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偶然、昔好きだった人に会った。
一緒に呑んで、流れでホテルに行って、雰囲気でそういうことをした。
事後、ほんのりと紅く染まった頬に口付けすると、惚けた顔でヘラりと笑って「すき」の2文字を口にした彼女と、そのまま眠りについた。
次に目を覚ました時、隣に彼女はいなかった。
「…夢だったんかな…」
重い身体を起こして部屋を見渡す。
この部屋に彼女がいたと感じられる痕跡が何一つ残されていなかった。髪の毛1本残っていないし、シーツのシワも伸ばされている。
人一人分空いて、無駄に広く感じられるダブルベッドには彼女の温もりも、香りも残っていない。喪失感と虚無感に襲われて、再び白い枕に頭を沈めた。
「連絡先…聞いとけばよかったなぁ…」
返答が返ってくるわけでもなく、ただ1人ポツリとつぶやく。
職場も家も知らなければ連絡先も知らない。普段酒を飲まないと言っていた彼女と飲み屋で会えたのは、きっと偶然。こんな場所であんなことが出来たのも、きっと。
偶然をもう一度。