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──その日の帰り際に、クリニックのあるビルを出ようとしたところを、政宗医師に車から呼び止められた。
先ほどの一件が嫌悪感と共に思い起こされ、足早に立ち去ろうとするのを、
すかさずドアが開けられ、車の中へ引き込まれた。
「何で、こんなことを……」
座らされた助手席で、身体を固く強張らせて、
「……もう嫌です…こんなことは……」
涙がこぼれそうになり、ぎゅっと瞼を閉じる。
先ほどあんな風に自分の本心を晒け出してしまったこともあって、ただ辛い思いだけに苛まれていた。
「……あなたは、黙って私に付いてくればいいのですよ」
政宗医師は、恐らく私の気持ちなど知ろうともしないであろう、淡々とした素振りでそう口にすると、運転席でハンドルを握り、たいして遠くもない彼のマンションへと車を走らせた……。