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今の、小学校の中に中学校が有る感じ、この違和感、それは、俺の中の、俺の中を駆け抜ける洞察の糸口であった。
今や、この学校と言う空間に慌ただしさの香りが漂って、俺の心の鼻に触れる。
偶に、天井の裏で、人の足が蹴る、泡が弾ける音がして耳に届く。
愈、あの、形を持ったざわめきが、広がった部屋の中に済まず、学校の四方八方へと引き伸ばされていた。
この仮想現実、それとデスゲーム。このステージは、俺の記憶を使って作ったな。
今、よくよく考えて見れば、中学で屋上に上がった事は、アルバム撮影であったが、それはこの階層を繋ぐ階段をは通っていない。思慮するなら、それは非常階段を使用していた。小学生の時に至っては、階段すら見た事(記憶)が無い。中学と、その前の小学校なら、あったのだが。
同じく向く先生を背に、強く体を前に押し出して行った。
階段は左側が上りで、時計回りに規則正しい角張った螺旋を描く。その数段、床より下がった所で、壁に背を当て、見切れる左奥に鬼を見張る青年が1人と、それを見張る女性が1人。
鬼はのそのそと、何処へでもなくさ迷っている。
「先生、これ…。」
俺は先生を向き、右手に握り締めていた例の守りを見せた。
「持っておいた方がいいですよ。」
この声量で、
少なくとも、距離とは言え、この静寂の中にあの足のひたひたする音が響いているだけなのだから、
バレないと言うことは、この面の効能は存在を隠すまでもある。
先生は静かに、手早に受け取った。
見たところ、このフロアーには人の気配がほとんど無くなっていた。本当に皆分散し切ったと見て間違いないだろう。悪い予感なのは、それも叶わず皆殺しにされていた可能性である。
結局、全ての俺の仮説が筋違いである”もしも”を危惧して、隠密に、でも、多少は粗く、最上階まで階段を上った。
辿り着いた。
疲労を感じ、上半身に、直な重力の重みを感じた。
先刻まで、俺の中で凝っていた不安が、確信によって溶けだす。
合っていたのだ。
俺は立ち尽くした。
まあ、その姿の予想は大方当たった訳で、屋上へ続く道は、「前の小学校の屋上への扉」であった。
このステージは、俺の記憶を使って作られていた。
懐かしい…。
淡く続く段々をずうっと上がっていくと、見上げる大きな両扉が、白く塗られ、鉄のずっしりとを強いている。
威圧に腰が反る気がした。
ノブは回しで、ここは塗られず、鋭くも孤で鈍る光の反射。
床は鼠色のコンクリート、階段の無い途切れた方は、突き出して見下ろすバルコニーの造り。
全部懐かしくも、湧き上がる感情で、ぐもぐもと煮える背中の熱さ。
その中身は分からない。思慮もぐもぐもで煮える。
もし分かるなら、恐怖と好奇心の2つだけである。
ノブに手を掛けた。
指間腔にひんやりとを感じて、そこで動きを止めた。
袖から、俺自身の腕が伸びている。
ノブに触れ、程よく広げてノブに置いてある。
確かな触感もある。
俺の腕だ。これは俺の腕だ。
白くなっているが。
「___!?」
流石に怖くて、音を立ててノブから引き離し、同じ面を自分の顔に近づけたが、夜空の色に暗い影の中で、腕は白粉が如しの一面一色だった。
丁度、この顔と同じ色で。
凹凸はある。手の形はまるで俺の手だ。但し、一面何の斑も無い白色で、爪と肌の境目とか、指の間とかの影は認められる。
両腕の産毛が立つのがわかる。
思慮する。
こうなると、この狐顔はもはやただの顔では無い。
但し俺のこの狐の顔は、そのままどの部分の表情をも、変えずにただ前を見るだけで居る。
見てはいないが、首とかも同じだっただろう___
___重い振動が、甲高い反響の残滓を散らし、下から響いてきた。