テラーノベル
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酷く疲れていたらしい主は、翌日の昼にようやく目を覚ました。
フルーレの訓練着を着せられて眠っていた主は、豪華絢爛な洋室で目覚めてポカンとしていた。
🌸『・・・夢・・・?なにこれ』
主は現実逃避を始めていたが、昼食が必要かどうか確認しにバスティンが部屋を訪れたことで現実だと気づく。
「!主様、起きたのか」
🌸『・・・は?主様・・・?』
「おはようございます・・・と言ってももう昼だが・・・
昼食は食べられそうか?」
🌸『あ、はい・・・食べたい、です』
バスティンは食事を盛り付けて部屋に持っていき、ここがどこなのかの説明を始めた。
「食べながらで構わないから、この世界の説明を聞いてほしい」
🌸『あ、はい・・・』
「ここは主様が暮らしていた世界とは別の世界だ。そしてこの屋敷はデビルズパレスという。屋敷には18人と1匹の執事が暮らしていて、天使狩りのために日々訓練をしている」
🌸『・・・』
「ここまでで質問はあるか?」
🌸『え、えっと・・・執事さんって・・・?どういう?』
「主様に使える執事だ。俺もそうだ。ただ、普通の執事とは違って、悪魔と契約した悪魔執事だがな」
🌸『悪魔執事・・・。その、悪魔執事さん達は、天使を狩るのが仕事・・・なんですか?』
「大体そうだ。だが、貴族たちから便利屋のように扱われているから雑用を押し付けられることも多いな」
🌸『・・・そうなんですね』
主は雑用でこき使われているらしい悪魔執事達に、旦那の言いなりになっている自身を重ねて同情した。
「・・・ところで、主様のことを聞いてもいいだろうか?
ここに来た時、赤ん坊と一緒だったのと体の傷のことが気になっているのだが・・・」
主はその言葉にハッとして辺りを見回す。
🌸『!あの子は!?あの子はどこに居るの!?さっき一緒に来たって』
「お、落ち着いてくれ・・・主様がゆっくり休めるように別邸で預かっている。
食事が終わったら別邸に案内するから、安心してくれ」
🌸『あ、すみません・・・』
「・・・あの子のことを、とても大事にしているんだな」
バスティンは少しだけ表情を和らげて主を見た。
主はそんなバスティンの表情に少し驚いたように目を見張り、顔を伏せた。
🌸『・・・私にはあの子しかいないんです』
主はゆっくりと身の上を話し始めた。
「・・・それは、どういう意味だ?」
🌸『私の両親は、私のことが邪魔だったんです。出来の良い兄は愛されていたけど、頭も悪くて何もできない私のことは要らなかったんです・・・
だから、ネットで家出する先を探して、それで今の旦那に出会ったんです。
最初はすごく優しくしてくれて、愛されるってこういうことなんだなって思ったんです・・・
でも、妊娠したら他の女の人と遊びに行ったりして・・・あの子が生まれたら暴力を振ってくるようになったんです。
私は帰るところもないし、家族はあの子だけ・・・
あの子だけは守ろうって・・・頑張ったけど・・・ダメで・・・
もうダメだって、この子を殺して私も死のうって、思った時に指輪を見つけたんです』
「そう、だったのか・・・」
バスティンは途切れ途切れに語られる主の壮絶な人生を聞き、無性に彼女を抱きしめたいと思った。
まだ大人になりきれていない年齢で家出をして子どもを必死に守ってきた、愛を知らずに育っても優しさを失っていない彼女を労いたい、と強く思ったのだ。
バスティンは一言「失礼する」とだけ言い、彼女の痩せた身体を抱きしめた。
主は体を強張らせて固まってしまったが、バスティンが優しく頭から背中を撫でているうちに力が抜けてきた。
「よく頑張ったな・・・もう何も心配することはない・・・俺が守るから」
その言葉を聞き、主は涙を零してバスティンに縋り付いた。
🌸『ホントに?本当に大丈夫?もう痛いことされない?』
「ああ。大丈夫だ。痛いこともない」
🌸『うわあああぁぁぁぁぁぁあぁぁああああっっ、ああああああぁぁぁぁっっ!!』
主はこれまで我慢していた全てをぶちまけるように大声で泣き出した。
バスティンは必死に縋り付いて泣き続ける主を抱きしめて撫で続けた。
主の泣き声は別邸まで聞こえていたらしく、各部屋の代表が覗きに来ていた。
バスティンの腕の中で号泣している主を見て、皆少し安心したように笑って帰っていった。
主はそのまま泣き疲れて眠ってしまい、赤子の名前を聞きそびれてしまったのだった。
MAKO
コメント
1件
読み終えたわ…。主の壮絶な過去が重すぎて胸がギュッてなった。でもバスティンの「よく頑張ったな」「もう何も心配することはない」って抱きしめるシーン、めっちゃ沁みた…。ずっと1人で耐えてきた人間が、初めて「守るよ」って言われてああやって泣き崩れるの、リアルすぎて泣ける。MAKOさんの心情描写、毎回えぐいっすわ🔥