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本垢の方で下書き保存していた物を引っ張ってきて手直ししたやつです。本垢にもあげるかもしれないです。もし見つけたらそっとしておいてね。
そもそも作者が二次創作初心者なので口調やら時系列やらおかしいかもしれませんが温かい目で見てください。文章力が欲しい!!
ゴードスのつもりで書いてます。でもドスゴー感もあるかもしれない……。
ガラス細工みたいな美しくてどろどろしてるゴードスが書きたいので挑戦。書き終わってから見ましたがそんなどろどろしてないかもです。無念。
なんか敬語口調で話進みますがゴゴリ視点です。あとドスが出てくるのは途中からです。
イチャイチャはそんなしてないです。強いて言うなら後半はちょっとしてるかも。あれをイチャイチャと捉えるかは人次第ですがね。
鳥が好きでした。
何処までも続く空に翼を大きく広げて飛んでいる姿を見て、少年ながら心を奪われた事がありました。その時から僕は、鳥こそ自由の象徴だと思い、すっかり好きになっていました。鳥は、勢いをつけて地を蹴り、翼を大きく広げ、風に乗るだけで自由に飛んでいけるのです。
鳥を自らの手で殺したことがあります。
自分の意思で、自分の体で、自分の脳で。
鳥は、僕の手に収まりさえすれば翼を広げることが出来ませんでしたし、地を蹴る事も出来ませんでした。
殺した理由は、当時の僕でも分からなかったと思います。自由に飛べる事に嫉妬したわけでもありませんし、殺しに快楽を覚えていたわけでもありませんでした。朝起きて布団から出る時のように、あたかも日常の一部かのように、生暖かさを帯びながら鳥を殺しました。
自分の手で鳥を包み込み、その温かい体と心臓の鼓動を手に感じながら、ゆっくりと力を込めて握り潰すだけで、鳥は徐々に息を引き取りました。
鳥を殺した後も、何も感じる事はありませんでした。僕なんかに殺されて可哀想とも、自由を奪えて嬉しいとも思いませんでした。鳥の体温が薄れていく事を気にも止めない位に、僕の頭は空っぽだったのです。
ただ一つ、浮かんだ考えは、今の僕に矛盾を突きつけるものでした。
頭蓋骨という、生ぬるい思考の檻から解放されるには、理解者であるドス君を殺す必要があります。ですが本当に、ドス君を殺すだけで僕は自由になれるのでしょうか。やはり、死んで自由になる他ないのでしょうか。こう考えている事すら感情というものが原因で、僕が殺すのを躊躇っている理由は、ドス君が親友なせいなのです。僕が自由になるという目標に与えられた選択肢は、自分を殺すか親友を殺すかだけで、それ以外の選択肢は見つかりませんでした。否、存在しなかったのです。今の僕に見つからないなら、それは存在しないと同義なのです。
やっぱり私は難しい事を考えるには向いていないようなので、ドス君を殺す事こそ自由になれる事だと信じておく事にしました。感情という洗脳から解放されるには、それが最適解だからです。それに、そう考えたら途端にそれが正解のような気がして頭から離れないのです。
本当は異能力を使えばいつでも殺せるのですが、ドス君の驚く顔も見たいのでお預けを繰り返していました。彼は滅多に驚かないので、そんな彼を驚いた顔にさせられるのならば、道化師を演じてきた甲斐が有ると感じると思ったからでした。とは言っても、この思考さえも、ドス君には予想のつくものなんでしょう。彼は僕のような常人には考えつかない多くの事を捉えているのです。それに、彼のような人物は悉く心理戦が得意なものなんですから。
ならば、鳥を殺したあの時の僕のように、さも当たり前かのように殺そうとしたらどうなるのでしょうか。思考がない行動を彼に読み取る事ができるか僕はまだ知らないので、検証してみようと、早速道化師のスイッチを入れました。そういうような事が気になってしまうたちなのです。なにせ道化師なんですならね。
