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ライ
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#異世界転移
花月夜れん
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まくら
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36 ◇寵愛を受けていたのにいつの間にか愛されないようになるなんて
部屋に入ると滉星は起きてはいるけど、寝ている状態だった。
『まだ、傷口が痛いだろうなぁ~』
「滉星くん、傷の具合はどう?」
「やぁ、一昨日の晩、ご両親と来てくれたんだって?
寒い中、申し訳なかったね。とうとうこんなことになっちゃって
お袋には泣かれちゃったよ」
「うん……。一報聞いた時、私、心臓止まるかと思った」
「心配してもらえたんだ、俺」
「刺されたなんて聞いたら、そりゃあビックリするよ。
んとに、ドラマじゃないっつうの。でも無事で良かった、ほんとに
良かった」
「こんなこというと不謹慎だけど……自分には気持ちがないのに、
相手だけが必死に自分を求めてくるってどう考えても不思議な感覚で
最後は怖かったな」
「私はふたりの男性の間で心が揺れたっていうような経験が
ないからアレなんだけど、単純なことなのかもしれないよ。
誰だって好かれないより好かれたいじゃない?
で、その対象が自分の好きな人なら余計好かれたい気持ちが
増幅すると思うのね。
彼女は奥さんに勝った、自分のほうが奥さんより好かれてるって
思ってたのに、そうじゃなかったって言われて気持ちの行き場を
失くしてしまったんじゃないのかな」
37 ◇見舞い先での会話
「片想いの辛さとはまた違うっていうか、一時でも
寵愛を受けていたのにいつの間にか愛されないようになるなんて、
私でも発狂するわ。
『私の気持ちを返せー』って、バットで相手を殴りつけるかも。
人の気持ちを軽々しく弄んではいけないのよ」
「うん……分かる」
「励ましじゃなくて、やなこと言ってごめんね。
疲れるといけないから今日はこれで帰るね。
次は早く帰れる日に夜にでもまた様子見に来るから。
養生して元気になりますよう」
「サンキュー。楽しみに待ってるよ」
「それじゃあまたね」
私は彼が元気になることを願って、笑顔で部屋を出た。
(刺されたと聞いた時から、もう一度夫とやり直してもいいかなと
前向きな考えになっていたのだが、しばらくはそれを誰にも
言うつもりはなかった。
何が理由で、その感情がなくなってしまうかは、分からなかったから)
そして、病院からの帰る道すがら、夫が自宅に帰れる頃、まだ自分の中に
彼とやり直したいという感情が残っていれば、その時自分たちのことを
考えよう、そう思った。
38 ◇鉄は熱いうちに打て
執刀医の腕が良かったのか?
滉星の術後は順調に進み翌月の前半に退院する運びとなる。
そして退院後は実家で半月ほど過ごし退院1か月後、滉星は自宅に戻った。
自宅に戻った滉星は『鉄は熱いうちに打て』とばかりに、週末、見舞いに
来てくれたお礼にと、ひまりを自宅に招待した。
◇ ◇ ◇ ◇
「今日はお招き、ありがとう」
以前自分も住んでいた家なのにとも思うが、やはりケジメはけじめなので、
すぐにこんなふうな言葉がひまりの口から零れ落ちた。
『見舞いに来てくれたお礼に、一度家に来てもらいたいというか、ご招待
したいんだけど』……と、滉星から招待された時、ひまりは本心から
『あっ、よかった』と思った。
無事退院したと聞いてはいたが、現在本人がどんな状況なのか
心配していたからだ。それと、退院祝いもできる。
滉星から連絡がなければ、自分から1度連絡を入れてみようか、
どうしようなどと、考えてもいた。
ひまりは、何も食べないで昼前に来るよう言われていた。
家には11時半頃着いた。
リビングに入ると皿やお椀が並べられており、みそ汁に茶碗蒸し、そして
握り寿司が並べられていた。
「わざわざ、出向いてもらってすまない。
寒かったろ? ささっ 座って。寿司食べよう」
「すごい、お御馳走だね。退院祝いしないといけないのに
なんだか申し訳ないような……でもおいしそう。いただきますっ」
39☑ ◇チャンスをください
彼がみそ汁に入れるためのお湯をキッチンに取りに行ったので
手伝おうと私もキッチンに入った。
「いいよ、いいよ、今日はお客様だから座っといて」
「そう?」
お寿司の時は、引き下がったものの、食後のコーヒーは私が淹れた。
「久しぶりにひまりの淹れてくれたコーヒー飲むけど
自分で淹れたものとはぜんぜん違うなっ。
むちゃくちゃ美味しい」
「褒めまくっても何にも出ませんよー」
「いやぁ、だって……美味しいんだから褒めるよ。
こうやってひまりと向き合ってコーヒーを飲める日が来るなんて思っても
みなかったから、刺されて良かったのかも」
「止めて、そんな自虐的な台詞。
どれだけ皆を心配させたと思ってんの? ぶつわよっ」
「ホントにぶってくれるんなら……ほらっここっ」
そう言って滉星が片方の頬を突き出した。
「何か、らしくないキャラになってなぁ~い? ふふっ」
このあと、一瞬静寂がふたりを覆った。
先に静寂を破ったのは、滉星。
「ひまり、ここに戻って来てほしい。俺のところへ……。
厚かましいのは重々承知してるけど、やり直してもらえないだろうか。
何度もひまりとの生活を諦めようと……自分に言い聞かせるんだけど駄目なんだ。
もう1度だけチャンスをくれないかな」