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馬鹿な……
「私に用があると聞いたのだけど?」
俺の目の前に現れた彼氏の横にいたのは……
ミランに勝るとも劣らない美少女だった。
獣の特徴はない。
「…コイツの雇い主か?」
「そうよ?文句ある?」
ツンだ……デレられたら死ねる。
俺は思わぬロリに冷や汗を流した。
「も、文句はない。若そうだが…いや、年齢は関係ないな」
「あら?貴方は中々見る目がありそうね。
でも若くはないわよ?もう24よ。
この見た目のせいで作物の買取の商人には買い叩かれるから、間に入ってくれる彼には感謝しているわ」
ん?なんだか雲行きが……
いや、まだわからん。イケメンだからってみんながみんな……
「彼は早く独り立ちしたいそうだが、貴女からみればまだ早いか?」
「そうなの?いいえ。私は困ると言えば困るけど、独り立ちするなら応援するわ」
ちなみに雇い主は身長150センチくらいで、顔は15歳くらいにしか見えない……
おじさんが中高生を虐める構図にしか見えんぞ……
「そ、そんな!ヘレンさん!
僕は貴女をずっと支えます!」
「もう!私のことは師匠と呼びなさいって言ってるでしょ?」
な、なんだ、これは?
「ちょっと!?どう言うことよ!?」
お姉さんが怒るのはわかるが……余計ややこしく……
「エミリー…済まない…」
「は!?この女の子…おばさんの方が私よりいいって言うの!?」
「ちょっと!!女の子はわかるけど、おばさんとは何よっ!?」
カオス……混沌と書いてカオス……
…やっぱり帰っていいですか?
「ま、待て。話がややこしい。俺が話すから3人は黙っていてくれ」
チャキッ
俺は3人を黙らす為に、腰の剣の鯉口を切って見せた。
「「「ひっ!?」」」
黙った3人に俺は話しを続ける。
「…まずはヘレンさん?」
「な、なによ…暴力には屈しないわよ!」
何か物凄く勘違いしているが……
「この男とはそういう…男女の仲なのか?」
「まさか?私には死に別れた最愛の旦那と、その忘形見の子供がいるわ!
今は男より子育てよ!」
うむ……
「次にお前はどうなんだ?ヘレンさんはこう言っているが?」
「ぼ、僕はそれでもヘレンさんの側に…」
ここで彼氏に殴り掛ろうとしたお姉さんを止める。
「エミリーさん。どうする?」
最早どうしようもないけどな……
「こ、こんな男はもう他人です!!」
「エミリー…ご、ごめん…」
男はお姉さんにビビりながら謝る。
後は……
「ヘレンさん。どうする?」
「…確かに力仕事や商人とのやり取りで助けてもらっていたけど……私は一人でやって行くわ。
元々一人でどうにか出来ていたんだし」
「ま、待ってくれ!僕は貴女のことが…」
尚も言い募る男の首根っこを掴み、ヘレンから引き剥がして地面に放った。
「はぁ。ため息しか出ないが、結論も出たな」
何か俺ってしなくていい損ばかりしている気が……
それもこれも不治の病である年齢イコールのせいか……
「ヘレンさんはここで今まで通り。エミリーさんはもう関与しない。
お前は二人に今後関わるな」
「か、関係ない奴が決めるなっ!!」
土壇場に来て男が意地を見せるが、それは悪手だ。
「何?それは俺に言ったのか?あぁん?」
俺は男に近寄りそう凄むと、詠唱を始めた。
「な、何をブツブツ…」
『ファイアウォール』
ゴォォオオー
近くにある木に向けて魔法を放った。
それを目が飛び出さんばかりの驚愕の眼差しで見つめる3人。
俺はゆっくりと魔法の鞄からあるものを取り出した。
「俺は王族とも取引のあるランク4の商人でもあるが…」
商人カードを見せて、さらに別のモノを取り出す。
「冒険者ランクAでもある。言っている意味がわかるか?」
この紋所が目に入らぬかっ!!?
まるで某長寿ドラマの名シーンのように3人に見せびらかした。
「セ、セイ様…」
狐耳のお姉さんは驚きを隠せないでいるな!よしよし!
