テラーノベル
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数日後、怪我もすっかり癒えたサイクスは、アクセル、ロクサス、シオンの3人に連れられて
「時計塔」のてっぺんにやってきていた。
夕空に浮かぶ大きな月と夕焼けのグラデーションを、
サイクスは珍しそうに見つめている。
「ここが……俺たちの特等席だ」
ロクサスがそう言って、サイクスに青いアイスを差し出した。
「これは……?」
「シーソルトアイスだよ。ちょっとしょっぱくて、甘いんだ」
シオンが嬉しそうに微笑む。
サイクスは不思議そうにアイスを受け取り、恐る恐る口に含んだ。
ほんのりとした塩気と、後から追いかけてくる優しい甘さ。
サイクスの表情がふっと緩む。
「……不思議な味がしますね。でも、とても美味しいです」
「だろ? お前、昔は『そんなものを食べる時間があるなら仕事をしろ』っていつも怒ってたんだぜ?」
アクセルが隣でアイスをかじりながら、懐かしそうに目を細めた。
「私が……そんな厳しいことを?」
サイクスは苦笑いを浮かべ、アイスの棒をじっと見つめた。
「……アクセル。あなたと話していると、頭の奥が少し痛むんです。忘れてしまった『誰か』と、ずっと一緒にいたような……そんな感覚がするんです」
その言葉に、アクセルは一瞬目を見開き、それから愛おしそうにサイクスの頭を乱暴に撫で回した。
「……思い出さなくたっていいさ。辛いことも、重苦しい立場も、全部忘れたままの今のお前でいい。俺が……俺たちが、また新しい思い出を増やしてやるからな」
「アクセル……」
「そうだぞ、サイクス! これからは俺たちが城の案内も、アイスの味も、全部教えてやる!」
ロクサスが胸を張ると、シオンも「私も手伝うね」と嬉しそうに頷いた。
遠く見下ろす存在しなかった城では、
窓辺からシグバールやヴィクセンたちが時計塔の4人を眺めていた。
「ハッ、冷徹な参謀殿がすっかり牙を抜かれちまったな」
シグバールが呆れたように笑う。
「ふん……だが、悪くはない経過だ。あの過剰なストレスから解放されたのだからな」
ヴィクセンも胸ポケットからペンを取り出し、静かに微笑んだ。
夕日に照らされる時計塔で、サイクスは風に髪をなびかせながら、隣で笑う仲間たちを見つめていた。記憶はなくとも、胸の奥を満たす温かな温もり。弱みを隠し、冷徹な仮面をかぶり続けていたかつての男はもういない。
「……みなさん、ありがとう」
青いアイスを手にしたサイクスは、夕空の下で、今日一番の穏やかな笑顔を咲かせていた。
終わり。
コメント
2件
😁😁😁😁
わあ、最終回……なんだかじんわり温かい読後感ですね。記憶を失ったサイクスが、仲間たちと並んでアイスを食べるただそれだけの風景が、こんなにも胸に響くなんて。アクセルの「思い出さなくたっていい」という台詞に、シリーズを通して積み重ねてきた関係性の重みが詰まっていて、ぐっときました。シグバールとヴィクセンが城から見守っているカットも、組織全体の変化を感じさせて好きです。お疲れさまでした、FZXKさん。