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ヒカルとよしき

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ヒカルとよしき

1 - 第1話 ヒカルとよしき

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2024年08月01日

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 光は今頃何しとんのやろ。俺はずーっとお前のいない日々の喪失感に身を任せて、ゆらゆら沈んでいくんやろな。と、思ってた。ヒカルが現れるまでは。そのヒカルは今、俺の横で間抜けに寝っ転がっとる。


 俺と光は、昔からずっと一緒やった。この絵に描いたような田舎に居た、数少ない年の近い友達。お前は山で遭難して、二度と帰っては来ないんやろなと思っていたのに。

「よしきー。かにー…」

「どんな寝言や…。」

一週間経った時、お前はケロッと帰ってきたよな、 ヒカル。


 山で遭難したんは光。でも帰ってきたんは光じゃない。こんな異常性にも慣れてきてしまった。ヒカルはこの自分の身体を「完璧な模倣」って言ってたけど…。俺はヒカルの右腕に目線を向ける。

「また怪我つくっとう…」

痛覚がないってのは「完璧な模倣」ではないやろ。絶対に。


 あまりにも腕の傷が痛々しいから、消毒しやって絆創膏だけ貼ったろ…。戸棚から救急箱を引っ張り出して、居間へ戻った。ヒカルの右腕を軽く持ち上げると、確かな温もりがそこにはあった。

「生きてるみたいやな…。」

口元に手をやると呼吸もしとるし、手首には脈を感じる。

「光…。」

思わず溢れでとった言葉の続きを急いで飲み込んだ。その代わりに、指先だけは自分に素直にさせてやることにする。


 スッと通った鼻筋、ふんわり柔らかい頬、まっすぐと長いまつ毛、少し乾燥した唇。

「やっぱおんなじやな…」

どうやら、ヒカルが言っていた「完璧な模倣」はあながち間違ってはおらんらしい。俺は光が恋しくって、生き返って戻ってきてほしくて、昔妹が読んでたおとぎ話のようにヒカルに口付けをした。何秒の逢瀬だっただろうか。俺はとんでもなくキモいことをしてると気づいて、すぐさまヒカルから離れた。


 数十分経ってからヒカルは目を覚まして身体を起こした。あぁ…俺ほんとキモい…。

「よしき、どしたん?」

ヒカルに察されるくらいなんやから、相当な顔をしとるんやろな。

「まさか、俺以外の奴んこと考えとった?」

冗談を交えたような言い方をしとるけど、ヒカルのことなら内心本気で嫉妬しとるんやろな…。

「いや、俺は」

「ひかるのことしか考えてない。」

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コメント

1

ユーザー

まじ最高✨💕 にゅんこの作品みたらまじ飛べる(?)

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