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×××が骨折キルアの甘々看病
「……は?」
包帯で固定された×××の腕を見た瞬間、
キルアの動きが止まった。
「骨折……?」
声が一段低くなる。
「なんで、もっと早く言わなかった」
怒ってるみたいだけど、
眉の寄り方は完全に心配のそれ。
「痛むだろ」
そう言いながら、
触れないギリギリの距離で腕を見る。
「……今日は帰るな」
即決。
「オレの家来い」
「一人にできない」
有無を言わせない口調なのに、
手はやたら慎重だった。
⸻
家に着くと、
キルアは×××をソファに座らせてから、やっと息を吐く。
「ここ、楽か?」
「腕、変に動かすなよ」
クッションを直して、
毛布をかけて。
「……動かなくていい」
「今日はオレが全部やる」
キッチンに立つ背中は、
いつもより少し忙しない。
「片手じゃ無理だろ」
そう言って、
包丁を使わないメニューを選んでるのが丸わかり。
しばらくして、
温かいご飯を運んでくる。
「……食える?」
心配そうに顔を覗き込む。
「スプーン持つのもきついだろ」
一瞬、迷ってから。
「……あーん、する?」
言った瞬間、
キルアの耳が赤くなる。
「いや、変な意味じゃなくて」
「看病だからな」
×××が笑ってうなずくと、
キルアは少しだけほっとした顔でスプーンを差し出す。
「……熱くない」
慎重に。
「あー……ん」
距離が近くて、
でも視線はちゃんと外してる。
一口食べ終わると、
キルアはすぐ聞く。
「どう」
「味、平気か」
「無理してないか」
質問が多い。
「……ほんと」
小さく呟いて。
「×××が怪我してるとさ」
「オレ、落ち着かない」
そう言って、
もう一度スプーンを差し出す。
「……ちゃんと治るまで」
「泊まってけ」
照れ隠しみたいな言い方。
「オレが見てる」
片腕分、近くなった距離で。
キルアの看病は、不器用だけどやさしかった。
夕方。
「……着替え」
×××がぽつりと言った瞬間、
キルアの動きが止まった。
「……え」
一拍。
「着替え?」
聞き返す声が微妙に裏返る。
「片手だと、ちょっと大変で」
そう言われて、
キルアは一気に真剣な顔になる。
「……だよな」
分かってる。
分かってるけど。
「……」
視線が泳ぐ。
「……手伝うのは」
一歩踏み出しかけて、止まる。
「必要だけど」
「でも」
腕を組んで、しばらく考え込む。
「……まず」
急に早口。
「嫌だったら絶対言え」
「途中でやめてもいいし」
「ちゃんとタオル使う」
「オレ、変なこと考えてないからな」
完全に自分に言い聞かせてる。
×××が「大丈夫だよ」と言うと、
キルアは深く息を吸ってから、覚悟を決めたみたいに頷く。
「……じゃあ」
「必要なとこだけな」
背中を向けさせて、
タオルをそっと肩にかける。
「腕、動かすな」
声は低くて、いつもより慎重。
服を通すときも、
骨折してる腕に触れないように、ミリ単位で調整。
「……痛くないか」
何度も確認。
「ここ、引っ張るぞ」
「今から通す」
全部、実況。
着替えが終わると、
キルアは一気に力を抜いた。
「……終わり」
一歩下がって、顔を手で覆う。
「……はぁ」
「緊張した」
耳まで赤い。
「……でも」
ちらっと×××を見る。
「ちゃんとできたなら、それでいい」
そう言って、
毛布を直して、ソファに座らせる。
「……次からは」
小さく。
「オレがいる時に着替えろ」
言ったあとで、
自分で照れてむっとする。
「……違う」
「無理すんなって意味だからな」
不器用だけど、
最後まで真剣で、やさしいキルアだった。
浴室。
「……ほんとに、頭だけな」
キルアはそう念押ししてから、
シャワーの温度を確認する。
「腕、濡らすなよ」
「痛かったらすぐ言え」
言葉が全部、心配ベース。
×××が椅子に座るのを確認して、
キルアは後ろに回る。
「……じゃ、始めるぞ」
シャンプーを泡立てて、
できるだけ指先だけで、慎重に。
「力、強くない?」
「……大丈夫?」
何度も確認しながら、
視線はずっと上。
泡を流そうとして、
体勢を変えた瞬間——
「……っ」
手が、
一瞬だけ当たる。
本当に、事故。
「!!」
キルアは即座に手を引っ込める。
「わ、わりっ!!」
声が裏返る。
「今の、違うからな!!」
顔が一気に真っ赤。
×××も固まって、
次の瞬間、同時に視線を逸らす。
「……」
数秒、無言。
「……ほんとにごめん」
キルアは必死に説明する。
「位置、見誤っただけで」
「絶対わざとじゃない」
「看病だから!」
最後は半分叫び。
×××が「だ、大丈夫」と言うと、
キルアは深く息を吐く。
「……よかった」
でも耳まで真っ赤。
「……もう終わりな」
「続きは自分でやれ」
背中を向けたまま、
タオルを差し出す。
「……事故とはいえ」
小さく。
「心臓に悪い」
そのまま、
一切振り向かずに浴室を出ていく。
