人。
月「おん」
「そいつの救出と殺傷が任務」
『え、とりあえず全部燃やせば良いですか?』
月「あー……、、ええんちゃう←」
『忍飛流忍術、炎卆、五の槻、”神炎”』
俺の手から放たれていった炎がまずビルを燃やす。
轟々と燃え盛る火はまるでこの世を感情を焼き払うように。
ぶわ、と吹いた北風で煽られるのも慣れた、というように微動だにしない火。
_忍びの炎は特殊である。
俺が使う忍術、忍飛流忍術の炎卆は酸素を使って炎を発生させ、
またその炎は酸素を起こしていく…。
というなんとも地球環境に優しい炎を生み出す。
まぁつまり一度使うと連鎖が起きる訳だ。
『…、めっちゃ暑いっすね、ここ』
月「誰のせいやろな」
崩壊していく廃墟を背に、歩き出した。
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名 ラチア__Rachia
二 シスター__Sisuter
能 治癒__Tiyu