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オイルリグの事件対応中犯人に撃たれて海に落ちてしまった。いつものように収束するまで待ってから通知を出しても救助が来る気配は無い。
「おーい、誰かいませんかー!歪んでるのかな…」
こういう時はどうするんだっけ、と遠のく意識の中でぼんやり思い出しているとバシャバシャと波をかき分ける音が近付いてきた。
「誰かいますかー!」
「ぐち逸!?」
「!ぺいんさん!!」
名前を呼んだ瞬間急に身体が重くなり海底へと沈んでいく。ぐち逸は見失わないよう小さい影を一直線に追いかけぺいんの腕を掴んだ。風が強く波が荒い日、泳いでいるだけで相当体力を持っていかれてしまい浜辺に上がるとドッと疲労が押し寄せてきた。
「ゼェ、ハァ…ハッハァ、ゲホッゲホッ…今治療、しますから…ゲホッゴホッ…」
「大丈夫?ごめんありがと……あっぐち逸!」
治療されぺいんが起き上がったと同時にぐち逸がゆっくり隣に倒れ込んだ。息が上がったままうずくまっている。
「怪我してたの!?」
「ゼェ、ゼェ…さっき撃たれたので、でも止血したはずなのに。すいません。」
「無理するから傷口開いちゃったんだよ、とりあえず個人医呼んで!」
大きく上下する背中を擦り手を握って救助を待っていると、程なくして赤い小さな車が目の前に停まった。
「…珍しい、タラオさんって救助要請に来るんですね。」
「キノコ狩りの帰りだったからさータイミング悪く通り道だったわ。」
「ちょちょ待って、鱈タラオって個人医だったの!?大丈夫!?」
「まぁにわかには信じ難いですが、悔しい事に腕は確かです。」
「失礼な警察官だなぁ俺ぐち逸の先輩っすよ?…はい治ったー。送って行きましょうか?」
「ありがとうございます、私はバイクがあるので。伊藤刑事は?」
「あー…お願いしようかな、この車2人乗りだもんね。バイクより安全…なのか?」
「あ、ちょっと待ってくださいまだ開けないで。助手席にニワトリ乗ってます。」
「ウメちゃん1回避難な。はいじゃあ乗ってくださーい。」
警察官を隣に乗せているからなのか、思ったよりも安全運転で街に向かう。ほぼ喋った事の無い相手でぺいんは気まずさを感じているがタラオは全く気にしていない様子だった。
「なんであんな所にぐち逸といたんすか?悪い事でもしてた?」
「んな訳無いだろ、ぐち逸が助けてくれた瞬間に倒れちゃったから一緒に待ってただけ。」
「ホントかな〜?怪しい…別に俺隠すっすよ?」
「だから違うって!そう言うタラオくんはどうなの、持ち物検査でもしよっかな?」
「おっとぉそれはお断りっすね、着いたらいいモノあげるから許して。」
全身黒ずくめに目出し帽、頭には謎のツノを生やしていていかにも怪しい風貌だが何か分かるかもしれないと話を振ってみた。
「…ちょっと聞いて良い?さっきぐち逸の先輩だって言ってたよね、ぐち逸ってずっとあんな感じなの?」
「あんな感じって?失礼で一言多くて生意気って事すか?」
「いや違う違う。ダウンしてる人がいたら誰彼構わず、自分の命も顧みず助けに行くの。」
「まぁそうだな、個人医の時は通知来たらどこにいても飛び出して行く事がほとんど。たまーに今日はいっぱいいるから平気か、って時もあるけど。」
「他人はそうやって何があっても助けようとするのに、自分の命には無頓着というか大事にしないのってなんでなの?」
「それは知らん、記憶喪失になる前も医者だったらしいしなんかその辺が関係あるんじゃね?…てかなんでそんなに気になるんすか、やっぱりこれは怪しいな。」
「へ!?いやいやちょっと気になっただけだよ、記憶喪失は心配だしね。」
「ふーん…はい着いたすよ、じゃあ約束のこれ。」
バレたらどうしようと冷や汗をかいてはぐらかし、疑惑の目を向けられながら車を降りると謎のキノコを手渡された。
「なんだコレ。まぁ ありがとな、じゃあなー。…はぁーぐち逸…なんて言えば良いんだろ。」
どうにかしたいのにどうすれば良いのか分からない、自分の不甲斐なさを嘆いていたら事件通知が鳴った。とりあえず今は仕事だと切り替えて無線に手をかける。