テラーノベル
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居酒屋での夜ご飯を終え、ほろ酔い加減の二人は、並んで夜道を歩いていた。
瑠姫は、繋いだ手にじんわりと伝わる純喜の温かさを感じながら、この時間が永遠に続けばいいのに、と密かに願った。
マンションのエントランスに入り、エレベーターに乗り込む。
純喜は、いつも通り瑠姫の部屋のある階のボタンを押そうとして、ふと手を止めた。
「なぁ、今日は…俺の部屋に来ーへん?」
純喜の少し照れたような、けれど真剣な眼差しに、瑠姫の心臓が大きく跳ねた。
過去の彼と過ごした、あの甘い夜を思い出す。
記憶がなくても、純喜の行動は、過去と同じだった。
瑠姫は頷き、二人は純喜の部屋がある階でエレベーターを降りた。
部屋の鍵を開け、中に入ると、純喜の部屋は、彼の性格をそのまま表したような、シンプルで温かみのある空間だった。
「なんか、緊張するな…」
純喜が照れくさそうに笑う。瑠姫は、そんな純喜に、優しい笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ。俺は、ずっと純喜の隣にいるから」
瑠姫の言葉に、純喜は安心したように微笑み、彼の唇にそっとキスをした。
ソファに座り、他愛のない話をしているうちに、夜は更けていった。
瑠姫が立ち上がって帰ろうとすると、純喜が寂しそうな顔をして、彼の腕を掴んだ。
「…泊まっていかん?」
純喜の真っ直ぐな瞳に、瑠姫はもう何も言えなかった。
純喜の部屋のベッドは、二人で寝るには少し狭かったが、それがかえって二人の距離を縮めた。
ベッドに潜り込むと、純喜は瑠姫を優しく抱きしめた。
彼の腕の中に収まると、瑠姫は心から安堵した。
記憶がなくても、純喜の体は、瑠姫の存在を覚えていたのだ。
「瑠姫の匂い…めっちゃ安心する」
純喜は、瑠姫の髪に顔をうずめ、深く息を吸い込んだ。瑠姫は、そんな純喜を優しく抱きしめ返した。
「ねぇ、純喜」
「ん?」
「…俺も、お前といると、すごく安心するよ」
普段は言わない瑠姫の言葉に、純喜は満面の笑みを浮かべ、彼の唇にキスをした。
そのまま、二人は静かに眠りについた。
先に眠りに落ちたのは、瑠姫だった。
純喜は、規則正しく穏やかな寝息を立てる瑠姫の顔を、じっと見つめていた。
彼の白い肌、長いまつげ、ほんのり赤みを帯びた唇。すべてが愛おしくて、純喜はそっと彼の頬に触れた。
その時、瑠姫が小さく寝言を言った。
「…じゅんき…」
純喜は、自分の名前が呼ばれたことに驚き、瑠姫の顔に耳を近づける。
「…大好き…だよ…」
瑠姫は、穏やかな寝顔のまま、そう呟いた。
純喜は、その寝言を聞いて、胸が締め付けられるほど愛おしくなった。
「かわいすぎやろ…」
純喜は、瑠姫をさらに強く抱きしめ、彼の頭にキスを落とした。
記憶がなくても、瑠姫の心の奥底に、自分のことが深く刻まれていることを知った。
「俺も…瑠姫のこと、大好きやで」
「おやすみ、瑠姫」
純喜は、瑠姫の寝顔を見つめながら、静かにそう呟いた。
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