しばらくして、
外から聞こえる声。
「……怪我してる時は」
「ほんと、無茶すんなよ」
照れと心配が混ざった、
不器用すぎるキルアだった。
浴室のドアが閉まったあと、
キルアは廊下に出て、壁にもたれた。
「……」
一気に息を吐く。
「……何やってんだ、オレ」
顔を手で覆って、
そのまま動かなくなる。
さっきの一瞬が、
やたら鮮明に思い出されて。
「……事故だ」
「完全に事故」
自分に言い聞かせるみたいに、
小声で何度も。
「看病だし」
「頭洗ってただけだし」
でも、
耳まで熱いのは止まらない。
「……でも」
視線を落として、
少しだけ眉を寄せる。
「×××、驚いたよな……」
心配のほうが、後から来る。
「……嫌な思い、させてないといいけど」
しばらく黙ってから、
ぽつり。
「……怪我してる時に」
「余計なことで動揺させんなよ、オレ」
完全に反省モード。
ソファに腰を下ろして、
両手で顔を覆ったまま。
「……落ち着け」
「深呼吸」
そう言いながら、
さっきより静かな表情になる。
「……次からは」
「もっと慎重にする」
決意みたいに呟いてから、
浴室のほうをちらっと見る。
「……ちゃんと、守る役なんだから」
照れと反省と心配が混ざったまま、
キルアは×××が出てくるのを
静かに待っていた。
浴室のドアが開いて、
×××がタオル姿で顔を出した瞬間——
「……っ!!」
キルア、反射で視線を逸らす。
「ちょ、ちょっと待て!」
即座に近くの服を手に取って、
距離を保ったまま差し出す。
「先に着ろ!」
「冷えるだろ!」
言い方は必死だけど、
完全に心配由来。
×××が着替え終わるのを確認してから、
キルアはやっと振り向いた。
「……さっきは」
少し間を置いて、真剣に。
「ほんと、ごめん」
「事故でも、嫌だったらすぐ言ってくれ」
目を合わせて、ちゃんと。
×××が「大丈夫だよ」と言うと、
キルアはほっと息を吐く。
「……よかった」
「じゃ、髪」
ドライヤーを手に取って、
熱が強すぎないか確認。
「近づくぞ」
一言添えてから、
風を当てる。
「熱くない?」
「首、疲れてないか」
質問多め。
髪を乾かしながら、
キルアの表情はさっきより落ち着いてる。
……はずだった。
×××が、にやっとして言う。
「でさ」
「さっき触ったけど、どーだった?」
一拍。
「……は?」
ドライヤーの音が止まる。
「な、なに言って……!」
顔が一気に赤くなる。
「感想とか言う話じゃねーだろ!」
「事故! 事故だからな!」
×××が笑うと、
キルアは完全に照れ隠しモード。
「……からかうな」
「看病してんのに」
でも、しばらくしてから
小さく付け足す。
「……ちゃんと」
「×××が無事なら、それでいい」
ドライヤーを再開して、
少しだけ距離を詰める。
「もう寝ろ」
声は優しい。
「今日は、オレが最後まで見る」
からかわれても、
結局いちばん真面目で心配性なキルアだった。
夜中。
布団の中で、×××が小さく身じろぎした。
「……いたい」
その声に、
キルアはすぐ目を開ける。
「腕?」
そっと、起き上がらせない距離で様子を見る。
「無理に動かすな」
声は低いけど、柔らかい。
「……ここにいる」
そう言って、
体を横にして、寄り添う。
ぎゅっと抱くわけじゃない。
でも、逃げない距離。
「……寝るまででいい」
「痛み引いたら、離れる」
言いながら、
×××の呼吸に合わせて静かに待つ。
しばらくして、
×××が落ち着いた声で言う。
「ねえ」
「キルア」
「なに」
「……キルアの、いいところ言って」
突然すぎて、
キルアは一瞬固まる。
「……は?」
「今」
甘えるみたいな声。
「聞きたい」
キルアは天井を見たまま、
しばらく黙る。
「……ずる」
小さく呟いてから、観念したように。
「……ちゃんと、見てるとこ」
「心配しすぎるくらい」
「でも、放っとかない」
言うたびに、耳が赤くなる。
「……あと」
「無理させないとこ」
言い切ったあと、
気まずそうに黙る。
×××が、そっと言う。
「ありがとう」
その一言で、
キルアは完全に照れる。
「……言わせといて」
「礼言うな」
でも、声は嬉しそう。
そのまま、
二人とも少しだけ目を閉じる。
⸻
朝。
先に目を覚ましたキルアは、
隣の×××を見て、むっとする。
「……なあ」
起きた×××に、
少し拗ねた顔。
「昨日の、ずるい」
「なんで?」
「オレだけ言っただろ」
腕を組んで、視線を逸らす。
「……オレのも」
「言え」
×××が笑って褒めると、
キルアは耐えきれず顔を背ける。
「……もう」
「朝から反則」
でも、
少しだけ口元が緩んでる。
「……覚えとけよ」
「次は、オレから言うから」
心配して、
照れて、
拗ねて。
看病の夜は、
ちゃんと“甘い時間”になっていた。
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