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そう言えば、おじいちゃんがクリエイトで複写の魔法を作ればいいと言ってた。それがあれば何でも複写できるんだよね。ま、コピーってことだよね。最高に便利そうだから作るかな。

醤油があればそれをコピーすればいいんだよね。ソースなんかも同じ事。まあ、比較的安価で手に入るものはいいんだけど、高額な消耗品は助かるかもね。


ものの十五分で終わった食事は大満足だ。

日本にいた頃は、どこにでもなんでも売っていた。コンビニにいけば二十四時間買えた。確かに便利だけど、それに慣れすぎてて感謝もなく買っていた。今ならわかる。生き物を食べて生かされてるんだって。

だから余分な殺生はしたくないし、する必要もない。

食べ物が溢れてた日本だったけど、廃棄も多かったらしい。もったいないことだよ。なんで貧困層の人たちにそういうものが渡らないのか、疑問だった。でも、それは俺たち自身の感覚がズレてたって事かな。この世界ではそんなことは通用しない気がする。



美味しい紅茶を飲みながら、フラットは領主にもらった菓子を食べている。

俺は片付けを終えて、シートにごろりと横たわっていた。

このままだと寝ちゃいそうだね。でも、こんな所で居眠りすれば、死が待っているだけだ。もう不慮の事故って感じの死はいらない。

眠気覚ましに薬草でも採りますか。

もしかしたら、簡単な薬なら作れるかも。クリエイトならね。

錬金術が必要なポーションなんかは無理だろうけど、薬草を粉末にして混ぜて、それを軟膏や飲み薬にもしたり。それくらいならできるかもしれない。

じゃあ、今度、簡単な薬が作れる本、みたいなのがあれば買っておこう。薬師初級、みたいな本があればいいな。



ひとしきり、薬草採取する。

今までにとったことのあるものと、鑑定して使えるものを採取した。鑑定を使えば薬の中身は知ることができるよね。そういう使い方もいいかもね鑑定。小さな窓にある程度出てくるし利用しない手はないでしょ。

もし本がなければ、いくつか薬を買って鑑定してみよう。ギルドで売ってる薬なら粗悪品はないと思うよ。



ゆっくりのんびり時間を過ごした俺は大満足だ。

フラットもたくさんゴロゴロできたし、たくさん駆けたから楽しかったと満足げだ。

そろそろ三時の鐘がなるころなのでギルドに戻ることにした。


ギルドに戻れば、大きな声で呼ばれる。

「ナギ! やっと戻って来た。早く来い、打ち合わせだぞ!」

え? いつ決まったの?

まあ、行くしかないけどね。

フラットの背にある椅子を片付けてから二人で二階へ上がる。今日は会議室だと言われた。

そっとドアを開ければ、手招きされた。

椅子によじ登ってやっと落ち着いた。ふぅ、疲れるよ。

フラットは俺の後ろにお座りだ。


「さて、揃ったな。領主様からの依頼であるオーク討伐後の調査だが、ここにいる皆で向かってもらう。条件に合わないが、ナギとフラットは討伐した本人であり、穴を発見したから同行してもらうことにした。ナギは年齢のことさえなければ既にBランクであることを俺が証言しておく。領内の騎士団も参加するが、主導権はこちらにあるから気にせず使え。このグループのリーダーだが、マックスになる。ナギと二人で様々判断して欲しい。質問は?」

何を調査するのか、というマックスさんの質問に対して、ギルマスは、音もなく現れるオークたち。切り抜いたように数メートル掘られた穴。そしてその横穴だという。

横穴からはミノタウロスが出てきたことも話した。

「じゃあ、ミノタウロスは討伐ですか?」

「いや。その時に出たミノタウロスはナギが狩った。解体場にあるから見てもいいぞ。まあ、バラバラだけどな」

クツクツ笑うギルマスは俺を見ている。

何で俺を見るんだよ!

「ナギ、お前、無傷でミノタウロスを仕留めたのか?」

とんでもないですよ。

「そんなわけないでしょ。限られた場所なのでいろいろ頑張りましたが、何度か壁にたたきつけられたし、身体に傷もつけられました。ヒールかけながらで精一杯ですよ」

ええ! と皆驚いている。

「でも、ミノタウロスだよ。普通のヒールなんて役に立たないでしょ?」

さすが、僧侶のレインさん。

「もちろん。だからハイヒールやエクストラヒールも使っちゃいました」

はぁ? と全員の動きが止まる。

あ、しゃべっちゃった。言わないでおこうと思ってたのに。

『ナギ、自分でしゃべってるじゃない。面白いね』

フラットに冷やかされる。でも、本当に俺はおっちょこちょいだね。

「あの。えっと……黙っていようと思ってたんです。だからギルマスにもヒールだと話してたんですけど。ヒールだけじゃ無理で。だから最終的にはエクストラヒールを使いました」

