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通話を切ったあと、部屋の静けさが戻ってきた。
咲は机に視線を落とすけれど、さっきまでの赤本の文字はまるで頭に入ってこない。
(……美優とお兄ちゃんがもしそうなったら、ちょっと楽しそうだな)
ふとそんなことを思い、微笑んだ。
でもすぐに――心に浮かぶのは悠真の顔。
夏祭りの夜の横顔。
ふいに見せる、優しい眼差し。
「……集中しなきゃ」
鉛筆を握り直すけれど、胸の奥は不思議な熱に覆われていく。
(悠真さんって……恋愛とか、今はどう思ってるんだろう)
口に出せない疑問が、心の中でぐるぐると回っていた。