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kr死ネタ。自殺描写あります。
kr下肢欠損
モブレ
pnkr
ただただ救われない暗くてつらい話です。
ある日帰ると、玄関の鍵が開いていた。首を傾げながら家に入ると、リビングの床には何かを引きずったような跡と土足で歩いたらしい足跡があって、それを辿って行き着いた寝室のベッドは乱れ、シーツが汚れていた。いつもある筈の姿が見当たらなくて探せば、脱衣所に車椅子が、そして浴槽には恋人の姿があった。
出しっぱなしのシャワーで水が溢れて溢れていく音と、薄ら赤く染まった水の色と俺が物音を立てても振り返らない様子に血の気が引いて、咄嗟に触った頬にはもう体温が無かった。
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その後、クロノアさんは首を切って流水に当てたことによる自殺だと診断され、現場の状況から誰か侵入者によって暴行を受けた末の自殺ではないか、と調べが進められた。残された指紋や足跡と体液から犯人はすぐに特定された。犯人のスマホには、幾つもの写真の他、殴られ押さえつけられながら、必死に抵抗する彼の姿が、数十分にわたって動画で記録されていた。もう一つの動画には、怯えきって、抵抗する力もないまま虐げられる姿があった。それぞれ別の日に撮られたもので、2本目の日付は彼が死んだ日。俺が帰るたった三時間前のものだった。
犯人は、最初空き巣を狙ってあの家に忍び込んだが、持ち出せそうな金目のものが見当たらなかった上クロノアさんに見つかってしまい、通報されることを恐れて暴行を働いたと自供している。と警察からはそう聞かされた。
状況は目まぐるしく動く。クロノアさんは、不慮の事故で両足を切断。その後実質永久的な活動休止となり、彼はネット上から姿を消した。それでもネット記事は彼の死を取り上げた。とても公表できない死因は全て伏せられたままで、悲しむファンの他にも陰謀論者やただの野次馬なんかから、他メンバーや親しかった活動者には直前の違和感や心境聞き出そうとする声が降り注いだ。
『活動休止してからの空白の時間、何があったんですか』
部外者にとっての“空白の時間”は俺がよく知っていた。なにせ、恋人だったから。ずっと一緒にいたから、誰よりも知っていた。俺が、何をしたのか。
クロノアさんは、活動をやめてもあまり変わらなかった。俺のせいでごめんね、とよく言っていたけれど、貴方のせいじゃないと返せばありがとう。と返事をしていたし、何より彼は強かったから。足をなくして生活が一変した彼と一緒に暮らし始めて、彼は家事をよくやってくれるようになった。車椅子で器用に部屋中必要なだけ移動して、出来ないものはちょっと手伝ってくれない?と俺に声をかけて。ゲームも変わらずやっていたし、ドラマや映画もよく見ていた。落ち着いたら活動再開しても良いかもしれないね、なんて話もしていた。
変わったのは、俺の方だった。家に帰るたび彼がいる状況に慣れてしまって、いくら器用とはいえ、未だ入浴や、手の届かないところにあるものを取るときなんかは介助が必要な彼に、撮影と編集で疲れてるなんて言い訳をして冷たく当たったことがあった。俺はすぐにしまった、と気がついて謝ったけれど、彼はそれが普通だよ、仕方ないことだから謝んないで。と簡単に許して、それ以降俺に極力頼ろうとしなくなった。日に日に1人でできることを増やしていく彼に俺は何も言えず、ほとんどただ同じ家に2人居るだけ。そんな状態になっていった。そんな状況に、俺と一緒にいる必要なんて無いんじゃないか、と焦って、時折電話で楽しげに話している彼に嫉妬して、外と連絡を取らせないようにした。挙句一切外に出させないようにして、嫌がるようなら力づくで言うことを聞かせたこともあった。
今思えば異常だ。どれも全部おかしい事だ。俺がどれだけ自分勝手で、彼がどれだけそれに耐えていたのか。自殺だって、俺のせいだと言われた方がしっくりきた。
彼が自殺した日、テーブルにはコピー用紙が置いてあって、“大事なもの 壊してごめんなさい”と彼の字で、ペン立ての俺のボールペンで、それだけが書いてあった。リビングの棚に飾ってた4人の旅行に行ったときの写真は、クロノアさんのところだけが塗りつぶしてあって。横に一緒に飾ってたはずの、2人の写真が無くなっていて、探したら、彼が持っていたんだ。浴槽にためた水の中で、大事そうに大事そうに。水ごと血も吸ってしまったようで、裏が赤くなってしまっていた。でもそれを取り上げることは、俺には出来なかった。
俺はそのことを、他でもないメンバーに話した。彼が死んだのはお前のせいだと怒って欲しかった。お前が苦しめたんだと責められたかった。けれど、誰も俺を責てはくれなかった。
「もう、謝ることも、出来ないんだ、」
もう会えない、謝れない。許されることもない。
もっと、愛してたつもりだった。誰よりも、何よりも一番大切にしていたつもりだった。
コメント
1件
読了。めちゃくちゃ重いし苦しい話だった……「俺」の自己中心的な描写が生々しくて、読んでて胸が痛かったな。特に彼が書いた“大事なもの 壊してごめんなさい”っていうメッセージと、写真を大事そうに持ったまま水の中で……ってところが強く残ってる。責めてほしいのに責めてもらえないやりきれなさ、すごく伝わったよ。続きがあれば読みたいけど、これだけでも十分刺さった。
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