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1 - 第1話 やりたいことはなんですか?①

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2023年03月23日

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私たちは、いつまで生きるのだろう。

80歳まで?

来年?

それとも明日?

そんなこと、誰にもわからない。

もしかしたら神様なら知っているのかも。

あとは未来が見える超人的な人とか。

でも、私には、私たちには関係ない。

だって、

私たちは未来じゃなくて

『今』を生きているんだから。


第1話 やりたいことはなんですか?①

「失礼しました」

自然と背筋がピンとしてしまう職員室から出た。

まだ、暑さも残る9月の終わり。

私は退部届を出した。

中学の時に始めた、大好きなバスケ。

でも、大好きだからこそ、やめることにした。

このままだと、大好きという気持ちで、他のモノに気持ちを向けることができないから。

好きって、人の目を曇らせちゃうもんね。

「よしっ。 学(まなぶ)を待たせてるし、教室に戻るとしましょうか」

私は未来に目を向け、胸を張りながら教室へ歩く。

歩き慣れた廊下も、いつもと景色が違うように見えた。

「明日菜、どうだった?」

我が2年5組に入ると学が退屈そうに、私の机に座っていた。

整然とした縦横6列ずつの席。

そのほぼ中央が私の席。

「『 天野(あまの)さん、あんなにバスケ好きだったのに』って言われたけどね」

「気持ちを押し通してきたよ」

「後悔してるの?」

「どうだろう。今は、してないかな」

「そっか。でも、自分で決めたことだからな」

「学に押しつけられたような気がしなくもないけど」

「責任転嫁はやめろよ」

そう言いながらも笑った学は、窓際にある自分の席に向かった。

「でも、まさか、こんなに早く行動するとは思わなかった」

学はルーズリーフの束とペンを持って、戻ってくる。

「今の私には、時間がいくらあっても足りないからね」

「…………」

「学?」

「なんでもない」

「ほら、ちゃっちゃとやるぞ!」

私は自分の席につく。

すると学は前の席につき、私と向かい合う。

そして、ルーズリーフを置いた。

私に1枚。

学に1枚。

「これって、やりたいことを書けばいいんだよね?」

「うん、思ったことを書けばいいよ」

「わかった」

ペンを握る前に、目を閉じて深呼吸。

今からやるのは、これから人生でやりたいリストを作ること。

私には “時間がない” 。

それを知った学が、提案してくれたことだった。

学とは、同じクラスになって、まだ半年。

波長が合うっていうのかな。

会話のテンポも居心地もいいから、一緒にいる時間は他の男子よりも長い。

それに、ちょっと雑な言葉遣いとは裏腹に、ちゃんと人を見てくれているというか……。

「よしっ!」

目を開けて、書き始める。

「う~ん」

「つまった?」

「でも、結構出てるじゃん」

「ちょっと、のぞかないでよ、えっち」

「どこが」

「じゃあ、変態で」

「変わんないから!」

「っていうかさ、どうせ見せ合うんだからいいだろ」

「それな!」

「ジャジャーン!!」

「……旅行にオシャレに学校に家族のことかぁ」

「THE・普通」

「学はどうなの?」

と、言いながら、学の紙を取り上げる。

「あっ、おい!」

「じーちゃんばーちゃんを労わる」

「読まなくていいから」

学は、取り返そうと手を伸ばしてくる。

バスケで鍛えたキープ力をなめてくれちゃあ困る!

「一日一感謝」

「やめろって」

「気持ちを伝える」

「ん?」

「気持ちを伝えるって……まさか好きな人が!」

「だから、やめ……」

「っ!」

学の手が、私の手を掴む。

「わ、悪い!!」

パッと手を離し、背を向ける学。

「痛くないし大丈夫だよ」

「あっ、いや、そうじゃなくて……」

「どういうこと?」

「そ、それは……」

学は何度もチラチラ見てきた。

そして、意を決したようにこちらを向く。

「俺、明日菜と」

ガララララッ!!

「うわぁっ!」

突然の来訪者に、学は飛び跳ねた。

「ん? なにをそんなに驚いているのだ?」

「べ、べつに……」

「ふむ……」

「高岩(たかいわ)くんは、部活だったの?」

「ああ。素晴らしい研究成果が出て満足だ」

「では、あとは若い者同士で。天野さん、また明日」

「剛志(つよし)、うるせぇよ!」

「うん、バイバイ」

鞄を取った高岩くんは、 颯爽(さっそう)と教室を出ていった。

そういえば、部活のことは教えてくれないんだよね。

怪しすぎて、深く聞けないんだけど。

「……アイツはなにしにきたんだよ」

「帰るためでしょ?」

「いや、そうじゃなくて……」

「まぁいいや。次は、この中からいくつか選んでいこう」

「全部じゃダメ?」

「欲張りなのはいいけど、まずは数を決めてクリアするほうがいいんじゃん?」

「そもそも全部オッケーなら、バスケ部だってやめないでしょ」

「それもそっか」

「で、いくつにする?」

「7個!」

「即答かよ!」

「このやりたいことリストって、明るくてキラキラしてるって思ったから、虹っぽいなって」

「そっか。じゃあ、とりあえず7つ決めよう」

それから1時間かけ、私たちは、とりあえずのリストを完成させたのだった。


天野明日菜のやりたいこと!(仮)

□海で愛を叫ぶ

□学校を無断欠席

□温泉ツアー

□高級ホテルの最上階で夜景を見ながら食事

□オーロラ観測

□習い事をなにかひとつ

□好きな人を作ってドキドキする


この紙が、私の人生を大きく変える。

残された1年間を尊いものにする、

7色の日々の始まりだった。

第2話へ続く

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泣けるわ。 青春やな。

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