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王都を出て二日。今日も早い時間から俺は街道を歩いていた。

もうあの街に用はないからな。

いや、エリーが魔導具を見たいとは言っていたから近々連れて行くんだけど……

王都ターミナルは海に程近いところにあったが、別に海はどうでもいい。

だって船に乗ってしまうと自動的にジャパーニア皇国に行きそうなんだもん……

そんなわけで俺はこの国を南下している。

最初は北に向かって街に行ったが、そこから王都は東南東のほぼ端にあった。

まぁ海に近いから端だわな。

その王都からすこし西寄りに街道が南下している場所を歩いている。

「長閑だな…魔物の出現が少ないからそこら中で農業をしているな」

この世界では珍しい光景なのかもしれないが……日本の田舎みたいな風景だ。

林業も盛んなのだろう。林なのか森なのかわからんが、木が等間隔で伐採・植林されている。

「王の話だと街中には住みたくない種族の為に、森の環境も維持しているらしいが……色々考えないといけないから大変だな」

バーランド王国なんて王都の建設ラッシュの資材確保の為に森が一つ消滅したからな。

消滅させた張本人が言うのもなんだけど……

いや、俺は環境破壊は嫌だよ?

でも、聖奈さんがどうしてもって……

クラスに1人はいる人のせいばかりにする奴のマネをしていると、休憩するのに丁度いい大木が街道脇に聳え立っているのが見えた。

「あそこで一休みするか」

特に疲れてはいないけど旅と言えば休憩じゃん?

団子屋はないけど。

俺が大木に背を預けて休んでいると、何やら騒々しい声が辺りに響いた。

「馬鹿野郎!俺はそんなことをされても嬉しくないぞ!」

「野郎とは何よ!私は女よっ!」

くそっ。痴話喧嘩かよ……

失恋の傷が癒えない俺の近くでするとは…どうやら死にたいようだなっ!

声は大木の反対側から聞こえた。

どうやら同じところで休んでいた人達のようだ。

この大木、かなり大きいもんな…屋久島の杉の木かよ……

「人を騙して手に入れた金で幸せになんてなれないぞ!」

そうだそうだ!俺は俄然彼氏の方の味方だ!

よく言った!

当たり前のことだけど。

「じゃあ、何時になったら結婚できるのよ!貴方その歳でまだ見習いじゃない!

このお金があれば自分で土地を買って農業出来るのよ!?

農家の三男なんてどうにかしないとお先真っ暗よっ!」

……騙したのは良くない。

でも、彼氏は彼氏で彼女を幸せに出来ないなら別れてやれよ……

これで騙した相手が悪徳商人とかなら、俄然彼女の肩を持つぞ……

俺にとっては人の不幸は蜜の味ではないからなぁ。

ここであったのも何かの縁。声を掛けてみるか!

「どうした?騒がしいようだが喧嘩はやめておけ」

年齢的には新卒の年齢だが、異世界ではもうおっさんに片足突っ込んでいるからな……

「誰だよ。騒がしくして悪いが放っておいてくれ」

幻か…?

「そうよ!他人の話に……」

俺と彼女が見つめあっている。

「どうした?王都の知り合いか?」

「……すみませんでしたっ!!」

彼氏が話しかけると、彼女はそれに答えずに土下座した。

彼女はあの狐耳のお姉さんだったのだ。

口調が違うから結び付かなかったなぁ……

「ど、どうした!?こいつに何かされたのか!?」

彼氏はイケメンではないが猫耳が似合う可愛い顔立ちをしていた。

ちなみに俺が何かしたのではなくされた方だ。

俺が異世界こっちにも土下座ってあるんだなぁ… なんて的外れなことを考えている間も、お姉さんは土下座をしている。

「こ、こ、このお金の持ち主様よっ!」

「えっ!?」

猫耳彼氏はこっちの顔と彼女の土下座の間に視線を往復させた後、彼女と並んで土下座した。

埒は開かないが、俺の精神は中々現実世界に戻って来てはくれなかった。


何も言わない俺。


お金を取り戻しに来たと勘違いしている二人。


「今日もいい天気だなぁ」

二人からしたら最早ホラーみたいな言葉しか出てこなかった。





「ほ、本当に捕まらないのですか?」

暫く放心した後、俺は二人に顔を上げるように伝えた。

そしてお金の件を水に流すとも。

「ああ。だが教えて欲しい。君なら俺に上手く言い訳して街を去ることも出来たんじゃないのか?」

俺は少し疑問だったのだ。

彼女の話術に完全にハマっていた俺をさらに騙し、追っ手が掛からないようにすることが彼女になら出来たはずだ。

なぜしなかったのか?