「簡単に言えば、お前を経済的に困窮させることが、この商人カードの身分でわかるように簡単に出来る。
さらに言えば、お前がどれだけ強くとも仲間がいようとも、俺には力でも敵わない。
貴族の騎士達も王都で倒したっていうのは聞いただろ?」
「ぼ、暴力は…」
「お前は自分にくる強き力は拒み、力の弱い女性に無理矢理迫っても良いという道理が通ると思っているのか?」
「……もう二人とは関わりません」
男は項垂れて、そう言った。
「それでいい。二人には手紙を渡しておこう。
この男に迫られたり、他に困ったことがあれば、これを冒険者組合か商人組合に持っていけば力になってくれることだろう」
そういい魔法の鞄からバーランド王家の封蝋が押された手紙を一通ずつ渡した。
俺からの紹介状を作らせておいて良かったよ。
聖奈さんから初めに渡された時は『渡す人がいないのにいるのか?』って聞いたのが懐かしいぜ……
『そういう時はスッと出すのがかっこいいんだよ?その時になって急いで書くのってカッコつかないよね?』
うん。今はそう思います。
「は、ははぁ!!」
狐耳のお姉さんが恭しく受け取ると、合法ロリこと元雇い主の未亡人さんもそれに習い受け取った。
未亡人…言葉の響きやばいな……
「お前はどこへとも行くがいい。二度とこの村とこの先にある彼女の村には近寄らないこと。
これを守っている間は平穏に暮らせるだろう」
「ひ、ひぃっ!?」
ダッ
猫耳誰得元カレは初めて猫らしくダッシュした。
あの脚があればネズミくらい獲れるだろう……
旅をしていれば思い掛けないことは山ほどあるな。
エルフもそうだったけど、これはなぁ……いらんわぁ……
俺はこの世界の不条理に揉まれながらも、再び旅を続けた。
「はい!あーんしてください!」
何でこうなった……
俺は今旅の途中である。
そしてここは宿が二軒ほどしかない寂れた宿場町なのだが……
「いや、いいから。俺は自分のことは自分で出来る」
やればできるっ!!
「そんな……セイ様が喜んでくださると思って…」
そういいながら俺の胸で泣き真似をするのは、狐耳のお姉さんことエミリーである。
あの後、ヘレンさんをそのままに、俺は旅を再開させた。
用はないからな。
しかし、ここで予定にない行動をとった人がいた。
それがエミリーだったのだ。
彼女は様々な理由から故郷の村には帰りづらく、別の所で暮らす為に旅へと着いてきた。
俺にとっては予定外も予定外……
初めて会った時なら喜んで舞い上がっていたんだろうけど……
流石に百年の恋も冷めていた。
一年どころか二日くらいの恋だったけど……
そして宿の食堂で夕飯を頂いている今に至るわけだ。
「ところで、このまま行くとこの国を出てしまうが…エミリーはどこまで着いてくるんだ?」
早く気楽な一人旅に戻りたい……
何せエミリーは見た目だけはいいからな…気が休まらない……
「…ホントに酷いですね。まぁ私が悪いのですけど。
出来ればセイ様とずっと一緒にいたいのですが、 ここまで嫌われてしまっては迷惑ですものね」
「いや…嫌ってはいないぞ?」
「ホントですか!?ではこのままずっと…『ダメだ』…やっぱり…」
危うく付き纏われるところだったな……
「だけどホントに嫌いじゃない。騙されていた頃は好きだったくらいだからな。
だけど、俺と一緒にこの国を出るのはやめておけ。
知ってるだろ?隣国は日夜戦争に明け暮れている場所だということくらいは」
「うぅ…出逢いからやり直したい…」
何やら言っているが、難聴系主人公の俺にはよくわからん。
「兎に角!エミリーとはこの先にある大きな街でお別れだ。いいな?」
「はーい。折角の玉の輿チャンスだったけど、仕方ないですね…」
玉の輿って言っちゃったよこの子……
くそっ!見た目は良いんだ!
後は出会った頃の性格や態度がデフォなら……
さらに数日後、漸く大きな街に辿り着いた。
どうやらここは、この国で唯一陸続きの国境が他国と面している辺境伯領の領都ということだ。
この国の武力を一番集めているところと聞いていたが、予想外に街は賑やかだった。
「それはそうですよ。この国に戦争を仕掛けられる国なんてありませんから」
「それもそうか……軍人がお飾りなのは良いことだな」
ウチなんて何処とも戦争する気は無いはずなのに、軍に結構予算を割いてるんだよな……
まさか俺が知らないだけで戦争する気じゃ…?
聖奈さんならあり得る……
そんなどうしようもない事を考えていると、街中へと入った俺達は宿へ着いたようだ。
「さっ!入りましょう!」
「エミリーはここで暮らすんだぞ?」
なんで宿も一緒なんだよ。
もう一人で頑張ってくれ…俺をぼっちにさせてくれ……
そう願いながら今日の宿へと入っていった。
「はっ!?」
気が付くと宿の部屋にいた。
諸々の手続きはエミリーがしてくれたから案内されただけだが……
「何で二人部屋なんだよ!?」
俺の案内された部屋には、大きなベッドが一つあるだけ……
今までの宿はもちろん別室だ。俺も男の子だからなっ!
「二人の最後の夜なんです。最後にわがまま聞いて貰えませんか?」
見た目は可愛いんだよな。とても……