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「なぁ、瑠姫。デートしようや」
純喜からの突然の誘いに、瑠姫は目を丸くした。
普段の彼なら「一緒に買い物行こう」とか「ラーメン食べに行こう」と誘うことはあっても、「デート」という言葉を使うことはなかった。
それは、二人が新しい関係になってから、純喜が意識的に使うようになった、二人の特別な時間を示す言葉だった。
「どこに?」
「カフェに行って、映画見て、ショッピングして、夜ご飯食べに行く。瑠姫が好きなもの、全部詰め込んだプラン」
純喜の言葉に、瑠姫は胸が熱くなった。
過去の自分が好きだったもの、そして今の自分が好きなものを、彼はちゃんと覚えてくれていた。
いや、正確には「覚えている」わけではない。
瑠姫が語った過去の思い出と、彼自身が感じる「懐かしい」という感覚、その二つを合わせて、純喜なりに瑠姫のことを深く知ろうとしてくれているのだ。
その優しさが、瑠姫の心を深く揺さぶった。
「…行く。行こう、純喜」
瑠姫の返事に、純喜は嬉しそうに笑った。
その笑顔は、過去にタイムスリップした時と、何も変わっていなかった。
カフェでは、純喜が注文してくれた瑠姫の好きな抹茶ラテが、運ばれてきた。
瑠姫は一口飲んで、過去を思い出す。
未来の純喜は、瑠姫が抹茶ラテを好きだということを知らなかった。
でも、過去の純喜とのデートで、瑠姫は何度も抹茶ラテを飲んでいた。
「なんで俺が抹茶ラテ好きなの、知ってるの?」
瑠姫が尋ねると、純喜は少し照れたように笑った。
「わからん。けど、なんとなーく、瑠姫は抹茶ラテが好きな気がした。」
純喜の言葉に、瑠姫は胸が温かくなった。
記憶はなくても、二人の間には、確かに繋がっている何かがあった。
映画館では、瑠姫が選んだハリウッド超大作のアクション映画を見た。
巨大なスクリーンに映し出される、爆発と銃撃戦の嵐。
瑠姫は、その迫力に圧倒されながらも、隣に座る純喜の様子を時折伺っていた。
純喜は、普段は穏やかな性格だが、アクション映画になると目を輝かせてスクリーンに釘付けになる。
彼の横顔は、まるで子供のように無邪気で、瑠姫はそのギャップに微笑んだ。
映画の中盤、主人公が絶体絶命の危機に陥るシーン。
純喜は思わず瑠姫の腕を強く掴んだ。
彼の体温が、瑠姫の心を温かくする。
過去の純喜も、怖い場面になると、いつもこうして瑠姫の手を握っていた。
記憶がなくても、純喜の行動は、過去と同じだった。
映画が終わり、エンドロールが流れ始めた。純喜は、興奮冷めやらぬ様子で瑠姫に話しかけた。
「やばい! めちゃめちゃ面白かった! 瑠姫、アクション映画好きって言ってたよな。一緒に見れてよかったわ」
瑠姫は、純喜の言葉に胸が熱くなった。
彼は、自分が好きだと言ったものを、ちゃんと覚えていてくれた。
そして、過去の自分と同じように、瑠姫との時間を楽しんでくれていた。
ショッピングでは、瑠姫がウィンドウ越しに見ていたTシャツを、純喜が「似合いそうだから」とプレゼントしてくれた。
それは、過去の純喜が、瑠姫によく買ってくれたブランドのTシャツだった。
そして、居酒屋での夜ご飯。
ビールを片手に、二人はたくさんの話をした。
JO1のメンバーの話、過去の話、そして、未来の話。
「瑠姫は…過去の俺といたときも、こんな風に笑っとった?」
純喜の真剣な瞳に、瑠姫は正直に答えた。
「うん。でも、こんなに幸せじゃなかった。だって、いつかお前と別れなきゃいけないって、ずっと不安だったから」
瑠姫の言葉に、純喜はそっと瑠姫の手を握った。
「大丈夫。俺たちは、もう離れへんから」
純喜の温かい手に、瑠姫は涙を流した。
記憶はなくても、二人の愛は、たしかに存在していた。
二人の新しい恋は、過去の思い出を大切にしながら、ゆっくりと、しかし確実に育まれていった。
「ねぇ、純喜」
「ん?」
「今日は、本当にありがとう。すごく…幸せだよ」
瑠姫の言葉に、純喜は満面の笑みを浮かべ、彼の唇にキスをした。
二人の新しい恋が、ここから始まった。
それは、記憶が消えても、愛は決して消えないという、時を超えた愛の物語だった。