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『好きの反対は、ずっと”ともだち”』
tg視点
春の風は、まだ少し冷たい。
でも、ぷりちゃんの隣にいると、不思議と平気だった。
屋上のベンチで並んで座って、いつものココアを手にする。
「寒いね」って笑いながら言うと、ぷりちゃんが缶を軽く揺らす。
pr 寒いなぁ。春やっちゅうのにな
その言い方がちょっとだけおかしくて、くすっと笑ってしまう。
俺たちは、たぶん、すごく自然に一緒にいる。
ともだち、って言えば、誰にも疑われないくらいには。
でも。
tg(ほんとはね、全然“自然”なんかじゃないんだ)
俺は、ぷりちゃんの隣にいられるように頑張ってる。
友達のふりして、笑って、目をそらして。
好きがばれないように、必死で。
ある日、教室で女子たちに囲まれて笑ってるぷりちゃんを見た。
「ぷりっつくんって、彼女とかいないのー?」
「え、絶対いそう〜!」
楽しそうに返事をしてる声が、耳に刺さる。
tg(……いいな、あの子たち)
tg(俺は、そんな風に“好き”って言えないのに)
帰り道、勇気を出して聞いてみた。
tg ぷりちゃんって、モテるよね…
できるだけ軽い声で。でも、ぷりちゃんはふっと笑っただけだった。
pr そう見える?でも、気になってる子おんねん
tg ……え?
胸が、ドクンと鳴った。
tg ……誰?
ぷりちゃんは、それには答えなかった。
ただ、少し遠くを見ていた。
その横顔が、いつもより大人びて見えて、
俺はなぜか、黙るしかなかった。
春。
桜が咲き始めたころ。
俺は、自分の中に渦巻く気持ちを、また「ともだち」って名前で押し込めようとしてた。
でも、それがもう無理だって、分かってた。
tg ……俺ら、ずっとともだちだよね
ぽつんと、声に出したとき。
心のどこかで、なにかが崩れる音がした。
ぷりちゃんが立ち止まる。
その顔を見た瞬間、あ、って思った。
pr ちぐ、それ、ずるいわ
tg え…?
pr ともだちやから、ちぐが無理してんのも、ぜんぶ見えてんねん
pr ちぐ、笑ってるけど……その奥、見えてるで
ぷりちゃんは真剣な顔をしてた。
いつものふざけた感じじゃなくて、
まっすぐ、俺のことだけを見てくれてた。
pr 俺な、ちぐのこと、好きや
pr “ともだち”やと、お前をこのまま好きでおられへん
その言葉が、ゆっくり、胸の奥にしみ込んでくる。
tg ぷりちゃん、それ、ずるいよ
tg そんなの、俺…嬉しいに決まってるじゃん
泣きそうな声で、そう言った。
差し出された手を、ぎゅっと握り返す。
あったかくて、頼りがいのある手だった。
この春風の中で、やっと“ともだち”を卒業できた気がした。
名前じゃない。気持ちで、つながれた瞬間だった。
――“ともだち”をやめた日が、
俺のいちばん嬉しかった日だった。
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