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青天の霹靂、という言葉があるように、それはまさに突然の出来事だった。何かしらの前触れがあったわけでもなく、特別な日だったわけでもなく。至っていつも通りにキスをして、抱き締め合って、その肌に触れようかといった時に、唐突に降ってきた。
「せらお 、別れよう」
「えっ?」
ぱちりと目を瞬かせ、雲雀を凝視してもその美しい瞳は揺らがない。聞き間違いかと思って問うと、雲雀は無言で首を振った。
「なに、なんで、なんでそんないきなり……」
「いきなりじゃない、ずっと考えてたんだ。俺たちこのままでいいのかなって」
少し目を伏せて雲雀が静かに言う。脱がせようとシャツのボタンにかけていた手は、雲雀によってゆっくりと下ろされた。
「せらおとこういう関係になって、もう何年も経つけど……ちょっと、…大分遅くなったけど、やっぱりこういうのは間違ってると思う」
「間違ってるって、何が」
「こうしてキスしたり、セックスしたり……俺たちが『恋人』としてやってることの全部。だっておかしいだろ? 俺たち元々は『友達』だったのに、こんなことになってるなんて」
雲雀が何を言っているのか、俺にはまるで分からない。だってそんなの今更にも程がある。一緒に暮らすことになって、その『友達』の線を飛び越えて『恋人』になったというのに、俺も雲雀も、それを承知でこういう関係に落ち着いたのに、今更すぎるのだ。
前から考えていたと雲雀は言うけれど、そんな素振りは全くなかった。多分何かがあって、それで一人ぐるぐると考えた末にこんな結論を出したのだろう。一人で悩んだっていい結果にはならないのに、全く学習しない男だ。
「お前も俺も、もう大人になっちゃったんだよ。いつまでも夢見がちな子供のままじゃいられない、いつか互いに結婚して、子供ができて、そんな未来がくる。だから、夢を見るのはもうおしまい」
夢だなんて、残酷なことを雲雀が言い放つ。俺にとってはいつも現実だった。真剣に雲雀との将来を考えていたし、この関係がいつか終わるものだなんて思ったこともない。
「それ、もう決まったことなの?」
「うん」
「覆らないの?」
「うん」
曇りのない瞳で雲雀が肯定する。これは、何を言っても聞かない目だ。説得は無意味だろう。
「……分かった。でも雲雀、最後に、一日だけ」
とん、とカレンダーを数ページ捲った先の赤く花丸印がつけられている日付を指さした。カレンダーを新しくする度、いつも一番最初に二人で印をつけていた所だ。
「俺たちが恋人になった日。この日だけ、俺の恋人として俺に抱かれて。そしたら、もうきっぱり諦めるから」
雲雀は少し迷うように視線を彷徨わせて、そして小さく頷いた。
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