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×××が熱出てキルアが看病
頭がぼんやりして、
天井がやけに遠い。
「……×××?」
玄関の音のあと、
聞き慣れた声がして、少しだけ安心する。
ドアが開いて、
キルアが顔を出した瞬間、表情が変わった。
「……顔、赤い」
すぐに近づいて、
額にそっと手を当てる。
「熱あるじゃん」
声が低くて、真剣。
「連絡くれたの、正解」
ベッドの横に腰を下ろして、
水とタオルを手際よく置く。
「無理して起きなくていい」
そう言いながら、
枕を直してくれる手つきがやけに優しい。
「……寒くない?」
小さくうなずくと、
キルアは一瞬考えてから、毛布を少し引き上げる。
「これでどう」
返事を待つ目が、心配でいっぱい。
「ちゃんと水飲め」
ストローを差し出して、
飲み終わるまで目を離さない。
「……ほんと」
ぽつり。
「×××が弱ってると、調子狂う」
タオルを軽く額に当てて、
熱を測るみたいに、そっと。
「大丈夫」
言い聞かせるみたいに。
「オレいるから」
しばらくして、
キルアはベッドの端に座ったまま、離れない。
「寝ていい」
小さな声。
「起きたら、すぐ分かる位置にいるから」
手が、自然に×××の手を包む。
ぎゅっとはしない。
でも、離れない。
「……早く治せ」
少し照れた声で。
「じゃないと、心配で寝れないだろ」
そのまま、
×××の呼吸に合わせて、静かに待つ。
熱のせいで重たい時間の中、
キルアの存在だけが、はっきりしていた。
夜。
熱のせいで、×××はじんわり汗をかいていた。
「……ちょっと待て」
キルアがそれに気づいて、
一瞬動きを止める。
「汗、かいてる」
声が少し硬い。
タオルを手に取るけど、
近づく前に一回深呼吸。
「……拭くぞ」
「嫌だったら言え」
確認、ちゃんとするタイプ。
×××が小さくうなずくと、
キルアは視線を逸らし気味のまま、そっと。
額、こめかみ、首元。
必要最低限、丁寧に。
「……熱下げないとだから」
言い訳みたいにぶつぶつ言いながら、
でも手は優しい。
「……我慢しなくていい」
「辛かったら、すぐ言え」
タオルを替えながら、
顔はずっと赤い。
「……着替えも」
一瞬、言葉に詰まって。
「汗冷えるの、良くないから」
ここでも一回、確認。
「……手伝うけど」
「オレ、ちゃんと見るとこ見ないから」
視線は天井。
×××が大丈夫だと言うと、
キルアは耳まで真っ赤にして、そっと動く。
手早く、必要なところだけ。
距離は近いのに、態度は不器用なくらい真面目。
「……終わった」
着替えが済むと、
ほっとしたように息を吐く。
「……無事」
意味不明な一言。
そのまま毛布をかけ直して、
ベッドの横に座る。
「……ちゃんと休め」
声は小さいけど、
さっきより柔らかい。
「オレ、ここにいる」
「だから安心していい」
照れまくりながら、
でも最後まで手を抜かないキルアだった。
×××が眠っているのを確認してから、
キルアはベッドの横の椅子に座り直した。
「……」
呼吸は落ち着いてる。
寝顔もさっきより楽そうで、キルアは少し安心する。
……はずだった。
「……」
さっきのことが、
急に頭に戻ってきた。
タオルで汗を拭いたこと。
着替えを手伝ったときの距離。
ちゃんと“看病”だったのに。
「……」
キルア、顔をしかめる。
「……思い出すな、オレ」
小さく自分に言い聞かせるけど、
耳がじわじわ熱くなる。
「……別に変なことしてない」
「ちゃんと確認もしたし」
一つずつ、心の中で言い訳。
でも、
×××の無防備な様子を思い出してしまって——
「……っ」
思わず顔を手で覆う。
「……だからって」
「……なんで今さら照れてんだよ」
寝てる×××をちらっと見て、
すぐ目を逸らす。
「……反則だろ」
小さく、ぼそっと。
しばらく黙ってから、
キルアは立ち上がって、そっと毛布を直す。
起こさないように、慎重に。
「……もう」
声は低くて優しい。
「早く治せ」
「じゃないと……」
言いかけて、やめる。
そのまま椅子に戻って、
×××の手に触れないギリギリの距離に手を置く。
「……オレ」
「ほんと、弱いな」
そう呟いて、
照れたまま、でも目は離さず。
×××が目を覚ますまで、
キルアはずっと、そこにいるつもりだった。
朝。
カーテン越しの光で、
×××はすっきり目を覚ました。
「……あれ」
頭も重くない。
体も軽い。
「熱、下がってる」
起き上がった瞬間、
すぐそばで椅子がきしむ。
「……っ」
キルアが、びくっと顔を上げた。
「起きた?」
その声、ちょっと警戒気味。
「うん、めっちゃ元気」
そう言うと、
キルアは一気に肩の力を抜いた。
「……よかった」
心底ほっとした顔。
「マジで心配したんだからな」
そこで×××が首を傾げる。
「そういえばさ」
「昨日、途中から全然覚えてなくて」
キルアの動きが止まる。
「……は?」
「着替えとか、どうしたんだっけ」
無邪気な疑問。
「自分でやったのかな?」
その瞬間。
「わ、忘れてるならいい!」
キルア、即反応。
声がちょっと裏返る。
「覚えてないなら、無理に思い出さなくていい!」
「え、なんで?」
「なんでもない!」
完全に怪しい。
×××がじっと見ると、
キルアは視線を泳がせ始める。
「……オレが」
一拍置いて。
「……看病しただけだし」
耳が赤い。
「普通のことだから」
「普通に」
「……普通に」
同じ言葉を三回。
「ふーん」
×××がにやっとすると、
キルアは観念したみたいに小さく言う。
「……汗、かいてたから」
「ちゃんと確認して」
「必要なことだけ、だぞ」
最後はほぼ早口。
「……だから」
「変な意味で見るな」
顔を覆いながら、ぼそっと。
「……今さら聞くなよ」
でも、その隙間から見える表情は、
安心と照れが混ざった、柔らかい顔だった。
「元気になったなら」
顔を上げて、少し照れ笑い。
「それでいい」
そう言って、
×××の額に手を伸ばしかけて——やめる。
「……熱、もうないよな?」
心配性は、まだ続いていた。
「……キルア」
×××が、少しだけ真面目な声で言う。
「昨日、ありがとね」
その一言で、
キルアは一瞬きょとんとして——すぐに目を逸らす。
「……別に」
「看病なんて、普通だろ」
でも、ほっとした表情。
×××はにこっと笑って、続ける。
「じゃあさ」
「今日も——」
わざと間を置いて。
「着替え、手伝って?」
一秒。
二秒。
「……は!?」
キルア、完全にフリーズ。
「な、なに言って……!」
「冗談だよ」
そう言われても、
もう遅い。
顔が一気に赤くなる。
「……やめろ」
「そういうの、心臓に悪い」
腕を組んでそっぽを向くけど、
耳まで真っ赤。
×××がくすくす笑うと、
キルアは小さく舌打ち。
「……元気になった途端、それかよ」
でも、少ししてからぼそっと。
「……昨日のは」
「必要だっただけだからな」
「今日は、ちゃんと自分でやれ」
そう言いながら、
チラッと様子を確認する目は変わらない。
「……ほんとに大丈夫そうで」
安心した声。
「それだけで、十分」
からかわれて照れて、
でも心の底から安心してるキルアだった。
to be continued….