テラーノベル
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ヘロンは馬鹿馬鹿しい顔の一つも浮かべず真面目一辺倒な表情で答える。
「ええ、関わりが大有りなんだそうでして、ドラゴ達、トンボの子供ヤゴ達は、年を越える、所謂(いわゆる)越冬の期間中にその大半が寒さと飢えによって死んでしまうとか…… しかし、メダカの糞(フン)が堆積した水底(みなそこ)、ヘドロと呼ぶらしいのですが、冬の間中、その中に身を潜める事で生存率が格段に上がる、そうらしいのです!」
「えっ? そうなの?」
「ええ、ドラゴが言うにはそうらしいのですよ、何故だか体温を保持出来る! とか何とか」
「う、うん…… そっか、そっか、子供達の、命の、為、なのか……」
ナッキの口の中から僅(わず)かに身を乗り出して、下の水底(みなそこ)で自分の命令に従い、生まれて間もないヤゴ達が、思い思いの遊びに興じる姿を確認したサニーが泣きそうな顔をしながら言う。
「ねぇナッキィ、メダカ達の糞(フン)って今までトイレ、小川まで行ってさせていたじゃない? アタシ達には不要な物だったけどさっ! トンボの子供達の為にさっ、池の中に集めるようにして助けてあげられないかなぁ? 可哀想じゃない?」
ナッキの思索はほんの僅かな間だけである。
「そうだねサニー、僕もそう思うよ! ねえ、ヘロン! ドラゴ君に答えておくれよ! メダカのンコは池の中に集める場所を作るから心配しないで良いよってぇ! 久しぶりの土木工事だけど任せておいてよぉ! さあ、伝えて伝えてぇ!」
ドラゴとヘロン、共に立派な存在、今はどこかに去ってしまったらしい悪魔たちの『器』だった二匹は、なんだかんだ言いながら、どこか友情か、同類相憐れむ的な感情や親近感を感じていたのだろう、鳥の王、ゴイサギのヘロンは滂沱(ぼうだ)の涙を隠そうともせずにナッキに答える。
「あ、ありがとうございますぅっ! 我が主の深い慈愛の心に、このナイト・ヘロン、只々、心服するばかりでございますっ! マラナ・タッ!」
ナッキは言う。
「ありがとうじゃないよぉ、僕たちの仲間の子供たちを助ける為でも有るんじゃないかぁ! 早く伝えてあげてっ! ドラゴ君と仲間のトンボ達も、これからは同じメダカの王国、の仲間になってくれるんでしょ! 僕、大歓迎だよぉ!」
「格好良い! いいぞっ! ナッキィ♪」
「ははっ! ドラゴッ、喜べっ! 良いか? ナッキ様は――――」
ブンッ?
そうして二回ほど会話を交わした後、ヘロンはナッキに告げた。
「えっとぉ、ナッキ様、ドラゴが言うにはですね、今はまだ王国に向かえ入れられる訳にはいかないそうでして…… なんでも貴重なメダカのナニを報酬として戴いている間は真の国民では無いとかカンとか言っておりましてぇ…… 今暫くは報酬を求めて従う『傭兵』として甘んじて居たいとか言ってやがるんですよぉ! どうしますか?」
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