なるほと、とレインさんは納得しているけど、他の皆は呆気にとられたまま。どうしよう、この空気。

「ナギ。お前がどれだけすごいのかは理解した。ギルマスでさえ呆れてるくらいだ。頼りにしてるぞ、今回の依頼。他にはいなかったのか?」

あはは、マックスさんが気を使ってくれてるよ。

「あの時はいませんでした。洞窟の奥は行き止まりだったと思います。だからおかしいんですよ」

そうだな、と首を捻っている。

「それで、穴の調査で何も出てこなければどうするのですか?」

うん、それだよね。って、この人知らない人だ。

「とりあえず、調査結果を報告するが、おそらく埋めるようになるだろう。それは騎士団がやる。だが森の調査も頼むぞ。まずは森の調査優先だな。とりあえず、空を飛ぶ魔物が穴に出なけりゃ大丈夫だ。その監視は騎士団に任せておけ」

それでいいんですか?

マックスさんの疑問はもっともだね。

ギルマスは問題ないと言う。騎士団じゃ魔物の対応はできないからと領主から許可が出てるとはっきりいっちゃったよ。面倒な事にならなきゃいいけど。


出発は明日、早朝。

馬車を出せばいいんだけど、速度が遅いから馬だと言われた。俺はどうするのかと聞かれたので、フラットに乗って行くと言えば、皆納得だ。

野営になるかもしれないから、それぞれ道具や食事の確保をするように言われた。


それからは、冒険者だけで食堂に集まって話すことになる。

俺は、いつもの席に座って、フラットは子犬姿で隣りに座った。

果実水とサンドイッチを注文した。皆、それぞれに注文しているんだけど。


「ナギ、さっき見てきたぞミノタウロス。すごいな、あのデカさ。大変だったな」

あははは、そうですね。

「でもバラバラだったけど、お前はミドルソードだよな。なら魔法か?」

「うん。魔法。余りにでっかすぎで剣は抜けなかった。僕が壁を調べたとき、薄いとこがあったから穴を開けたんだ。それを壊して出てきたのがミノタウロス。だから責任持って狩らなきゃって思ったんだ」

そんなことを……

皆が優しい目でこちらを見る。

「フラットは? となりにいなかったのか?」

「フラットと残り十五頭のオークを狩ろうと移動してるときに、僕だけ落っこちた。だから、フラットにオークを任せて狩ってもらった」

おそろしい二人組だな、と誰かが呟く。


『ねえ、ナギ。もう食べちゃダメ? 夕食までどれくらい?』

『いいよ。何が食べたいの?』

『んっとね、パスタがいい。大盛りで』

了解、とウエイトレスさんに手を上げてパスタ大盛りを注文する。

「え? 食べるの?」

ミミカさんに聞かれたので、フラットのだと答えた。

なんで? と聞かれて、なんのことかなと視線を返す。

「いや。なんでフラットがパスタが食べたいと思ったのかなって」

なるほど、そっちですか。

「僕とフラットは念話できるんだよ。頭の中で会話するんだ」

なるほど、と納得しているミミカさん、レインさん。驚いているそれ以外の人。なかなか面白い構図だよ。

お前はどこまですごいんだ、とマックスさんは頭を抱える。

なんで頭を抱えるの? 僕ってそんなに変かな。

いや、大丈夫だ、と一人で納得したマックスさんだけど、大丈夫?


夕食が終わるまで皆で話しながら楽しんだ。

途中からは調査のことじゃなくなってたけど。

俺とフラットは、皆がお酒を飲み始めた頃には部屋に戻って、明日に向けてフラットと一緒に眠りについた。




早朝。

食堂でしっかりと朝食をとった俺とフラットはご機嫌だ。

そろそろ集まりはじめてる先輩冒険者たちをよそに、外のパン屋さん――といっても屋台だよ――でサンドイッチとホットドッグを爆買いする。残りもあるからかなりの量を確保できてると思うんだ。冒険者の皆で食べるのには十分だね。

野営になっても食事の準備は万端だ。

野菜などもいろいろ取りそろえているので、問題なく楽しめる。もし、皆が干し肉と固いパンなら、勧めてみようと思ってるんだ。喜んでくれると嬉しいな。

テントなどもひと揃え入っているので皆に合流することにした。既にフラットの椅子も取り付けてあるから、すぐにでも出発できるよ。


皆が集合したとき、ギルマスから話がある。

「今日のメンバーは特別に仮のパーティとして扱うことになったからな。わからないことはマックスに聞いて事故のないように。頼んだぞ」

はい!

