テラーノベル
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side:ur
ya「冷やし終わったらゲームしようぜ」
ur「おー…ぁ、タオルとか無ぇ感じ? 」
ya「そこの右の棚にバスタオル入ってるから勝手に使って」
ur「あざ」
言われた通り右の棚を開ければバスタオルが何枚も入っており、手前から1枚取って腕の下に巻き付ける。そこに冷えた水をかけてタオルに染み込ませ、そのまま固定させる。そうすれば溶けた皮膚も歪な肌ではあるが元に戻る。数日もあれば肌は綺麗元通り、その間は動かすことの出来ない腕。
スマホをいじっていれば視界の端でゆあんくんがテレビをつけているのが見え、横目で見ればゲームの準備をしていた。手伝いたい気持ちもありつつ、動貸せない腕だと逆にお荷物になってしまう。視線を感じたのか、ゆあんくんが此方を振り向き目と目が合う。その視線は直ぐにタオルを巻いている腕に行き、心配の眼差しを送られる。
ur「…なに」
ya「いや…別に」
ur「ふーん……」
ya「そろそろ固まった?」
ur「んー、お、丁度固まってるわ」
ya「んじゃやんぞ、濡れたタオルはその籠の中入れといて」
ur「あーい」
棚の横に置かれている籠に濡れたバスタオルを入れ、腕を軽く動かす。溶けた跡は残るが綺麗に固まっている。これくらいなら明後日には綺麗さっぱり元通りだろう。
ゆあんくんの隣に座り、コントローラーを受け取れば腕をつつかれる。固まったあとによくされるので何も言わない。
ya「っしゃ、絶対勝つからな!」
ur「望むところよ!」
na「ゆあんくんご飯…って、いつまでゲームしてるんですか!」
ya「あ”ッ、のあさん勝手に入ってこないでよ!」
ur「隙あり!」
ya「わあ”!?ちょ、卑怯だぞうり!」
ur「よそ見する方が悪いんです〜!」
na「……もう、いいですか?」
ya「ぁ、はい…」
ur「……すみません」
ゲームに熱中していればいつの間にか夕飯の時間になっていたらしく、ゆあんくんの部屋に来たのあさんが昼からずっとゲームをしている俺らに怒りを隠せていない。その圧に負ける俺達も言い返す言葉もなく、そのままゲームの電源を落とし大人しくのあさんの後ろを着いていく。
リビングに着けば俺達が最後だったようで皆各々好きなことをしていた。
tt「遅いで2人とも、何しとったん?」
na「ゲームですよゲーム、しかも逆ギレしてきたんですよ!?おかしくない?」
ya「いや、あの…」
et「何回も呼びに行ったのに返事無かったゆあんくん達が悪いじゃん、ね?のあさん」
na「そーですよ!ゆあんくん明日覚えといてね?」
ya「ぁ”〜……」
撃沈しているゆあんくんを横目に、机の上に広がる青々とした食材達。生であったり焼いていたり、とにかく苦手を詰め込まれた料理に胃がキリキリと痛む。極めつけに唯一の救いであるサラダにはしらすが塗されている。どこにも逃げ道は無い。
ur「のあさ…これマジ…?」
na「なんですか?」
ur「あいや…なんでもありません……」
na「なら良かったです!さ、皆食べましょ!」
et「お腹空いたぁ〜」
mf「珍しく魚料理だなって思ったら…そういう事?」
na「気にしないでください、”たまたま”魚が安かっただけですよ」
mf「…そう?」
もふさんからの慈悲の視線が送られるが助けは無さそう、何なら久方ぶりの魚料理に喜びを感じる。
周りを見ると嬉しそうな人ばかりで、いつも俺のせいで我慢させてたんだなと思うと申し訳なさが積もる。それと同時に食べなきゃいけないという罪悪感が湧く。罰など関係無く、自分の席について目の前のお刺身を自身の取り皿に乗せ、唯一魚のないつまを多めに取り寄せる。妙に視線が感じると思い、目線をあげればほとんどの視線が俺に集まっていた。
ur「なっ…なに、?」
「そんなに見られてたら食いずらいんだけど…」
no「いや、うりりんが珍しいなーって…」
dn「嫌いなもの頑張って食べてるとこ見たいじゃん?」
ur「見世物じゃねーよ、早くみんなも食べなよ」
そう言うと、渋々といった様子で各々食べ始めていく。隣の席のゆあんくんは何も言わず、ただご飯を食べている。
俺は意を決し、箸で刺身をつまみ口へゆっくりと運んでいき、震える手を抑えながら口の中に入れる。生々しい食感に生臭い風味、慣れないそれらに涙があふれる。堪えようとしても自然に流れる涙、折角手間隙かけて作ってくれた料理になんて態度なのだろうか。それでも生理的に溢れる涙は止まらない。
jp「…無理して食べないでね?」
ur「ぅ”…っ、んーん…ちゃんと食べるよ」
ya「無理して食って吐かれた方がめーわくだから、限界きたら言えよ」
ur「……ん」
やっぱり、俺の事よくわかってる。
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