次の日も、そのまた次の日も、アイラちゃんは
嘘を着いて、私を加害者にしようとした。
「悪口をいわれた」だの、「暴力を振るわれた」だの。
最初は皆動揺していたけど、日が経つにつれて、その表情は呆れへと変化していた。
私は、アイラちゃんがどうしてこんなことをするのかが分からずに、ただただ混乱していた。
ロウソクで照らされた、深夜の自室。
私はただ一人、これからの事を思って頭を抱えていた。
街はもう眠ってしまっていて、風の唸る声だけが、外から響いていた。
机の木目を見つめて、ただ思考を巡らせる。
ねぇ、アイラちゃん。私は分からないよ。
貴方がどうしてこんな事をするのか。
貴方の背景には何があるのか。
「私には分からないよ、アイラちゃん。」
ー皆が皆、辛い過去があると思わないで!
ふと、脳裏にトウカちゃんのあの言葉が蘇る。
ぶんぶんと首を振り、そんな考えを頭から追い出した。
違う、そんな人なんていない。根っからの悪なんて、この世に存在しないもの。
その原因を、私が突き止める。
そして、対処して見せるから。
アイラちゃんの為にも、原因を突き止めてみせる。貴方が少しでも、生きやすくなるように。
ロウソクを吹き消して、ベットへ潜ろうとしたその時。
カタン、と郵便受けの閉じる音がした。
***
外に出ると、涼しい風が吹きつけて思わず身を震わせる。
郵便受けの中を除くと、赤い封蝋印が押された封筒が1枚。
当たりを見渡しても、誰もいない。
こんな時間に誰だろう?
郵便はとっくに終わっいているはずなんだけど。
封筒を破いて中を見ると、
“明日、12時の鐘がなる時間に、裏路地に来てね。待ってるから”
綺麗な整った字で、そう書いてあった。
差出人の名は、アイラ。
動揺して、その場に固まる私から、段々と遠ざかる足音。
足音の方向を見ても、そこに人影はもうなかった。