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ライ
79
#異世界転移
花月夜れん
2,359
まくら
183
31 ◇女の怒り
会社の先輩と楽しいクリスマスを過ごし、いい気持ちで家に帰り
ゆったりとお風呂に入ろうかと思っていたところへ
実家の母親からめったにない電話が掛かってきた。
- それは 滉星が女にナイフで脇腹を刺されたと
いう知らせだった -
連絡をくれた義母からの話ということで、又聞きした
母親から私へとおおまかな説明があった。
今は滉星の両親が付き添っているということだった。
SNSでの密告というかタレコミのあった後もどうやら石田は
ずっと夫に付きまとっていたらしい。
そのため夫は、相手をなるべく挑発しないよう用心して少し距離を
置きつつ、相手をしていたと聞く。
そしてそんな関係に焦れた相手がクリスマスにとうとう滉星に会いに
来たという。
それで滉星は近くのファミレスに誘い彼女の話を聞くことにした
みたいだった。
『どんなに懇願されても、自分の気持ちは以前別れを告げた時と
何ら変わらない。
例え妻と別れることがあったとしても君との交際や結婚は考えていない』
と滉星が諭すように告げると石田は
『弄んだお前を許さない』
と言い、隠し持っていたナイフで刺したという。
32❁ ◇心揺さぶられ……
話の流れを聞いてひまりは思った。
相手に別れを告げた日から夫が本気でずっと石田のことを切ろうと
していたとしたら、相手を発狂させないために……自分や私の
身の上に危険が及ばないようにするために注意を払うような
生活をし、その上夫は私への地道なアプローチも厭わず続けていた
のだから、かなりこの半年余り無理をしていたのではなかろうか。
石田には執着され、私には袖にされ続け、一体夫はどんな気持ちで
この半年間を過ごしたのだろうか。
その思いが脳裏を駆け巡ると体中から万感の想いが溢れ出すのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
また、石田の気持ちを考えると複雑な想いに囚われた。
受け入れてくれないからといって好きな男性を
傷付けるって、普通では考えられないことだから……彼女は
どこか狂っているのかもしれない。
何が正解で何が不正解なのか……正直、私は決められなかった。
だけど、ひとつだけ分かったことがある。
夫が傷つけられて苦しんでいると聞き、とても胸が苦しくなったこと。
死なないでほしいと切に願っていること。
ここにきて、心に衝撃を与えられ揺さぶられ、自分の中で何かが
大きく変わろうとしていた。
33 ◇すぐ行きます
母は、最後にこう言った。
「命に別状はないから、今夜お見舞いには行かなくていいって
あちらのおかあさんから聞いてるの。
ひまり、どうする?
私はひまりが今夜行くなら一緒に行こうと思ってるんだけど……」
「ありがと。私、支度が出来次第すぐに行く」
「じゃあ、お父さんと一緒に迎えに行くから待ってなさい」
「うん、ありがと。助かります」
34☑
◇滉星の見舞い
クリスマスのその夜、私は両親と共に滉星のお見舞いへと救急搬送
された病院へ向かった。
夫は義両親に私たちのことは何も知らせてなかったようで、この夜
私と両親は彼の母親から謝罪を受けた。
「ひまりちゃん、馬鹿な子でごめんなさいね。
私は滉星がひまりちゃんみたいな可愛くて人柄の良い女性をお嫁さんにと連れて来てくれた時には、息子の育て方は間違ってなかったと思っていたのに親ばかで大きな勘違いだったみたい。
あなたのような良い奥さんを苦しめた挙句、浮気相手に別れ話をして
刺されるなんてね。
ひまりちゃんをすごく苦しめ、相手の女性も苦しめて……ほんとにごめんなさい。
私の育て方が悪かったせいで。
滉星の寝姿を見ていてずっと考えてたの。
何がいけなかったのだろうって。
父親だって浮気などしたことがない人で息子たちや私を……
家族を大切にしてきてくれた夫なんですよ。
それなのに何でなの……フラフラして。
ひまりちゃんが家を出てたことも知らなくて……。
滉星ったら何にも言わないものだから」
35 ◇義母への説明
「相手の人、石田さんからふたりの関係を知らされて、私はその時初めて
滉星さんの浮気を知りました。
彼からの謝罪はありましたがとても受け止めることはできなくて、
私は離婚するつもりで翌月家を出ました。
そして仕事を探し、就職が決まってから会社の近くに引っ越しをして
今は一人暮らししてます」
「じゃあ、もしかしてふたりはもう夫婦ではなくなってるっていうこと
かしら?」
「いえ、届けは滉星さんが持っていて、まだ出してないと思います」
「そうなの。
滉星は今夜はもうこのままで起きてはこないと思うの。
ひまりちゃん、お父さんお母さん、こんな状況なのに……娘さんにも酷いことを仕出かしている息子のためにご足労おかけして申し訳ありません。
ありがとうございました。今夜は冷えてますから足元にお気をつけて」
そんな風に義母の気遣いの言葉掛けを受け私たち親子は、義母に
見送られて自宅へ戻った。
帰宅した時には22時を過ぎていた。
私は翌日は出勤をし、上司に相談の上次の日休ませてもらうことにした。
そして改めて滉星の入院先へ見舞いに行くことにしたのだった。
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