皆やる気満々だ。

「ナギ君、君のおかげで、俺たちは今日参加できたんだ。ありがとう。マックスさんとナギ君が指揮系統のトップだと聞いたから、よろしく頼むな」

おお、『草原の風』の面々だ。

「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。何でもマックスさんに聞いて下さい。僕はオマケなので」

なにいってんの、とからかわれたんだけど、事実だよ。


外に出て、俺は大きくなったフラットに乗る。

当然、椅子に助けてもらってね。

「おい、ナギ。それはなんだ?」

お、ギルマスが興味持ったね。

「これは、一種の魔道具ですよ。大きさを調整してくれるので助かります。僕が落っこちると大変なので」

「そういうことか。そういや、フラットはまたデカくなったみたいだな。どこまで大きくなるんだ?」

あはは、俺に聞かれてもね。

「多分、もう少し大きくなると思います。お母さんが大きかったので」

なるほど、と感心している。まあ、親子だから似ると思うんだ。


一番前はマックスさん率いる『蒼い翼』の面々。

真ん中あたりに『草原の風』を挟んで俺とフラット。その後ろに他の人が入って、殿はピットさんとショルダーさんで駆けることになる。

途中で俺とフラットは最前に出ることになるかもって言われたんだ。まあ、現地に近くなったらそれも仕方ないよね。


行ってきます!

ギルド職員さんに見送られて、駆け出した。

フラットは随分ゆっくりなので気楽に駆けている。

俺も寝そうだよ、これ。


何とか寝ないで皆に付いてゆく。

このままじゃ、途中でお昼ご飯だよね。

そんな風に思っていれば、マックスさんから合図があった。あらかじめ決めていたから問題ない。

フラットにマックスさんのところへと言えば、隊列から離れて、スピードを上げる。すぐに隣りに並んだけど。

「ナギ、どこか昼食を取れるところはないか」

えっと、どこがいいかな。

『ナギ、この前休んだところがいいんじゃない?』

そうか、あそこならいいかな。

「前に一休みした場所がありますけど、そこでいいですか?」

それじゃぁ、前を走ってくれと言われて、フラットと一緒に少し前を走ることになった。

俺たちの頭の中にマッピングされている場所だから、迷うことはない。

後ろを気にしながら駆けてゆく。

それから三十分足らずでやっと到着した。


街道がよく見える草原だ。

森からも離れているから問題ないでしょ。

じゃあ、と皆は馬から下りて、背を伸ばしてるんだけど、俺はフラットの背から降りて、どこでお昼にするかと探索した。

予想通り、全く問題ない場所だ。

「マックスさん。このあたりならどこでもいいですよ。でもあまり離れない方がいいと思います」

了解、と皆を呼び寄せるマックスさん。

俺とフラットを中心に皆が集まってきた。

「ここで昼食をとる。ここからどれくらいかな」

時間はわからないなぁ。じゃあ、地図を見るかな。

「距離はおよそ十二キロくらいだと思います。少しかかりますね」

「そうだな。じゃあ、今夜は野営だな。到着した時間によって村の敷地を借りるか。騎士団との打ち合わせもあるし」

それがいいと全員が頷いた。



昼食です。シートを敷いてテーブルを取り出せば皆も近くで座り込んでますね。

それぞれが用意した弁当やパンを食べてるんだけど、俺たちは違うんだ。昨日仕込んでおいたスープを鍋ごと取り出した。

「皆さん、温かいスープはどうですか? 美味しいかどうかはわかりませんけど」

そう言えば、驚いているが、マックスさんがアイテムボックスか、と言った時点で納得顔だ。

はい、と小さなボウルを取り出して、干し肉と野菜が入ったスープを注ぎ分ける。

すごいね、と女性陣には大好評だ。

大きな皿を取り出し、フラットにステーキを五枚のせてやる。食堂で焼いてもらったものだ。

すげぇ、と聞こえて目を向ければ、草原の風のリーダーだ。

あはは、と笑って大量のパンとスープを注いだ。

「これ美味しいね。干し肉を使ってるんだ。ナギ君は料理もできるんだね、すごいよ」

いえ、それほどでも。そう口を濁した。

作り方は俺のレシピだけど、作ったのはクリエイトさんだ。

ガツガツと食べるフラットに、野菜サラダを取り分ける。

俺も負けじと食らいついた。当然フラットはお代わりだけど、他に食べる人はいないかな。

「ステーキ、食べますか?」

一番に手を上げたのはマックスさんとショルダーさんだった。

爆笑する皆だけど、結局全員量の違いはあれど、食べたんだよ。

「これ、全部お前が狩った魔物か?」

そうだよ、とディグビッグとオークだと説明すれば、美味いな、とマックスさんは真剣だ。

焼いたのはプロだからね。

転生した少年は三歳から冒険者生活始めました。

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