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「じゃ、伊作くん、いってきます。
はぁ。今日も上司に詰められて、クライアントから罵声浴びて、
定時が夢の時間になるなのかな……。憂鬱すぎる…」
「アハハ…、お気をつけて…。
帰ってきたら、少しは楽になれるように
僕ができることをしておきますね!」
「……うん、ありがとう」
仕事へ向かう私の背中に、
伊作くんのやさしい声が降る。
たったそれだけで、駅までの足取りが
ちょっとだけ軽くなった。
「……ただいま……」
終電ギリギリ、タクシーの匂いが
服に染みついた帰宅。
部屋の明かりはついていた。
「おかえりなさい!ずっと待ってました。
……ごはん、温め直しますね。」
「え、寝ててよかったのに……
っていうか、こんな時間まで……」
「あなたが帰ってこないのに、僕だけ寝られませんよ。
……心配、しました」
その一言で、心がぎゅっとなった。
伊作くんが用意してくれたのは、
野菜たっぷりの煮物と、薬草を使ったみそ汁。
やさしい味が、疲れた体に染み込んでいく。
「……ほんとに、ありがと。
伊作くんは優しすぎるよ……」
「それは、あなたが優しいからです。
僕は、それに応えているだけですから」
真っ直ぐな言葉。
目をそらさずに、笑わずに言える
その心が、眩しい。