頭蓋骨という檻を極力見ないようにする為に、道化師という手段は最適でした。それとは別に、単純に、素の状態の僕を隠したい気持ちもありました。
仮面を付けた途端に、視界が極端に下がり、檻の事など認識しなくても良くなるのです。左目から見える景色はいつもノイズがかかっており、赤と緑と灰が混ざったような色で、そのフィルター越しに見れる世界はくすんでいました。泥のように濁っていて、それでいて飴細工のように美しいのです。それを両目で捉えるなんて、嗚呼、なんと耐え難い事でしょうか!その醜さか美しさか分からないものに、僕の目は焦げてしまうでしょう。
それに、脳裏に住み着いている過去の僕を見なくて済みます。鬱陶しい程に、過去の僕に足を引っ掛けられるので、僕は何時までも過去の自分に囚われているのだなと思って情けなくなります。ですから、ドス君が言っていた、自分自身を見失う為に殺しをしているというのは結構的を得ているのです。
やっぱり、僕の理解者は君一人だ、ドス君。
「ドス君ドス君ー!!!」
いつもの様に扉を壊れそうな程勢い良く開け、聞く人の耳など毛程も考えていない声を出すと、ドス君は今にも煩わしいと言いたげな顔をします。手には相変わらず日本語の本が握られていました。彼はこの横浜に来て何年か経つようですが、生憎出身がロシアのようなので日本語には慣れないのです。僕も言えた事じゃないですが。
「うるさいですよゴーゴリさん。」
彼は台本をなぞるかのように、私が来ると何回もそう言うのです。たまには別の台詞も聞きたいのですが、ドス君にそう言ったところで意味は無さそうです。私と違って、彼は私に興味を示してくれませんから。
仕方がないので、私もいつもの様に、声を高らかに発しました。お得意の道化師の言動です。
「さて此処でクイーーズ!!私は何をしに来たでしょーうかっ!」
するとドス君は溜め息をつき、 本を閉じてその場に置き、私の方をちらと見るものですから、構って貰えるのが嬉しくて、思わずドス君ー!と叫ぶところでした。私はドス君を殺す時に構って貰えるというのに、あのドス君の気を此方に向かせたというとやはり嬉しくなってしまうものです。
「ヒントはー、ドス君に会いたかったから!!…あっ、答え言っちゃった。」
手で口を隠し、絵に描いたような驚いたポーズをしました。するとドス君は、卵の殻を割ってゴミ袋に投げ込む事と同様に、僕が被っている道化師の殻も割りました。
「違うでしょう?…いえ、正しく言うならば、それはあくまで手段でしかないです。」
彼はそう言い、一泊程置いて続けます。今度は私の方をしっかり見てくれました。
「貴方は僕を殺しに来た。そうでしょう?ゴーゴリさん?」
思考を完全に読まれていて、私は感動してしまいました。ああうっかり、私ったら殺意が隠しきれませんでした。元より、彼には私がドス君を殺そうとしていることなんてとっくにお見通しだと思いますが。
「ああ、やっぱり流石だ。ドス君。」
それでこそ、僕の親友の、フョードル・ドストエフスキーなのです。彼の前にいる限り、否、彼が見知った者である限り、僕達は掌で踊らされるしかないのです。僕達は、彼が遊ぶチェスの駒でしかないのです。僕にはチェスのルールなんて一つも覚えていませんが。
「流石。流石だよ。ドス君。君は何処までも私の事を理解している。」
やはり、僕の理解者は君一人しかいない。後にも先にも、僕にとって親友と言えるのはドス君だけでしょう。
「別に貴方程じゃないですよ。自分の事は自分が一番理解しているものじゃないですか?」
そう言ってドス君は、用事が済んだかのように再び本に目を移しました。
「案外自分の事は分からないものなんだよ、ドス君。」
実際、僕も夜通し自分の事を考えた事もありました。今となっては、その時の思考など微塵も覚えていません。今の僕には必要ないものなのでしょう。
さて、これで私の計画は失敗したわけでした。ですが、ふと、魔が差したのです。