「…それは」

「怒らないから教えてくれ」

もはや古傷()は抉られるだけ抉られたのだ。これ以上はない。

だから少しスッキリするために許したし真実が知りたかった。

「…あの後、セイ様のことを耳に挟みました。お貴族様に平然と喧嘩を売ったと…」

彼女はポツポツと語り始めた。

「お貴族様に喧嘩を売れるような方なら、私のことなどどうにでも出来ると……

それを知って怖くなってしまい、言い訳もせずに王都から逃げました……」

「そうか。確かにあの日、君と別れてからすぐに貴族に絡まれたな。あれが原因だったのか…」

ってことは、豚がいなかったら俺は幸せな気持ちのまま王都を出発出来た?

やっぱり引き返して八つ裂きにしてこようかな?

「ひぃ…」「ど、どうか彼女の命だけは…」

………

余程恐ろしい顔をしていたようだ。

無駄に怖がらせて申し訳ないが、これくらいの意趣返しならいいだろう?

…こういうところが年齢イコールなのかも………

「何もしないと約束しただろ?それで話は戻るが、困り事があるようだな?」

目的のない旅だ。彼女を完全に吹っ切る為にも首を突っ込む事に決めた。

「実は彼の仕事のことで…」

「おいっ!やめろっ!」

「貴方は黙っていて!」

うん。尻に敷くタイプか……

良かった。俺の苦手な聖奈さんタイプで……

あの時はネコをかぶっていたんだな。

実際は彼氏が猫で彼女は狐だけど……

「彼の上司…雇い主の人は彼を都合よく使っているだけなのです。それでこの歳まで見習いのままで……

最初は三年したら畑を分けてくれるって彼から聞いていたのに……」

うーーーーん。

彼は馬鹿なんだろう。

でも悪い馬鹿じゃなくて、不器用な馬鹿なんだろうな。

「その畑があるのは?」

「この道をもう少し行ったところを右に入って暫く進んだところにある小さな村です……

私の出身地はさらに奥の村なのですが…」

どうせ目的のない旅の途中だ。

「よし。行くぞ」

「えっ!?行くって…」

「セイ様…こんな私達の事で…」

二人は恐縮していたりまだ事態がのみ込めなかったりしている。

が、関係ないぜっ!

俺は狐耳お姉さんに案内をさせて村まで行くことにした。






「あそこです…セイ様…不躾ですがどうされるおつもりでしょうか?」

俺達の視線の先には、周りを畑に囲まれた10軒程の粗末な家が固まっている村がある。

畑の周りは林になっているから開墾すれば農地は増やせそうだな。

「まだなんとも。片方の意見だけを鵜呑みにはしない。

まずはその男の雇い主と話さなければな」

「はい。ごもっともです。雇い主はあそこの家の主です。呼んできて」

「…わかったよ」

彼氏は渋々だがここまで来てしまったので、呼んできてくれるようだ。

雇い主の家は周りの家と変わらず粗末なものだ。

あまり手入れされていない山小屋とかのイメージだな。

「あまり手荒なことは…」

「悪いが俺は俺のしたいようにする。それにそんなことが言えるのか?」

ふふふっ。お前は俺に逆らえまい!

これで別に悪いことをしようとしないところが、俺のダメなところなんだろうなぁ……

人としては正解でも、男としては不正解のような気がする……


暫く待っていると雇い主の家から二人の人物が出てきた。

一人は猫耳の誰得な彼氏。


もう一人は……


馬鹿な………

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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