ナッキは随分待たされてしまっていたので飽きた感じで答える。
「ああ、そうなの? じゃ、それでも良いよぉ! 仲良く出来るんならもう何でも良いけどね! ふうぅ~! これにて一件落着! だねっ! 良かった良かったぁ♪ あっ! それと、ドラゴ君に言っておいてね! ボウフラとかプランクトンは食べ放題だからねって! 幾ら越冬できる○ンコが有っても食べ物が無かったら死んじゃうでしょお、遠慮なく食べてね、伝えてヘロン!」
「はいっ! そう伝えますね♪ おい、ドラゴ、ナッキ様が仰っているが池の中の食べ物はプランクトンでもボウフラでも、好きな物を何でも食べて良いそうだぞ! 良かったな友よ!」
ブーンブンブンブン! ブブブブブンッ!
「なんだと? では一体何を食べるというんだ! ドラゴッ?」
ブンブンブンブン、ブンブン?
「えええぇっ? お、おいドラゴ! 判っているのか? 今は食べ物の話をしているんだぞっ?」
ブン…… ブンブン、ブ~ン~
「そ、そうなのか…… わ、判ったよ」
何やらやり取りが有った様だが、最終的にはヘロンがドラゴの主張に従った様である。
良く判らなかったナッキは確認を入れざる得なかったようだ。
「ねえ、ヘロン何だって?」
「あ、ああ、えとぉ~、一応ナッキ様が仰ってくれた通り、何でも食べて良い、そうドラゴに伝えたんですが、そうしたらぁえっとぉ~」
「? うん? ドラゴ君は何て言ったのさっ! 早く言ってよぉ! さあ、何て何てぇ?」
ここまで見たことも無い固まりきった表情を浮かべながら、ヘロンはやや小さな声で棒読みの言葉を紡いだのである。
「………………ウン○、排泄物だけで良い………… そう繰り返すばかり、でして……」
サニーの察しは良い。
「えっ! それって?」
ヘロンも利口だ。
「ええ、恐らく…… そう言う事かと……」
ナッキは吐く。
「オエェェ、オエオエオエェェ~!」
無理も無い、サニーとヘロンがそう思ったとき、池の西側から嗜(たしな)める様な声が聞こえて来る。
「駄目ですよナッキ様、食習慣は種族によって違う物です、他種族の食べ物に不快感を露わにしてしまってはトラブルの元ですよ」
言いながら、森の中から歩いてきたのはザリガニのランプであった。
ナッキは無理やり吐き気を抑えてランプに言う。
「だってさ、ンコだよンコ、既に食べ物の枠(ワク)じゃ無いじゃない」
ナッキ直近の岸まで進んで来たランプは首を左右に振りつつ言う、長いヒゲも左右に振るえている。
「違いますよナッキ様、食べ物の枠と仰いましたよね、そもそもそれが独善的な考えに基づいているんですよ」
「どう言う事?」
ランプは前足の鋏(はさみ)を上下させながらナッキに説明を始める。
「例えばですが私達ニホンザリガニは植物しか食べません」
「そうなんだ」
「しかも生きている植物は食べないのです、それ処か果実や種すら口にする事はないのです」
「えっ、じゃあ、何を食べてるって言うんだい?」
「自然に落葉し時間を掛けて水底(みなそこ)で熟成した腐葉土、それらのみを食べるのです」
「ええっ!」