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「社交不安障害」
注目されたり発表する場面で恐怖や不安を感じ、生活に支障を出す精神疾患。
仕事終わりの夜
家は静まり返り、窓の外の光が所々僕を照らしては消えていく。
今日も無事に終わった。いつも通りの何気ない日常。
……なのに、
o「また、明日が来る…」
胸の奥が冷たく固められていく様な感覚。
明日はライブ前のセトリの進め方を簡単に決める、大事な話し合いがある。
o「もし、僕の発言でみんなをがっかりさせたら?」
o「もし、会議中に僕の声だけが変に震えてしまったら?」
そんなことを考え始めると、思考は不安感で重く沈んでいく。
僕は社交不安障害を持っている。今までずっと薬を飲んで我慢してきた。メンバーやスタッフ達の前では慣れた…けど、大事な会議やライブはどうしても不安や恐怖が訪れてしまう。
ただの緊張ではないことは、自分が1番よくわかっている。
誰かの視線が、誰かの評価が、僕の呼吸を奪っていく。
握りしめる手が、じんわりと嫌な汗で湿っていった。
朝。アラームが鳴る前から僕の心臓が激しく動いていた。
o「…大丈夫、俺は大森元貴だ。いつも通りにやればいい。」
鏡の前で自分に言い聞かせる。
でも、鏡に映る僕の顔はひどく青白い。
引き出しから、あらかじめ処方されていた抗不安薬を取り出す。
いつもより多めの水で、一気に喉の奥へ流し込んだ。
o「これで大丈夫。薬が効けばやり過ごせる…」
深呼吸を何度も繰り返す。体にまとわりつく、重い「恐怖」と「不安」を振り払うようにお気に入りの指輪を着けた。
全ては、若井と涼ちゃんにこの情けない姿を見られないためのお守りだった。
s「……という訳なんだけど、大森くん。この曲についてどう思う?」
スタッフの言葉が、シーンとした会議室に響いた。
ガタッと、誰かが椅子を引く音。
資料をめくるカサっという音。
そして…若井と藤澤の、真っ直ぐな視線が僕に集まる。
あ、だめだ。
突如、頭の中が真っ白になった。
薬の効果なんて、一瞬で吹き飛ぶほどの恐怖がが襲ってくる。
喉が完全に閉じてしまい、空気が入ってこない。
s「大森くん?聞いてる?」
スタッフが不思議そうに顔を覗き込む。
o「あ…、えっと…」
声が出ない。
手元がガタガタと震え、持っていたペンが机の上を転がった。
何か言わなきゃいけないのに、言葉の破片すら見つからない。
僕はただ、うつむいて呼吸を荒くすることしか出来なかった。
w「…ちょっといいですか?」
沈黙を破ったのは若井の声だった。
その声は、いつもの明るい声とは違う。
低く、怒りを隠した響きだった。
w「元貴、どうしたの?さっきからずっと上の空じゃん。これ、俺たちのライブの話だよ?」
涼ちゃんも心配そうな、だけどどこか焦れたような目で僕を見つめる。
f「元貴、体調悪いの?悪いなら言って?、黙り込まれるとどうすればいいかわかんない。やる気が無いように見えちゃうよ!」
心配だからこそ、本気で向き合っているからこそ、2人の言葉にはトゲのような怒りが混じっていた。
o「俺だって…!」
胸の奥から絞り出すように声が出た。
だけど、それが限界だった。
「病気なんだ」と言えば、2人はきっと優しくしてくれるんだろう。
でも、プロの表現者として、メンバーにそんな甘えを許したくない自分もいた。
視界が歪む。
2人の顔がまともに見れなくて、僕はただ震える両手で顔を覆った。
若井がハッとしたように息を呑む。
涼ちゃんがあ…と声を漏らす。
2人の怒りが、一瞬で深い動揺に変わっていくのが、空気の震えでわかった。
コメント
1件
おお、第2話……めっちゃ重くて良かったわ。冒頭の「また、明日が来る」って一文で既に胸がギュッてなった。会議室で薬が効かなくなって、言葉が出なくなる描写がリアルすぎて自分ごとのように息苦しくなったよ。若井と涼ちゃんの「本気だからこその棘」もわかるし、でも元貴が「病気」を甘えに使いたくないって葛藤してるところに泣きそうになった。この3人の空気、続きが気になるわ🔥