ー火の粉がひとつ、夜空へ舞い上がる。
俺はそれを目で追いながら、小さく息を吐いた。
義勇さんの隣に座ると、少しひんやりした風が頬をなでていった。
「……義勇さん。」
声をかけても、すぐには返事がない。
でも、ただ隣にいてくれるだけで不思議と安心できた。
「俺、義勇さんのそういうところ……好きです。」
言った瞬間、自分でも驚いた。
あわてて焚き火の方を向いて、頬が熱くなるのを感じた。
義勇さんは黙ったまま、少しだけ顔をそらす。
焚き火の赤がその横顔を照らして、影が揺れた。
「……そうか。」
それだけ。でも、その一言が胸の奥に深く響いた。
沈黙。けれど、静かであたたかい沈黙だった。
遠くで虫の声がして、夜がゆっくりと流れていく。
ーその時間が、ずっと続けばいいと、心から思った。
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