咄嗟の思い付きによる行動でした。思考が読まれた状態で、計画すら丸裸になった状態で、ドス君を殺そうとしてみたらどうなるのでしょうか。その考えが脳に貼り付いて頭から離れなくなってしまったので、外套を使ってドス君の頭に銃口を突き付けました。勿論音と動作でとっくのとうにバレているとは思っていましたが、この考えを頭から剥がすには実行してみる他なかったのです。
その赤紫色の綺麗な瞳も、一切跳ねているところがない整えられたストレートな髪も、人を惹きつけるカリスマ性も、魔人という称号も、全て全て、僕の手で壊したい。壊したい!僕の頭は、独占欲とも支配欲とも言えるような、破壊衝動に侵されてしまったのです。
彼はその場から動かず、僕の目を見て、ただ、こう告げました。
「自由になる手段として僕を殺すと考えていたのに、僕を殺す事を目的としていいんですか?」
殻から出た黄身が潰され、白身と混ぜられていきました。
体を埋め尽くすのが破壊衝動だけになっていた僕を、たったその一言で元に戻したのです。否、戻したように見えるそれは、僕にある一種の毒を混ぜ込んで僕という型にはめただけでした。その毒は、ゆっくりと、僕の体を蝕んでいき、破壊衝動など気にも止められなくなりました。
「……ドス君、今度はどんな毒を盛ったの。」
道化師を忘れて、そう質問しました。
「さあ?僕は毒だなんて盛ってませんけどね。」
そうドス君は少しだけ微笑みました。気付きづらいものでしたが、私の目にかかればそんなもの一瞬で判別できます。こんなドス君を見たのは久しぶりかもしれません。
「白々しいよね、ドス君は。」
僕は、道化師の私に戻りました。
「貴方程じゃないです。」
確かに、道化師の私と比べれば、今のドス君の白々しさなんて子供の悪戯同然です。
先程まで張り詰められていた緊張した空気はすっかり解けて、またいつもの様な空気に戻りました。
「あ、紅茶でも飲みませんか?まあ淹れるのはゴーゴリさんですが。」
ただ、その中で異質だったのは、部屋に響く銃声だけでした。その次に、銃弾が落ちる音が響き、ドス君が倒れる音も鳴りました。ドス君は先程の言葉を言いながら立ち上がっていたので、綺麗に前に倒れました。魔人と言えども、否魔人だからこそなのか、倒れる姿は美しいものです。
まだドス君の頭に銃口は突き付けていたのです。私はそれを撃っただけの事です。
「…撃たれた真似をするのは新鮮ですね。」
彼はゆっくりと体を起こし、倒れる勢いで落ちたロシア帽を手に取りました。
「だろう?まさかドス君が乗ってくれるとは思ってなかったよ!!」
銃弾が彼の頭を貫く前に、外套と、銃口とドス君の頭の間の空間を繋いでおいたのです。 つまり、銃は撃たれたが銃弾は彼の頭に届かなかったという事です。
今日は殺しをする気はなかったので、いっそ演出として使ってやろうという魂胆で一芝居演じました。
「本当はドス君をそのまま殺してもよかったんだけど、やっぱりまた今度の機会にしようかなーって!!それに、いいゲームも思いついちゃったし!どう?ドス君は驚いた?」
体を大きく動かし、声を張り上げました。いつもの道化師の調子です。
「銃口が耳に近かったので銃声が頭に響きました。」
そう言って彼はロシア帽を被り直し、いつもの容姿に戻りました。
「おっとそれはすまない!!でも私の声で大きい音には慣れているだろう?だからドス君は大丈夫だ!!」
自分から言うべきことではありませんが、声は大きい方です。この大きな声で話しかけるとシグマ君なら決まって耳を塞ぎます。けれどドス君は耳を塞がないので、きっと慣れているのでしょう。
「うるさいのには変わりありません。」
そうしていつもの二人に戻った私とドス君は、先程までの出来事がまるでなかったかのようになっていました。
ドス君を撃てなかった理由は、あの時の鳥と同じようにいくら考えても分からなかった事です。
でも、ただ一つ分かるのは、まだ僕は感情の檻に囚われているという事だけでした。所詮僕は道化を演じている人間でしかなくて、鳥籠の中の鳥でしかなかったのです。
手直ししてたら2000文字くらい増えちゃいました。てへぺろ。