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「約束ね。絶対だから」
「ちゃんと借りは返すよ。じゃあ何か食べたいモノ考えといて」
「何でもいいの！？」
「まぁ。リクエストしてくれたらそれ作るようにはするよ」
「へ～ホントに料理得意なんだ。楽しみにしとく」
本当は作ってくれるモノならなんだって嬉しいけど。
でもオレのリクエストしたモノを作ってくれるなんて、オレの為にしてくれるのが嬉しすぎる。
「今までの彼女たちにはどんな料理作ってもらったの？」
「あ～・・・忘れた。適当に作ってくれてたけど・・・」
なんで、そんなこと聞くの？
そんなの覚えてるはずないじゃん。
適当に家で彼女気取りで作られて。
特に嬉しいとも美味しいとも感じなかったし、マジでなんの記憶もなさすぎる。
そう考えたら、オレ、マジ昔最低なヤツだったかもな・・・。
「そうなんだ？今までリクエストはしなかったの？」
「してない」
「えっ、してないの？じゃあ皆、料理上手だったんだね～」
「そういうのじゃないけど・・・。基本外で食べるし」
あんまりあなたの前でもう他の女のこと思い出したくない。
あなたと比べようもないし、正直ホントにそこまで真剣に付き合ってたわけじゃなかったから。
「そっか。だから彼女に作ってもらえてない分楽しみなのか」
「別に作ってほしいとも思わなかったし。ってか、オレは透子の手料理が食べたいだけ」
手料理作ってもらえるのがこんなにも嬉しく思ったのも、こんなに楽しみなのも、全部あなただけ。
あなただから食べたくて、あなただからこんなにも嬉しいだけ。
「ごちそうさま」
「全部食べれたんだね。良かった。じゃあ薬飲んで。ハイ」
そう言って慣れた手つきで次々と世話をしてくれる彼女。
「カットした果物も買って来たからまた食べれる時に食べて。冷蔵庫入れとくね」
「あぁ。うん」
「熱は測った？」
「体温計ない」
「体温計ないんだ！ ん～ちょっとごめんね」
すると、彼女が自分の手をおでこに当てて熱を測ってくれる。
「う～ん、やっぱちょっと熱いね」
いや、多分こういうことしてくれるから精神的にも余計熱が上がってるような気もするけど。
「ちょっと熱測っておく？うちの部屋に体温計あるから持って来るね」
そう言って、部屋を出て行こうとする彼女を。
「いい」
「え？」
「・・・帰んないで」
自分に触れてくれたことで、余計に体温が上がって気持ちも上がる。
弱ってるからか、余計にそんな彼女が恋しくなって、彼女の手を掴んで引き止める。
今はずっと一緒にいたい。
「体温計、隣から持って来るだけだから・・」
「いいよ、持って来なくて」
「いや、でも・・」
「いいから。そばにいて」
そんなのどうでもいい。
一瞬でも離れたくない。
ずっとオレのそばにいて。
今ならオレの望みを叶えてくれるよね？
きっと今はずっとオレの望み通りそばにいてくれるはず。
「わかった・・。ほら、手熱いじゃん・・」
そう言いながら握ったオレの手をゆっくりと握り返してくれる。
「帰んないから。寝るまでちゃんといるから。安心して寝て」
やっぱり叶えてくれた。
彼女のそんな優しい言葉が声がオレの中にゆっくりと染み渡って、そばにいてくれる幸せを感じながら、オレはそれからゆっくりと眠りについた。
また思いがけず過ごした彼女との夜。
こんなに優しくてこんなに近くて。
こんなにもやっぱり愛しく思えた彼女。
彼女に初めてオレという存在を意識してもらえた気がした、オレにとって特別な夜。
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