テラーノベル
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その夜。
こさめは自室に戻っても、心臓がずっと落ち着かなかった。
『俺のものにする』
『返さない』
耳に残って離れない。
怖いはずなのに。
どうしてこんなに安心するんだろう。
🦈「……すち」
名前を呼ぶだけで胸が熱くなる。
もう駄目だった。
こさめも、とっくに壊れている。
翌日。
独房区画へ向かう途中、先輩看守に腕を掴まれた。
先輩「こさめ」
🦈「わっ、はい?」
先輩の顔は真剣だった。
先輩「最近、様子おかしいぞ」
どくり、と心臓が鳴る。
先輩「ちゃんと寝てるか?」
🦈「ね、寝てます……」
先輩「嘘つけ」
低い声。
先輩はしばらくこさめを見つめたあと、静かに言った。
先輩「……すちと距離置け」
その瞬間、こさめの顔から感情が消えた。
先輩は気づかないまま続ける。
先輩「お前、完全に飲まれてる。このままだと——」
🦈「嫌です」
先輩が目を見開く。
こさめは腕を振り払った。
🦈「会います」
先輩「こさめ!」
🦈「だって、もう時間ないじゃないですか!!」
声が廊下に響く。
🦈「今離れたら、すち一人になる!!」
先輩は苦しそうに眉を寄せた。
先輩「だから危ないって言ってんだよ……」
🦈「危なくていいです」
その言葉に、先輩が完全に黙る。
こさめは自分でも驚くくらい、迷いがなかった。
だってもう。
すちがいない方が怖い。
その日の夜。
消灯後。
こさめは独房の前に立っていた。
すちは壁にもたれて座っている。
🍵「……顔怖いよ、こさめくん」
🦈「先輩に距離置けって言われた」
すちは少し黙った。
🍵「そっか」
🦈「でも断った」
その瞬間、すちの目が少し細くなる。
嬉しそうに。
🍵「……なんで」
こさめは鉄格子の前にしゃがみ込む。
🦈「離れたくないから」
即答だった。
すちは静かに息を吐く。
もう戻れない。
この子も、自分も。
🍵「……ねぇ、こさめくん」
🦈「ん?」
すちはゆっくり立ち上がる。
そして、服の袖の奥から何かを取り出した。
小さな金属片。
こさめの目が見開かれる。
🦈「それ……」
🍵「ちょっと前に盗った」
すちは穏やかに笑った。
🍵「独房の簡易鍵」
背筋が凍る。
死刑囚が持っていていいものじゃない。
でも、すちはまるで悪びれない。
🍵「執行前って、警備甘くなる瞬間あるんだよね」
🍵「“もう逃げない”って思われてるから」
🍵「それに、基本囚人だけじゃ逃げれないしね」
こさめの呼吸が浅くなる。
すちは鉄格子越しにこちらを見た。
その目は、もう完全に決まっていた。
🍵「……今夜、逃げる?」
碓氷
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コメント
1件
藍翠さん、第23話読みました…っ🥀 こさめが「危なくていいです」って即答するところ、胸が詰まりました。すちがいない方が怖いって、もう完全に飲まれてるけど、それが正しい選択にしか見えないのが切ない…。最後の「今夜、逃げる?」で鳥肌立ちました。次どうなるか気になって仕方ないです…!🦈💔